・(解説)意図しようとしまいと、バチカンの指導書は、新型ウイルスで苦しむ小教区の青写真だ(Crux)

( 2020.7.26 Crux SENIOR CONTRIBUTOR Father Jeffrey F. Kirby)

Accidentally or not, Vatican offers parish blueprint in coronavirus era

In this Sunday, June 7, 2020, file photo, a hundred faithful sit while minding social distancing, listening to Los Angeles Archbishop Jose H. Gomez celebrate Mass at Cathedral of Our Lady of the Angels, the first Mass held in English at the site since the re-opening of churches, in downtown Los Angeles. (Credit: Damian Dovarganes/AP.)

Commentary

 新型コロナウイルスの世界的大流行が続いているが、感染拡大を抑え、その打撃を減殺するための継続的な取り組みも様々に行われている。政治、経済、文化、教育など、あらゆる分野の指導者たちは、これまで経験したことのない、想像もしていなかった事態に対処することが求められている。もちろん、宗教も例外ではない。そうした中で、現在のウイルス大感染の危機的状況とは直接関係はないが、バチカンが先週、教会の司牧者たちの意思決定にとって、意外で予想していなかった手引きとなる文書を発出した。

 聖職者省が発行者の「The pastoral conversion of the Parish community in the service of the evangelizing mission of the Church(教会の福音宣教的使命に奉仕する小教区の司牧的回心)」というタイトル付きの指導書は、現代の小教区における司牧のあり方を示し、いつくかの従来からの見方の質を高め、そして、福音宣教の使命を帯びた小教区を育み、成長させるための、いくつかの実践的な指針やアイデアを提供している。

 指導書はこのように書いているー「識別によって、時代のしるしを読み、信徒たちの求めるもの、歴史的な変化に対応するように、小教区は呼ばれている。イエス・キリストの弟子であり、福音を宣教する者として、洗礼を受けた人々の召命の再発見を促す新たな活力が求められている」。

 そうだ。洗礼を受けた人々を目覚めさせるこのような呼びかけは、欠かすことができない。小教区が以前の姿を本当に取り戻し、再建しようとしているなら、”全員集合”して総力を挙げる必要がある。教会の活動の部分を構成する小教区のメンバーたちは、神の国をもたらす活動に直接関与していかねばならない。

 洗礼を受けた人たちの中に、博愛主義者はいない。篤志家もいない。そして働き手の中に、ただ「父に気に入られるようなことをしたい」だけの人がいるべきではない。洗礼を受けた人は、主イエスに呼ばれ、選ばれ、派遣されている。小教区での活動は、イエスの弟子としてのものであり、現在の私たちの世界で主の働きを続けることだ。それは、人を怖気づかせるものであり、洗礼を受けた全ての人が、それぞれの才能、職業、そして鍛錬をもって、嵐を乗り切ることを求められるものである。

 そのような努力を助ける手立てとして、Wordon Fire Institute(https://wordonfire.institute/)は、スティーブン・ブリバント氏による新型コロナウイルス時代のカトリシズムのあり方についての著作を無料でダウンロードできるようにしている。感染症の蔓延への教会の対応の歴史を説明し、現在の状況に置かれた信徒たちに励ましと希望を与えようとしている。主イエスの弟子として誠実に生き、奉仕したいと考える、意欲のある信徒たち、それにコロナ禍で小教区を導こうとするチームにとって、貴重なツールだ。

 聖職者省の指導書の後半には、このように書かかれているー「小教区は、神の言葉を述べ、洗礼盤で神の新たな子供たちの誕生させるために、聖霊によって集められた共同体だ。小教区は司牧者によって組み立てられ、主の受難、死と復活の記念を祝い、慈しみの信仰を証しする」。

 信徒たちが、世界における自分たちの使命に気付くのにつれて、その使命が本当に何なのか(あるいはそうでないのか)について教えられ、形作られる必要が出てきた。小教区の司牧チームは、全ての信徒がイエス・キリストにおいて与えられた栄光の豊かさに集中するための、証し、指導、機会を提供する努力を、常にしなければならない。

 その助けとして、テレサ・トメオ氏は「コロナウイルスの征服:信仰はどのようにして不安を和らげることができるか」という題名のすばらしい書物を著わした。この本は、私たちが洗礼で授かった信仰を十分に生きることの意味に、霊的な覆いをかけるものだ。そしてまた、キリストの弟子にとって、現在の戦いに耐え、勢いを取り戻すための手段と方法を追い求めている小教区の司牧チームにとって、有効な道具を提供する。

 指導書はさらに、「共同の期待」を繰り返し、このように強調するー「心の広さをもって羊たちに進んで奉仕する司牧者は、共同体の1人ひとりが責任を自覚し、多様な方向と連帯の精神を持って、教会が必要としているものの手当てに直接関与するよう、信徒たちを導かねばならない」と。

 教会は羊飼いたちだけで構成されているのではない。羊飼いは自分一人で働くべきではない。そして今、これまで以上に、福音の働きと活力は、皆で分かち合わねばならない。いかなる司牧者も、いかに才能に恵まれていようとも、決断が必要なことを全て知っているわけではない。

 だから、聖霊が働かれ、共同体のメンバーを呼び集め、必要な手段と資源を提供し、そして、共同体の司牧者を、才能と賜物をもつ仲間の信徒たちを識別し、確認し、聴き、信頼して任せ、助ける、委任し、支援する能力をもって、力づける。このようにして、新型ウイルスの世界的大感染の中で、司牧者と信徒たちは協力し合い、福音宣教の使命を達成するのだ。

 こうした努力の助けとして、Our Sunday Visitorは「A Pastoral Guide to Opening Your Parish(あなたの小教区を開く司牧案内)」というタイトルの小冊子を発行した。司牧チームが現在の絶え間なく変化する状況の中で、小教区の活動を円滑に進めるための実用的なアイデアを提供している。

 バチカンの小教区についてのこの指導書は、このようなやり方、そしてその他のやり方で、今日的な小教区を作り上げ、支援することに多くの努力にを結集するための、タイムリーで補完的な助けとなる。おそらくは、今のこの時期に発表することを意図していなかったにもかかわらず、この指導書は、新型コロナ感染で苦闘する小教区がいかにかじ取りをし、盛況を取り戻すかについての、とても重要な青写真を提供するものとなるだろう。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年7月27日