(2025.7.3 Crux Managing Editor Charles Collins)
世界有数のカトリック系の生命倫理研究機関の一つが、今月末に閉鎖される。イングランド・ウェールズ・カトリック・トラストは3日、オックスフォードにある「アンスコム生命倫理センター」を閉鎖すると発表した。(理由は明らかにされていない。)
同センターは1977年に設立された英国最古の生命倫理研究機関。豪シドニーのアンソニー・フィッシャー大司教は「英国屈指のキリスト教系生命倫理研究所であるだけでなく、キリスト教系、世俗系を問わず、世界でも最も優れた研究所の一つ」と語っている。
センター長のデイビッド・アルバート・ジョーンズ教授は声明を発表し、その中で閉鎖の発表を「深い悲しみ」とともに受け止めている、とし、「センター職員一同は、センターが創出してきた資源を引き続き利用できるように、そして『人間の尊厳を全面的に尊重する生命倫理研究と教育』という重要な活動を継続していくための何らかの手段が見つかることを切に願っている」と訴えた。
また教授は、「過去1年間、センターの活動の大部分は、スコットランド、イングランド、ウェールズにおいて、『末期』とみなされる人々に対する『自殺の助長・幇助』を非犯罪化しようとする試みを抑えることに注力してきた。私たちの活動は議会で引用され、この問題に関心を持つ多くの人々への情報提供に貢献してきた」としたうえで、「多くの善意ある人々の努力にもかかわらず、スコットランド、イングランド、ウェールズにおいて、自殺幇助法案は、若干の多数票を取り、成立に向けて進んでいる。センターは今後新たなリソースを提供する立場にはないが、既に提供済みのリソースを活用し、スコットランド議会の貴族院が危険で思慮に欠ける法案の議論を続ける中で、関係機関と連携していくよう強く求めたい」と強調した。
同センターと深い関係をもつ人物は、「今回の決定は、センターで進行中のプロジェクトや協力関係を危険にさらす」と述べ、「センターは非常に積極的に活動しており、特に自殺ほう助との闘いにおいて活発だった。センターがなくなることは、教会が学術に根ざしつつも、より広範な国民や政策立案者に対して訴えかけることができる重要な擁護の源泉を失うことを意味する」と批判している。
新教皇、レオ14世は、在バチカンの外交団に「胎児から高齢者、病人から失業者、市民から移民まで、特に最も虚弱で弱い立場にある人々を含む、すべての人の尊厳を尊重に努める義務から、誰も免除されない」と述べ、テクノロジーの変化、特にAI(人工知能)の台頭は、カトリック教会の大きな懸念事項だ、と指摘している。
英国のカトリック教会は今、これらの問題における最も有力な擁護者の一人を失うことになるだろう。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)