
(2024.12.5 Vatican News Lisa Zengarini)
バチカン国務省のポール・ギャラガー外務局長が5日、マルタの首都ヴァレッタで始まった欧州安全保障協力機構(OSCE )閣僚理事会に出席し、現在の世界的な危機的な状況に対して、対立を乗り越え、「ヘルシンキの精神」に則り、協調して対処するよう強く求めた。
閣僚理事会には、OSCE加盟57カ国のうち40カ国の代表と、アジアおよび地中海地域の協力パートナーが参加し、欧州・大西洋地域とユーラシア地域における現在の安全保障情勢の評価、進行中の課題への対応、OSCEの活動の見直し、およびOSCEの主要4役職の任命に焦点を当てた2日間の協議を行っている。
外務局長は、協調して対処すべきOSCEの加盟国の間で対立と分裂が深まっていることに、バチカンとして深刻な懸念を表明。「まさにこの組織の根幹を曇らせ、世界的な課題が深刻化する中で、その日常業務に影響を及ぼしている」とし、「対話、緊張緩和、緊張緩和が特に必要なこの時期に、この組織を維持することは極めて重要」と強調。
そのうえで、「現在の国際社会が直面する諸課題に対処するためには、OSCEの設立を定めた1975年のヘルシンキ合意に明記された原則を堅持することが極めて重要だ」と述べ、「当時の東西冷戦がもたらしていた緊張の緩和を目的とした画期的な合意は、『平和とは、単に戦争の不在や勢力均衡の維持ではなく、国際法上の義務の遵守と普遍的人権の尊重を目的とした国家間の友好的関係、建設的な対話、協力の賜物』という理解に基づいている」と評価した。
だが、現状を見ると、「OSCE内部での手続き上の合意の欠如、そして何よりも一部の参加国間の相互信頼の崩壊、イデオロギー的攻撃の増加、そして、合意された原則に対する露骨な無視によって、その”ヘルシンキの精神”が大きく損なわれている」と指摘。「バチカンは、OSCEの根幹を曇らせ、その日常業務に影響を及ぼしている分裂と断片化の拡大に、強い懸念をもっている」と述べた。
そして、特に現在も和平の展望が見えないロシアによるウクライナ軍事侵攻に言及し、「OSCE内部で分裂を引き起こしている、広範な地政学上の緊張」「指導的ポスト選任の長期にわたる遅延」「2026年の議長国に関する決定などでの進展の欠如」などの問題を挙げた。
外務局長は、「OSCEの強みと独自性は、対話と意思決定プロセスを豊かにする多様な視点にある」としたうえで、この組織が「同じ考えを持つ国家だけのフォーラム」に変質してしまうことに警鐘を鳴らし、「コンセンサスの追求を放棄することは、自滅や”ヘルシンキ精神”の歪曲につながりかねない」と警告。「OSCEが対話と交渉の場として不可欠な役割を果たしてきたことを再確認し、加盟国に対してその独自の使命を維持するよう促し、特に現在の世界的な緊張を踏まえ、対話、緊張緩和、合意形成を促進するための新たな取り組みをする」よう、呼びかけた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)