・ユダヤ人入植者の暴力に苦しむパレスチナ唯一のキリスト教徒の村が、教皇と世界に助けを求めている

Taybeh, northeast of Ramallah in the West BankTaybeh, northeast of Ramallah in the West Bank  (AFP or licensors)

 (2026.8.10  Vatican News    Myriam Sandouno )

 パレスチナで唯一残された全キリスト教徒の村、タイベでは、ユダヤ人入植者による襲撃が繰り返されている。過去5年間、「救い主キリスト」のラテン典礼教会の主任司祭を務めてきたバシャール・ファワドレ神父は「村民たちが土地を離れざるを得なくなる」と懸念している。

 「タイベを忘れないで! タイベが沈黙の中に消え去られてはなりません」。これは、パレスチナで最後に残された完全なキリスト教徒の村における過酷な現実を語るファワドレ神父による切実な訴えだ。

 聖書では「エフライム」とされ、イエスとその弟子たちが避難したと伝えられるタイベでは、現在、地域社会が、ユダヤ人入植者による組織的な威嚇、財産の没収、そして所有地の浸食に直面している。

 そうした中で、イスラエル軍は9日、タイベを「非居住者立ち入り禁止区域」にすると宣言し、ユダヤ人がこのパレスチナの町に入ることを禁止した。

 軍報道官によると、この措置は「この地域におけるユダヤ人による数件の暴力的な攻撃」を受け、「地域の住民を保護する」ために発令されたという。

 Vatican Newsとのインタビューで、ファワドレ神父は、世界中の教会に対し、タイベの住民たちのために祈りと支援を捧げるよう強く求めている。インタビューの一問一答は以下の通り。

問:タイベはユダヤ人入植者による侵入に苦しんでいる。5日には、入植者たちが、あなたの教会に属する家族の家に押し入った、と聞いている。実際に何が起きたのか。

答:極めて憂慮すべきものだ。その家族は、入居者が引っ越してくる準備が整ったばかりだったが、2人の入植者がその家の敷地に何度も侵入し、土地を占拠し、囲いを壊し、羊の群れを家のすぐそばまで連れてきた。これだけではない。この村のパレスチナ人家族を圧迫して土地から追い出すことを目的とした、意図的な暴力だ。

問:今回の侵入の際、その家族は家にいなかったが、これは肉体的にも精神的にも耐え難い試練に違いない。

答:家族のために家を準備しておいたのに、見知らぬ者たちが勝手に侵入し、好き勝手に占拠していることを知らされる彼らの嘆き、苦しみを想像してほしい。実際、今こうして話しているまさにこの瞬間にも、同じ入植者たちが戻って来て、家の敷地にテントを張っている。信じられないほど過酷な状況だ。

問:ここ数日、他の家族もこの暴力の被害に遭っているのか?

答:タイベの西、東、南にまたがる地域の多くの家族が、入植者による同様の暴力に苦しめられている。入植者たちはいつものように、空き地に放火を繰り返している。ごく最近も、村の南東にある丘陵地帯に火を放った。ユダヤ人入植者たちは、危害を加え、土地を占拠するためにやってくるのだ。ここ数か月で、状況は劇的に悪化している。ほぼ毎日、住民たちは侵入、私有地への攻撃、農地の破壊、道路封鎖、移動制限、そして住民への執拗な圧力に直面している。

問:タイベの人々は、見捨てられたと感じているのだろうか?

答:その通りだ。私も、住民たちも「見捨てられた」と感じており、「完全に孤立している」と感じている。こうした行為に対抗する法的手段は存在するが、非常に限られており、効果を発揮することはめったにない。だからこそ、今こそ世界の国々、国際機関の力が必要なのだ。住民を保護し、暴力に終止符を打つための真摯な政治的意志と具体的な行動と強く求める。

 ここで生活し、イエス・キリストとその弟子たちへの証しを続けられるよう、助けが必要だ。タイベでキリスト教徒の存在を守り抜くことは、皆が分かち合う責任だ。暴力にさらされ続ける中で、住民の中には、「もう耐えきれない。村を離れ、すべてを捨て去りたい」という気持ちが強くなっている。

問:そうした状況にもかかわらず、留まることを選ぶ人々を、キリストへの信仰はどのように支えとなっているか。

答:政治的な解決の兆しは見えないが、私たちを前進させ続ける非常に特別なものがある。それは、イエス・キリストへの希望と、教会への信仰だ。私たちは世界中の教会に対し、私たちへの祈りを強め、エルサレム・ラテン総大司教区、そして聖地全体を支援するよう強く訴える。祈りが奇跡を起こすと、私たちは固く信じている。

 タイベを忘れないでほしい。世界中のすべてのカトリック教会に対し、ここでの状況について声を上げ、恐怖の中で暮らすこれらのキリスト教徒の兄弟姉妹について語りたい。キリスト教共同体の発祥の地が、沈黙の中に消え去ってはならない。共に力を合わせれば、この生きた信仰の証しを守り抜くことができる。付け加えるなら、外交使節団やピッツァバッラ枢機卿の訪問は、私たちを安心させ、不可欠な安心感を与えてくれている。

問:正教会、ラテン系、メルキト、ギリシャ・カトリックの各共同体は、被害者を支援するためにどのように組織化しているのか。こうした痛ましい出来事は、何らかの形でキリスト教の団結を強めたと言えるだろうか。

答:この危機に直面し、キリスト教コミュニティは完全に団結している。教会はこれらの家族と共に歩み、最も弱い立場にある人々を支え、住民間の連帯を育み、人間の尊厳を守り続けている。また、タイベの現実が広く知られ、私たちの声が封じられないよう、外交使節団や国際機関、メディアとも緊密に連携している。

 Vatican Newsを通して、私は教皇レオ14世に訴えたい。ヨルダン川西岸地区に残るこの最後のキリスト教村のために介入し、入植者による攻撃を止め、我々の土地の占領を終わらせてほしい。私と住民たちが望むのは、正義と尊厳をもって平和に暮らすことだけだ。

問:タイベはパレスチナ・キリスト教コミュニティにとって何を象徴しているのか。

答:タイベは、すべての人にとって、極めて重要かつ根源的な象徴だ。とりわけ、イエス・キリストがこの地上におかれてから2千年となる2033年の記念の年を前にして、その意義は大きい。タイベは、この聖地におけるキリスト教を守り抜く最前線に立っている。イエスは受難、死、そして復活の前に、タイベに避難することを選ばれた。私たちは、キリスト教と、聖地におけるその不朽の存在を体現し続ける生きた証人でなければならない。世界はタイベに寄り添わなければならない。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2026年8月11日