・古風で透明性を欠く現在の司教の選び方は改める必要 (LaCroix)

(2021.11.30 LaCroix  Isabelle de Gaulmyn | France)

 カトリック教会の司教を任命する手続きは、非常に古風で、過度に秘密主義のままだ。改める必要がある。

*司教たちは困難な時を迎えている!

 これまでカトリック教会の信徒と位階制の関係を特徴づけてきた”従順な音色”に慣れている人にとって、これは「変化だ」と言わねばならないだろう。

 フランスの独立委員会が、最近まで70年にわたる聖職者による大規模な性的虐待と隠ぺいの問題を具体的に明らかにして以後、フランスの司教たちは”普通のカトリック教徒”たちから、直接に厳しい批判を受け続けている。この国の教会の指導者たちはこれまで聖職者による性的虐待の問題に対応してきたが、信徒たちは、そうした司教たちの”正当性”に公然と疑問を投げかけているのだ。

 信徒たちは、もはや司教の”過剰な権力”を容認せず、教会における発言権を持つことを主張し、中でも司教を選定する過程に関与することを希望しているー教会において、司教は全能、教皇が世界の全司教を任命することができる、と考えるのはおかしいのではないか、と。

 そうした疑問を持つことが、いかに”残酷”なことであっったとしても、教区のすべての鍵を握る一人の手に権力が集中する、現在の統治システムに対する反発の表れである。司教が間違いを犯した場合、その結果に責任を負わされるのは、カトリックの教会共同体全体なのだ。

*選び方を誤ると、”悲惨”な結果に

 司教という立場の重要性を考えると、間違った人を選ぶことが悲惨な結果を招く可能性がある。司教の任命は間違いなく教会の最も古風な手順の1つだが、教皇が世界の司教たち1人ひとりをすべて任命できる、と考えるのは馬鹿げている。司教が世界に5000人以上もいることを考えれば、教皇が一睡もせずに努力しても、任務を遂行できないことは自明だ。

 司教選任の手順は”教皇職の秘密”とされているが、実際には、司教たちは、世界各国に駐在する教皇大使、あるいはバチカンに影響力のある枢機卿や司教によって、ないしはそれらの組み合わせで、選ばれている。だが、個々の司教の選任の内容は”秘密”によって守られているため、非常に機密性が高い。

 つまり、特定の司教の任命について相談を受けた人物は、誰にもそのことを明かしてはならないのだ。候補者を選ぶ基準や、バチカンから受けた質問の内容も開始されることはない。カトリック教会の置ける最も重い懲罰ー破門ーを避けるために、”教皇職の秘密”に従順であらねばならない。結局、意見を聴かれた司教や司祭は大半がそういうことになる。彼らに対する質問は、司教候補者に顕著な問題が無いことを確認するためのものだ。

 司教の条件は、教義において完全に正統であり、既婚男性(女性は言うまでもなく)を叙階することに賛成する意見を述べたことが無く、「感情のバランスが取れている」、”本物の祈りの生活”を送っていること、などだ。その狙いは、司教としての責任を遂行する能力について肯定的な基準に基づく選択をするよりも、問題のあるケースを避けることにある。

*だが公会議以後も選定手順は透明性を欠いたまま

 こうした司教選定の手順は、第二バチカン公会議(1962-65)以後も、まったく見直されることが無く、透明性を欠いたままだ。  司教の第一人者、ローマ司教―教皇ーはコンクラーベの中身は秘密にされているが、投票は何回も繰り返され、その過程で、さまざまな”有権者”たちの意見交換がある。だが、各教区の司教を選ぶ時には、誰が選ばれるかで一番影響を受ける信徒たちは、何も知らされない。

  私たちは教会に、世界のすべての教区で選挙をするように求めているのではない。しかし、「開かれた民主的なプロセス」と「一元化され中央集権的な司教選任」に、妥協点を見出すことは可能なはずだ。少なくとも、教会は良き慣行の指針を考えることができるだろう。教会という組織の宗教的な特殊性が、精神的指導者を選定するための時代錯誤的な方法を正当化することはないのだ。

(Isabelle de Gaulmynは、La Croix の週刊誌「La Croix L’Hebdo」の編集長、LaCroix の元バチカン特派員)

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年12月10日