・教皇は、有力”問題司教”の定年前辞意表明にどう対応するか?(LaCroix)

(2021.11.30 LaCroix   Loup Besmond de Senneville | France)

 パリ大司教区長のミシェル・オペティ大司教がこのほど教皇フランシスコに辞任を申し出て、教皇とローマ教皇庁を困惑させている。

 司教や司祭が関与する”事件”ー権力の乱用、精神的、性的虐待、金銭上の不正行為などーに対処するのは、バチカンの当局者の日常業務のひとつだ。”火事”はほぼ毎日世界のどこかで起きており、バチカンの担当部署ー聖職者省、司教省、奉献・使徒生活会省、福音宣教省などーが調査に乗り出す。そしてそれが聖職者による未成年者の性的虐待に関わる問題である場合には、教理省が担当することになる。

 フランスの雑誌「ル・ポワン」が先週、ミシェル・オペティ大司教の統治と私生活についての問題を取り上げた時、その情報はすぐに教皇フランシスコ自身に伝えられた可能性がある。司教省の担当者が”自動的”に予備調査を開始することになる。そして、まず、現地フランスに駐在するバチカン大使から話を聴く。大使は、駐在国の教会に起きた問題の真偽を検証し、教会にどれほどの影響を与えているか調べる責任がある。

 (注:パリ大司教区は、100以上の小教区と1200人もの司祭を抱える大教区。その動静は、フランスの教会だけでなく、政治、社会にも大きな影響力を持つ。オペティ大司教は1951年生まれの70歳。大学卒業後、11年間医師を務めた後に神学校に入り、44歳で司祭に叙階され、9年後の2006年にパリ補佐司教となった後、2014年にナンテールの司教、そして2017年にパリ大司教にそれぞれ教皇フランシスコに任命されるという”スピード出世”を遂げていた。「カトリック・あい」)

 

*調査結果を基にした司教の処遇はあくまで教皇の判断

 だが、ドイツのケルンで起きている問題に関してしたように、バチカンが一人ないしそれ以上の調査担当チームを現地に送り、近隣の教区の司教たちや教会関係者たちも含めて調査を行うことがある。ただし、性的虐待などの最も深刻な問題が表面化した場合であっても、これに対応する常設の調査チームを、バチカンが持っているわけではない。「私たちはすべてを”遠隔操作”で処理しますが、調査担当者の独立性に問題が生じることがあります。特に遠隔の地域の場合、その可能性がある。しかし、他の手段はありません」とバチカン関係者は語る。

 問題に関係するのが司教の場合、最終的な判断は教皇自身に委ねられる。司教省、最も深刻な問題がある場合は教理省が調査し、結果を教皇に提出する。担当省は、調査結果を基にした司教の処遇などについて教皇に提案はできるが、最終的な判断は、任命と同じように、常に教皇が行う。

*”辞表受理”を拒んだ教皇への圧力への対応は

 当然ながら、司教が辞任を申し出たことが公になれば、調査には、そうでない場合よりも細心の注意が必要になる。そうした事態は、最近、何度か起きている。フランスで最も注目されたのは、リヨン大司教区のフィリップ・バルバラン枢機卿が、悪名高い小児性愛者の司祭の行為を隠蔽したとして非難され、2019年3月に辞任を申し出たケースだ。

 ドイツでもミュンヘン大司教区のラインハルト・マルクス枢機卿が昨年6月に、「過去数十年にわたるドイツの聖職者による性的虐待の大醜聞の責任の一端を負いたい」と教皇に辞表を提出した。ケルン大司教区のレイナー・マリア・ウォルキ枢機卿は「自分に、ケルン大司教区での性的虐待への対処に誤りが認められれば、教区長を辞任する」と述べている。

 だが、教皇は当初、これらの司教の辞表を受理することを否定し、多くのメディアから批判を受け、カトリック司祭や信徒たちを当惑させた。その結果、教皇は、バルバラン枢機卿が常の「司教定年」を迎える6年前の69歳で辞任することを認めたが、マルクス枢機卿には現在のポストを留まるように求め、ウォルキ枢機卿には今後6か月を「精神的な職務停止」の期間とするように命じている。

 教皇を困難な立場に置くリスクを十分に認識していたオペティ大司教は、自分の辞表が公けになることを望んでいなかったが、先週の金曜日に、中道右派のパリの日刊紙「Le Figaro」が、「70歳の大司教が義務を放棄することを申し出た」と報じた。

 教皇フランシスコに近い人々は、「教皇は、公けの圧力を受けて判断を余儀なくされることを、何よりも嫌っておられる」と主張している。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2022年1月10日