・新型ウイルスとプロバガンダ－反発買う中国の”コロナ商売”（BW)

(2020.4.27 BitterWinter Yang Jianli and Aaron Rhodes)

中国は他国を”支援”しているが、それよりもっと多く、何百万のマスクと医療資材を世界に売っているーその多くは不良品だ

＊適正水準以下の製品

　　欧州中で、新型コロナウイルスの大感染に苦闘する政府が、医療機器、マスク、その他の供給を含む中国からの支援を拒否しています。これまでよりも幅広く、中国拒否に転向しつつある。

　新型ウイルスの大感染が欧州で深刻化して以来の、中国の対応を見れば、それは当然起こるべくして起きているといえる。

　スペイン、トルコ、オランダからの検証済みの報告によると、中国から届けられた何千ものウイルス感染検査キットと医療用マスクは、適正水準以下か欠陥品だ。中国が欧州諸国から密かに大量の医療機器を購入し、”援助”として一部の国に再販売している、という指摘もある。

　最近、スペインとチェコ共和国の政府は、中国が自国から大量の医療機器を密かに買い入れる一方、欠陥のある医療機器を他国へ”人道援助”名目で売却していた、と不満を表明した。

　中国が物資を送った国には、イタリア、フランス、ギリシャ、セルビア、スペイン、パキスタン、ラオス、タイ、イラン、韓国、日本、カンボジア、フィリピン、エジプト、南アフリカ、イラク、エチオピア、カザフスタン、ベラルーシ、キューバとチリにのぼっている。

＊チェコではプラハ市長が批判

　チェコ共和国は今年初めに中国からウイルス検査キットやその他の医療用品を受け取った。だが、首都プラハののZdenek Hrib市長は最近、「中国の行為は、人道的な贈り物や援助ではない。中国から見れば、それはビジネスだ」と語っている。

　確かに、中国には、新型ウイルスの世界的大感染を”悪用”する行動パターンが見られるようだ。中国は欧州に多額の投資をし、チェコ共和国のMilos Zeman大統領を含む多くの友人を獲得しているが、Hrib市長は、中国の約束、戦略的目標、強引な戦術に懐疑的な目を向ける同国と欧州の政治家を体現している。市長は2年以上前にプラハ市長に就任して以来、チベットの反体制派と会談することで中国を繰り返し悩ませてきた。彼は中国政府の少数民族の扱いを批判し、台湾政府との関係を促進した。中国は外交的および財政的影響力を利用して、市長に圧力をかけており、上海市は、彼が台湾との友好関係を結んだ後、プラハとの経済的関係を断っている。

　欧州における中国の新型コロナウイルス・ビジネスの政治的な齟齬を来しているのは、他国に欠陥利用機器を押し付けようとする”努力”の結果でもある。

　数週間前、チェコの再販業者が感染危機のさなかに、チェコ政府に非常な高値で医療資材を売りつけようとしたため、不審に思った当局が、業者の倉庫を立ち入り調査し、在庫してあった医療資材を押収した。約80万枚のマスク、2万8000個の人工呼吸器が梱包された箱には「イタリア向けの中国赤十字による人道援助」のラベルが貼られていた。

　当局の捜査の結果、この倉庫がプラハ在住の中国人、周陵建の所有であることが判明した。興味深いことに、周氏は、CTE Internationalと関係のある CTE CARGO Sped社の共同経営者で、CTEInternationalは同社に58万枚のマスクを売却していた。またチェコ・青田県（中国浙江省）友好協会の監査役を務め、プラハの在住中国人向けに新聞Chinese Timesの発行者でもある。

＊チェコで、トルコで、英国でー中国製検査キットの不良品続出

　2020年3月には、チェコ共和国へ送られた中国の”人道援助”の医療用品に欠陥があることが判明した。新型ウイルス検査キットの80％が誤った検査結果をもたらし、偽の陰性と判定した。

　トルコでは、中国製の検査キットの性能が適正水準以下であり、故障率が65〜70％に上ることが判明。スペインも、中国からの医薬品の80％が不良だ、不満を述べている。

　英国のメディアは、新型ウイルス危機で利益を上げている、と中国を非難した。中国政府が全国の工場で製造された個人用感染防護具を輸出に回すように命令しため、中国国内で防護具が不足状態に陥り、たとえば、中国国内に二つの工場を持つ英国の防護具メーカーのJSP社は、国内での不足をカバーするため、中国政府機関向けの使い捨て呼吸防護具の製造を、中国政府から要求されたという。

＊中国は、豪州やチェコの”友好業者”から医療資材を調達

　中国政府の支援を受けている豪州の不動産会社、グリーンランドグループの海外支店は「新型ウイルスの蔓延を抑える取り組みを支援する」ために300万枚のマスク、70万の防護服、50万点の手袋を、国内では確保できず、グリーンランドから購入した。

　シドニーの日刊紙Sydney Morning Heraldが報じたところによると、中国では重要な医薬品が不足している。これら大量に購入された物資は大量に中国に送られたが、その中には、豪州の医療関係者や一般市民に十分供給されていない者も含まれていた。

　似たようなことは、チェコの情報機関の調査でも明らかになっているー今年1月、首都プラハの中国大使館が、プラハの中国大使館が親中国の組織を作り、大量のチェコ製医療資材を買い付け、即座に本国に送ったことを突き止めた。

＊スペインに中国から供給された欠陥機器

　中国政府の現地責任者は、いくつかの欠陥機器を供給したことを認めるのを余儀なくされたことがあるが、その場合も、機器を提供した企業を非難し、自己の非は認めない。

　たとえば、マドリードの中国大使館は、今年3月26日の声明で、スペイン政府が深圳のメーカーから検査キットの不良品を購入したことを認めたが、その一方でツイッターの書き込みで、「中国商務省はスペインに認定供給者のリストを提供したが、これには問題の業者は含まれていなかった。この業者は、我が国の国家医療製品局から製品販売の認可を受けていない」とし、さらに、この業者からの輸入は、スペイン政府が発表した中国との4億3,200万ユーロ（4億6,600万米ドル）の契約の一部ではなかった、とも述べていた。

　さらに最近明らかになったのは、スペイン政府が中国と韓国の業者から購入した64万個の検査キットを国内の医療機関などに配布しようとしたところ、第一次入荷分約9000個が仕様を満たしておらず、返品を余儀なくされたことだ。スペインの公衆衛生救急部門の責任者であるフェルナンド・シモン氏がこのことを確認している。

＊ネパールでは中国製品を使用不可に

　南アジアでも問題が起きている。ネパールでは、政府からの指示がない限り、中国製の検査キットなど医療機器を使用しないように、病院や医療センターに注意している。ネパールは今年年2月に中国から数百万ネパールルピー相当の検査キットを輸入したが、機器の信頼性が低い、との多数の報告があったため、こうした措置を取った、という。

　”世界のリーダー”としての姿を印象付けようとする中国政府は、自らの過失と”広報”主導の情報抑制策によって引き起こされた新型コロナウイルスの世界的大感染の危機を、自国の公共管理と政治制度の”優秀性”を立証する手段に変えようとしている。

　中国はそうした自国の”優れたイメージ”を新型ウイルス対策資材とともに、売り込もうと躍起になっている。大感染危機による輸出の致命的な落ち込みを回避するために、中国は新型ウイルス対策資材とともに”自国の優れたイメージ”とともに、世界各国に売り込もうと躍起になっている。だが、国際社会では、対策資材を本気で中国から購入する国が少なくなる一方、多くの国が、中国の”優れたイメージ”に疑問を抱きつつある。

　新型コロナウイルスから利益を得ようとする中国の冷笑すべき努力は、その国の評価を救済する助けにはならないのだ。

【Yang Jianli氏は、Citizen Power Initiatives for Chinaの創設者兼社長。Aaron Rhodes氏は、 Forum for Religious Freedom-Europeの会長、Human Rights 誌の人権担当編集者、「The Debasement of Human Rights（人権の崩壊）」(Encounter Books, 2018）の著者】

（翻訳「カトリック・あい」南條俊二）

＊Bitter Winter（https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由と人権について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター（CESNUR）が、毎日5言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ（Massimo Introvigne）は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。