・カトリックで史上二人目の米副大統領候補は、信者の分裂を加速する(La Croix)

Republican presidential candidate Donald Trump applauds alongside his vice-presidential pick, J.D. Vance on the first day of the 2024 Republican National Convention in Milwaukee, Wisconsin July 15, 2024. (Photo: Youtube/RNC 2024)
Republican presidential candidate Donald Trump applauds alongside his vice-presidential pick, J.D.

(2024.7.19 La Croix   Malo Tresca)

   J.D. ヴァンス氏が、17日の米国の共和党全国大会で副大統領候補に選ばれた。トランプ候補を推す共和党陣営が大統領選挙に勝利すれば、2019年に成人として洗礼を受けたオハイオ州の上院議員は、米国史上2人目のカトリック教徒の副大統領となる。

 ​​「キリスト教徒、夫、父親、オハイオ州の上院議員」-ソーシャルネットワークXでの短い自己紹介で、J.D. ヴァンスは、主に信仰というレンズを通して、自身の歩みの最も顕著な側面を明らかにした。

 共和党全国大会でドナルド・トランプの副大統領候補に正式に指名された39歳のヴァンスは、11月の大統領選挙で自身の陣営が勝利すれば、バラク・オバマ政権で副大統領を務めたジョー・バイデンに次ぐ、米国史上2人目のカトリック教徒の副大統領となる可能性がある。

 宗教は現在、彼の人生の中心を占めているが、彼の精神的な旅は曲がりくねった道をたどっており、彼はそれをアメリカの報道機関に公に語ってきた。

 質素な家庭に生まれ、麻薬密売に悩まされていたアパラチア山脈の貧しい白人コミュニティで育ち、子供時代と十代の頃は福音派の教会に通っていた。「私はかなり混沌とした絶望的な世界に住んでいましたが、信仰が『誰かが私のことを見守ってくれている』という信念を与えてくれました」と、2016年にユタ州を拠点とする宗教メディアのDeseret Newsとのインタビューで語った。

 そして、「教会に行くと、それまで見たことのない本当に良いことがたくさん分かりました。さまざまな人種や階級の人々が一緒に礼拝しているのを体験しました。仲間から自分がすべきことに関して特定の道徳的期待があることを知りました」と述べた。

 20代前半、名門イェール大学での学生時代は、神から一定の距離を置くことで特徴づけられた。 「私は自分を『無神論者』と呼んでいました」。それにもかかわらず、宗教的信念が自身を高めているように思えるカトリック教徒やモルモン教徒と会ったことを思い起した。

 2015年、彼は再び宗教的な儀式に出席し始め、4年後にカトリック教会で洗礼を受けることを希望し、長い間彼を教会から遠ざけていた(聖職者たちによる)虐待問題にこだわらないことに決めた。「私にとって最も大切な人々をよく見ると、皆、カトリック教徒でした」と2019年の受洗当時、 The American Conservative紙とのインタビューで語り、カトリックの「知的」魅力を強調した。

 「キリスト教の信仰の希望は、物質世界の短期的な征服に根ざしているのではなく、それが真実であり、長期的には、さまざまな試行錯誤を経て、物事はうまくいく、という事実に根ざしています」と、元軍人で、米国の産業が衰退した地域で育った経験について書いたベストセラー “Hillbilly Elegy”の著者であるヴァンスは語った。

 

 彼の信仰はどの程度彼の政治活動に影響を与えているのだろうか?

 「彼自身がよく言っているように、彼の献身は教会の社会教義、特に経済問題に関するレオ13世の回勅『Rerum Novarum新しき事柄について―資本と労働の権利と義務)』によって動機づけられている」とトゥーロン大学(ヴァール)のアメリカ文明の専門家、マリー・ゲイトは説明した。「ヴァンスが『権利を奪われた米国の労働者を助ける』と主張するのは、カトリックの名においてなのです」。

 ゲイトによると、元シリコンバレーのベンチャー・キャピタリストであるヴァンスは「リベラルなコンセンサスから離れることで保守主義を再定義しようとしている、多くのカトリック教徒を含む”ポスト・リベラル”な知識人」に属するという。

 ヴァンスは、バイデン現大統領の2020年大統領選勝利に反対する連邦議会の反乱分子を支援したことで米国政治の舞台で物議を醸したことがあり、2023年1月にオハイオ州上院議員となって以来、カトリック信者の間では違った見方をされてきた。移民問題や気候変動懐疑論についての強硬姿勢は、教皇フランシスコの姿勢とは相容れないようだ。

 性道徳の問題で極端に二極化した米国で、レイプや近親相姦を例外とせず中絶を禁止する彼の確固たる立場は、カトリック信者の分裂を招いている。今年4月11日の有力調査機関、Pew Research Centerの調査によると、信者の10人中6人強(61%)が中絶合法化を支持しているが、ヴァンスが7月初旬にトランプが主張する中絶薬の取得を容易にすることへの支持を表明して、保守派信者から反発を招いている。

  「ヴァンスには原則がない。少なくとも”売り物”にならない(主張をする)原則はない。そして”提示価格”は低い」とマサチューセッツ州カトリック行動連盟のC.J.ドイル事務局長は皮肉った。

 「それにもかかわらず、ヴァンスは、保守化の傾向を強める若い米国の聖職者の間で、かなりの人気がある。彼らはこの最新の論争を無視しているようだ」とゲイトは指摘し、彼が副大統領候補に指名されたことで、「米国のカトリック司教たちの極右派を喜ばせている」と確信をもって語った。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2024年7月20日