(2026.7.9 Crux Africa Correspondent Ngala Killian Chimtom)
このほど発表された「 International Society for Civil Liberties and the Rule of Law(Intersociety)」の2026年上半期報告書によると、今年わずか180日間で、ナイジェリアでは少なくとも2550人のキリスト教徒が殺害された。2800の拉致事件が起こり、300の教会が破壊され、イスラム教に強制改宗されたキリスト教徒も800人に上るという。
「アフリカ宗教の自由観測所(Observatory for Religious Freedom in Africa)」による以前の調査結果では、国際社会の注目が依然としてボコ・ハラムに注がれている一方で、ナイジェリアにおける宗教的暴力の主たる原動力は、実際には高度に組織化されたフラニ族民兵のネットワークであることが明らかになっているが、Intersocietyのディレクターで、ナイジェリアにおけるキリスト教徒迫害の追跡調査の第一人者、エメカ・ウメアグバラシ氏もこの見方を支持している。
Crux Nowの取材に対し、ウメアグバラシ氏は、「キリスト教徒の殺害は、単なる治安政策の失敗ではなく、国家が後押しするmala in se(それ自体が悪である)犯罪—普遍的に本質的に悪であると認識されている行為—だ」とし、こうした行為が「過激化した軍によって助長され、利害関係にある政治・宗教指導者たちによって隠蔽されている」と指摘。
そのうえで、「アフリカの(人口約16億人のうち)7億5000万人のキリスト教徒が、存亡を脅かす、世代を超えた危機に直面している」と警告。「加害者たちの証拠は保存されており、国際裁判所が待ち構えている」と述べた。
以下は、そのインタビューの抜粋。
*残虐行為の長期化に政治権力が深く関与している
Crux Now:問:この報告書の具体的な統計に入る前に、この暴力を実際に主導しているのは誰か、という点に関する調査結果の全体的な論旨は何か。また、それはナイジェリアにおける一般的な治安の悪化とどのように異なるのか。
ウメアグバラシ:答:この報告書は、交通事故や金銭目的の誘拐といった一般的な治安問題を意図的に除外し、国家および非国家主体によって行われる宗教を背景とした暴力に、厳密に焦点を当てている。
私たちは調査結果を国際刑事法に基づき、ジハーディスト(”ジハード(聖戦)”を達成するために、武力闘争やテロルを正当化して行うイスラーム過激派の戦闘員や思想的指導者たちとその支援者)によって犯されている22の具体的な凶悪犯罪を特定した。
これらの行為は「mala in se(本質的に悪である犯罪)」に該当し、現地の法律にかかわらず、普遍的に本質的に悪、と認識されている犯罪だ。この報告書が強調しているのは、こうした残虐行為がなぜ衰えることなく続いているのか、という点だ。それは国家主体の直接的な関与にある。暴力がエスカレートしているのは、政治権力が深く関与しており、ソコトのスルタン(ナイジェリア北西部にあるイスラム教徒コミュニティの最高精神的指導者)の傘下でフラニ族の牧畜民や山賊を支配する「ミエッティ・アッラー牧畜業者協会」のような関連団体を通じて活動しているためだ。
政府は、キリスト教徒に対するジェノサイドという主張を封じ込めようとする者なら誰にでも、国家資金を使って賄賂を贈っている。
*これまでに2万近い教会が破壊、拉致・誘拐された大半がキリスト教徒
問:この報告書は、ナイジェリアのキリスト教徒に対する構造的暴力を指摘している。これについてさらに詳しく説明してほしい。
答:イスラム教徒や伝統主義者も影響を受けているが、キリスト教徒が不釣り合いなほど大きな打撃を受けている。これまでに推定1万9700の教会が破壊された。拉致された宗教指導者の大半はキリスト教徒であり、誘拐された学童の95%をキリスト教徒が占めている。キリスト教徒の女性や子供たちは日常的に拉致され、強制改宗させられている。イマームが拉致されたり、モスクが焼き払われたりしたという話はめったに聞かれない。
被害者に対する国家の政策には、明らかな差別がある。ボルノ州では、ボコ・ハラムによって故郷を追われたイスラム教徒の国内避難民が、2ベッドルームのアパートと多額の金銭的補償を受け、安全に再定住させられている。これに対し、チボクのようなキリスト教徒が支配する地域では、かつて176あった教会が、現在では20未満に減っている。州政府は、12万人のキリスト教徒難民のうち約1万2000人を、金銭の約束でカメルーンから呼び戻したが、彼らは「解放された」異教徒の地に戻ったことで、ボコ・ハラムによる新たな攻撃に直面することになった。3月の攻撃だけで300人以上が殺害され、500人が拉致された。
タラバ州の状況も同様に深刻で、わずか8か月の間に217の教会が破壊された。攻撃を受けて10万人以上のキリスト教徒が避難を余儀なくされた。全体として、ボルノ州南部、タラバ州、カドゥナ州南部全域で、少なくとも1800人のキリスト教徒の女性や子どもがジハード主義者によって拉致されたことが判明した。
*残虐行為の首謀者は「ボコ・ハラム」ではなく、フラニ族の過激派集団
問:報告書は、アフリカ宗教の自由監視機構(ORFA)による大規模な調査の直後に発表された。ORFAの調査は、ボコ・ハラムやISWAP(イスラーム国西アフリカ州 の略称。ナイジェリアを拠点とする過激派組織「ボコ・ハラム」の分派)が主な殺害者であるという通説に異議を唱え、代わりにフラニ族(西アフリカから中央アフリカにかけてのサヘル地域=サハラ砂漠南縁部=に広く分布する遊牧民および農耕民の総称です。推定3500万人以上の人口を抱え、世界最大規模の遊牧民共同体を形成)の過激派グループを指摘している。この見解に同意するか。
答:私たちはORFAの見解に全面的に同意する。フラニ族の民兵組織こそが、ナイジェリアにおける宗教的殺戮の主な原動力だ。主に北東部に限定されているボコ・ハラムやISWAPとは異なり、フラニ系民兵は森林地帯を拠点としており、国内全土に広がっている。
2011年にザムファラ州で地元の山賊として誕生した彼らは、2013年までに過激化した。現在では全国的なネットワークとして活動しており、時にはボコ・ハラムと協力して「奇襲攻撃」を行うこともある。私たちはナイジェリアで活動する約22の異なるイスラム系テロ組織を追跡してきたが、それらはすべてフラニ族民兵組織による包括的な調整の下で活動している。
問:これほど危険な環境下で、どのようにしてデータを収集・検証しているのか?
答:私たちは長年にわたり築き上げてきた強固な現地ネットワークに頼っている。影響を受けた地域のコミュニティリーダーと直接連携しており、2017年からはナイジェリアキリスト教協会(CAN)の全国指導部とも連絡を取り合っている。
*女性や子供たちが洗脳され、改宗を強要されている
問:Intersocietyの報告書によると、キリスト教徒の女性や子供たちの拉致や強制改宗が強調されている。この戦術がもたらす心理的負担について語ってもらえるか。
答:ジハード主義者たちは捕虜に厳しい最後通告を突きつける。「イスラム教に改宗して無傷で解放されるか、殺されるか」だ。極度の強制の下、若い女性や子供たちは洗脳され、ヒジャブを着用させられる。ンゴシェで解放された416人の女性や子供たちの事例がそれを示している。
昨年末、ジハード主義者たちはキリスト教コミュニティに対し、「改宗するか、イスラム教の税を納めるか、死ぬか」という正式な脅迫を出し始めた。アダマワ州を皮切りに、タラバ州、クワラ州、コギ州、ニジェール州、カドゥナ州南部へと広がったこの動きについて、この報告書は、キリスト教徒に課せられたイスラム教への改宗に関する9つの具体的な条件を記録している。こうした状況下で被害者が耐え忍ぶことによる深刻なトラウマは、想像を絶するものだ。
*アフリカに広く分布するフラニ族のジハーディストによる”反キリスト教十字軍”
問:あなたは、「ナイジェリアの危機は、より大きな世界的な危機の一部だ」と述べている。もしこの状況が放置されれば、アフリカのキリスト教は長期的に見て、どうなるのか。
答:今起きていることは、組織的かつ世界的な”反キリスト教の十字軍”によるものだ。アフリカで最大のカトリック人口を抱えるコンゴ民主共和国では、ジハード主義者たちが今年だけで1000人以上のキリスト教徒を殺害した。スーダンでは、国家自体が160以上の教会を破壊し、残っていたキリスト教徒を本国へ送還した。同じフラニ族のジハーディストたちが、中央アフリカ共和国でも宗派間紛争を煽っている。
ケニアやウガンダからモザンビーク、ガーナに至るまで、影響を受けていない国はほとんどない。ナイジェリアでは、過去17年間でおよそ2万の教会が失われた。このような流れを止めなければ、キリスト教徒の家庭に生まれた今の子供たちは抑圧され続け、将来、彼らの子供たちは、もはやキリスト教の名前を名乗らなくなるだろうと予想している。そうなれば、キリスト教徒としてのアイデンティティ、文化的遺産、そして民族的アイデンティティは失われてしまう。現在、アフリカの約5000万人のキリスト教徒が、深刻な心理的、身体的、そして構造的な脅威に直面している。
*政府は数千人のキリスト教徒が虐殺されても何もせず、隠蔽
問:ナイジェリア政府がこの暴力に積極的に加担しているという非難が高まっている。これを裏付ける確固たる証拠はあるのか?
答:キリスト教徒への暴力は、ブハリ政権によって綿密に計画されたものであり、キリスト教徒を要職に任命してカモフラージュとする現政権下でも続いている。治安部隊の加担を示す証拠は至る所にある。フラニ族の指導者が殺害されれば世界的なニュースになるが、数千人のキリスト教徒が虐殺されても、その情報は隠蔽されしまう。
国の治安部隊が過激派の攻撃を未然に防ぐことはめったになく、事後に遺体を搬出するために現場に駆けつけるだけだ。南東部では、2016年以降、フラニ族の牧畜民によって8000人以上のキリスト教徒が殺害されているにもかかわらず、逮捕された牧畜民は一人もいない。複数の州にわたり、地域社会の指導者たちは、治安部隊が危機を管理するどころか、むしろ煽っているという話を、そろって語っている。
私たちは、誰が、何を、どこで、いつ、なぜという具体的な問いに答える間接証拠を用いてこれを記録しており、これにより、いかなる裁判所も容易に覆すことのできない、時系列で記録された事実が提供される。
*キリスト教指導者たちの大部分は、
(政府と手を組み、虚偽の主張を広めるだけだ
問:ナイジェリアのキリスト教指導者たちは、迫害されている信徒たちのために十分な擁護活動を行っているだろうか?
答:率直に言って、そうではない。声高に訴える者も少数いるが、大多数は一派に操られている。バチカンの国務長官と主流のカトリック司教協議会は、政府と手を組み、「暴力は宗教的なものではない」という虚偽の主張を広め、気候変動や牧畜民と農民の衝突のせいにしている。それにもかかわらず、これらの司教たちは教皇を訪ね、キリスト教徒は終わりだと訴えている。これは、自らを告発するような、甚大な矛盾である。
私たちの調査によると、ナイジェリアのカトリック教区60のうち24が消滅の危機に瀕している。まもなく司教たちは施しを乞うことになり、繁栄する南部の教区が壊滅状態の北部を補填せざるを得なくなるだろう。数年もすれば、教区を持たない司教が現れることになる。その一方で、彼らは暴力の根本原因について二枚舌を弄し続けているのだ。
*加害者の責任を問う手段はまだ残されている
問:もし政府が腐敗し、国際的な司法の裁きが数十年も遅れるとしたら、加害者に責任を問うための最終的な手段とは何になるのか。
答:国際司法制度は深刻な障害に直面している。米国、ロシア、中国といった超大国は国際刑事裁判所(ICC)への加盟を拒否しており、英国もICCを強力に支持しておらず、その結果、殺人者たちを大胆にさせている。
しかし、手段は残されている。国連安全保障理事会は、非加盟国をジェノサイドの容疑でICCに付託することができる。さらに、個々の国は「普遍的刑事管轄権」を行使できる。2017年に英国が、リベリアの元大統領チャールズ・テイラーの(元妻である)アグネス・リーブス・テイラーを逮捕した際にも、この権限が用いられた。オランダ、スイス、デンマークといった欧州諸国も同様に、ナイジェリアの指導者が自国の領土に足を踏み入れた際に逮捕することができる。
希望が完全に失われたわけではない。チャールズ・テイラーやスロボダン・ミロシェヴィッチのような歴史的な犯罪者の事例が、数十年後であっても正義が実現し得ることを証明している。最も重要なステップは、今すぐこれらの犯罪を記録し、安全に保存することだ。政府がICC検察官の招請を拒否していること自体が、彼らの共犯関係を示す確固たる証拠だ。記録はすでに完了しており、加害者たちが身を隠すには遅すぎる。世界が注目している。
*このインタビューは、転写や校正のミスに起因する統計上の誤りやその他の誤りを訂正するため、報告書の公開後に編集された。Crux Nowはこれらの誤りを訂正している。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)