・写真で見る教皇フランシスコの2019年(Crux)

(2019.12.30 Crux Senior Correspondent Elise Harris)

Pope Francis in 2019: A year in pictures

 (ローマのスペイン階段そばの聖母マリア像の前で、ローマのクリスマス休暇入りの開始を告げる毎年恒例の儀式で祈りの前に) (Credit: AP Photo/Gregorio Borgia.)

 ローマ発ー写真は一千語の価値がある、と言われる。だとすれば、2019年の教皇フランシスコとカトリック教会に関するこれらの写真は、この一年の最も目立った、重要な瞬間について、言葉以上に明確に語っている、と言えるだろう。 2019年の1月から12月にかけてのこれらの写真は、教皇のこの一年の主な仕事ー世界各地への司牧訪問、聖職者による未成年性的虐待問題への取り組み、宗教間対話の推進、あるいは、彼が常としている論争の巻き起こしーを記録している。
【1月】

(パナマの非行少年収容所で入所者の告解を聴く=2019.1.25=Credit: AP Photo/Alessandra Tarantino.)

 1月22日から27日まで、教皇フランシスコはパナマに滞在され、バチカンが主催するワールド・ユースデイに出席。参加した世界の若者たちに、他者との人間的なつながりをテクノロジーで代替することのないように、環境を大切にするための役割を果たすように、つよく求めた。【2月】 教皇は2月3日から5日にかけてアラブ首長国連邦・アブダビを訪問、カトリックとイスラム教の宗教間対話に臨まれた。 訪問中に、アラブ首長国連邦のシェイクk・ナヒアン・ビン・ムバラク・アル・ナヒアン大臣と会見、また、エジプトのアル・アザール大学の指導者、アーメド・エル・タイエブ師と人間的な友愛促進の共同宣言に署名した。

(アブダビの創立者記念館での宗教間対話集会の後、エジプトのアル・アザール大学の指導者と「人間的な友愛」の共同宣言を交換=2019. 2.5=Credit: AP Photo/Andrew Medichini.)

 また2月は21日から24日にかけ、バチカンで児童保護のための全世界司教協議会会長会議を招集し、聖職者による未成年性的虐待は西欧だけの問題でないことを認識するよう求め、被害者の声を真摯に聴く必要を強調。いくつかの具体的対応策が決められた。

(聖職者による未成年性的虐待問題への対処を話し合う全世界司教協議会会長会議で、告解式に参加する教皇フランシスコ。会議を招集された教皇の狙いは世界の司教たちに対して、「この問題は世界的な問題であり、隠ぺいも問題になっている」と強調された=2019.2.23=Credit: Vincenzo Pinto/Pool Photo Via AP.)

【3月】

(モロッコのラバト・サーレ空港で国王・モハメド6世の歓迎を受ける=2,019.3.30=Credit: Fadel Senna/Pool Photo via AP.)

 3月30、31の両日、モロッコを訪れた教皇は、カトリックとイスラム教の関係強化を改めて表明、また同国の少数派であるカトリック信徒たちを励まし、テロと移民・難民に対する無関心を批判した。 【4月】(南スーダンのサルバ・キール大統領の足元で絨毯に接吻する教皇。バチカンで行われた同国の政治指導者たちのための2日間の黙想終了時に。教皇は彼らに和平への機会をもたらすように願った=2,019.4.11=CNS photo/Vatican Media via Reuters.) 4月初め、教皇フランシスコと英国国教会の長、ジャスティン・ウエルビー大司教は、南スーダンの政治指導者と宗教指導者を招いて、”信教一致の黙想”の機会を持った。その集いの終わりに、教皇は指導者たちの足元にひざまずき、指導者それぞれの前で絨毯に接吻し、平和実現へ彼らの努力を願って、彼らを驚かせた。

(スリランカ・ネゴンボでの埋葬ミサで泣き崩れる女性。イースターに国内の教会、ホテルが自爆テロの標的となり、多くの犠牲者を出した=2,019.4.23=Credit:Reuters via CNS.)

 4月はまた、復活の主日にスリランカのミサ中の教会、高級ホテルが自爆テロに襲われ、300人以上が犠牲になるという大きな悲劇が起きた。
【5月】(ブルガリア・ソフィアの難民キャンプで子供たちの描いた絵をおくられる教皇=2019.5.6=Credit: Vatican Media/pool photo.) 5月5,6両日、マケドニアとブルガリアを訪問した教皇は、移民・難民を守る姿勢を改めて強調する一方、東方教会との関係強化に努めた。マケドニアでは、2016年に列聖したカルカッタの聖マザー・テレサ誕生の地に敬意を表した。【6月】

(「聖アンドレアスのイコンをルーマニア正教会のダニエル総主教から贈られる教皇。ブカレストで=2019.5.31=Credit: AP Photo/Andreaa Alexandru.)

 5月31日から6月2日には、ルーマニアを訪問。ルーマニアの共産党独裁政権の下で信仰を捨てることを拒否した7人の司教たちを列福し、”ジプシー”と軽蔑して呼ばれるロマ族の共同体に対する差別を批判。またルーマニア正教会との関係強化の努力を続けた。
【7月】

(バチカンでプーチン大統領と私的謁見=2019.7.4=Credit: Alexei Druzhinin, Sputnik, Kremlin Pool Photo via AP.)

 多くの人が夏休みに入る7月も教皇フランシスコは精力的に活動を続けられた。教皇就任以来3度目となるロシアのプーチン大統領との会見、さらに翌日のはウクライナのギリシャ正教会の指導者たちと会った。同教会の指導者たちは二日間にわたってバチカンの高位聖職者たちと話し合いを持った。

 

メルボルンの地方裁判所前でペル枢機卿を待ち受ける枢機卿糾弾のグループ=2019.2.27⁼Credit: AP Photo/Andy Brownbill.)

【8月】

 8月21日、オーストラリアの裁判所が、未成年性的虐待で有罪判決を受けたジョージ・ペル枢機卿の控訴を棄却した。昨年12月にペル枢機卿は1990年代に、聖歌隊の少年二人に性的虐待を働いたとして有罪判決受けていた。バチカンの最高位の聖職者が未成年性的虐待で有罪判決を受けたのは初めて。 ペル枢機卿の弁護団は8月の控訴棄却を受けて、高等裁判所へ上訴の手続きをとり、11月に受理された。聴聞は2020年2月に予定されている。

【9月】

 教皇は9月4日から10日まで、アフリカのモザンビーク、マダガスカル、モーリシャスの3か国を訪問。マダガスカルでは宣教者たちが作った貧困家庭のための定住施設を訪れ、貧しい人々との連帯を行動で示した。また、一連の訪問で、移民・難民の権利を守り、環境を保護することを改めて訴え、アフリカで進む森林破壊、資源収奪の動きを強く批判した。

(マダガスカルのアンタナビロでのミサ会場のに到着した教皇=2019.9.8=Credit: AP photo/Alessandra Tarantino.)

【10月】

(聖ペトロ大聖堂で行われた枢機卿会議でミカエル・ツェルニー新枢機卿。教皇は新枢機卿として、自身と思いを共にする13人を選んだ=2019.10.5=Credit: AP Photo/Andrew Medichini.)

 10月は2019年で最も話題(多い月となった。13人の新枢機卿を任命し、多くの課題を抱えたアマゾン地域シノドス(代表司教会議)を招集した。 新枢機卿の選任は、宣教活動、宗教間対話、移民・難民対策を最優先する教皇の思いの表明、と多くの関係者が解釈した。

 アマゾン地域シノドスで大きな議論になったのは、既婚司祭をこの地域限定で認めることの是非だったが、それだけでない。

 “Pachamama”という名で知られるようになったカヌーに乗った半裸の女性の画像-アンデスとアマゾンの一部地域に住む人々が崇める「母なる大地」を象徴する姿-も注目を浴びた。 教皇支持派はこの会議を、原住民の共同体社会を支持し、現地の文化と同化した信仰を受け入れる試みとして擁護したが、批判派は、司祭の独身制に制限をかけ、異教の偶像を崇めるのを肯定することで異端との融和を図るものだ、と批判した。

(アマゾン地域シノドスの開催中に展示されたトラスポンティナの聖マリア教会に掲げられた妊婦の像の写真。この像のいくつかのコピーが教会から盗まれ、ティベル川に投げ捨てられた=2019.10.18=Credit: CNS photo/Paul Haring.)

 

(辞任したバチカン情報管理局長のレーネ・ブリュハルト氏=Credit: CNS.)

【11月】

 11月半ばには、バチカンで関係者を驚かせる人事があった。前教皇ベネディクト16世のもとで2012年に創設された資金洗浄防止チームのリーダーを務めてきたスイス人弁護士、レーネ・ブリュハルト氏が辞任-バチカン国務省による不明朗な不動産取引の捜査の一環として事情説明なしにチームの事務局が捜索された直後だった-したのだ。多くの観測筋は、彼の辞任は教皇が進めるバチカン財政・金融改革の努力に大きな打撃となるだろう、と評した。

 11月19日から26日にかけて、教皇は、タイとともに、長年の夢だった日本を訪問した。訪問では、宗教間対話の推進を強く主張するとともに、核兵器廃絶を強く呼びかけた。

(教皇は広島の平和記念公園での式典で原爆被災者たちと会われた=2019.11.24=Credit: AP Photo/Gregorio Borgia.)

【12月】

(聖職者による性的虐待の被害者で、同被害の絶滅運動を進めるホアン・カルロス・クルスがニューヨークでこの問題対策で先頭に立つチャールス・シクルーナ、マルタ大司教と会見した=2018.2.17=Credit: AP Photo/Andres Kudacki.)

 教皇フランシスコは17日、教会関係者による未成年者への性的虐待等に関して、調査や裁判への協力をより可能にするため、「教皇レベルの機密」を廃止することを決定、同時に未成年者ポルノ画像に関する法令の一部を改正した。この措置は、聖職者による性的虐待の被害者や専門家から、児童保護のための教皇の取り組みの大きな一歩と評価する声が出ている。

 

Follow Elise Harris on Twitter: @eharris_it

 


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2019年12月31日