(2020.6.6 Bitter Winter
中国全土で、信仰を実践し続けようとする高齢のキリスト教徒が、公的補助金の支給を停止される動きが出ている。
新型コロナウイルス・ショックで、中国でも多くの人が家計に打撃を受けているが、中国政府・共産党はキリスト教を信じる高齢者から、生存のための最後の手段、公的補助金を奪おうとしている。つまり、命を保つために、神を信じることをやめろ、と言われているのだ。
江西省福州市のカトリック教徒の60代の女性。夫が亡くなった2018年以来、政府から毎月250人民元(約35ドル)を支給されてきたが、昨年末になって、地方政府の担当者から、「自宅に掛けてあるイエスの聖画を撤去しないなら、補助金の支給を停止する」と言い渡された。彼はその理由を「お前を養っているのは共産党だ。だから、神ではなく、共産党を信仰しなければならない」と言い、彼女が撤去を拒むと、2か月後に支給が停止された。
「宗教的迫害で、神への信仰を維持することが困難になっています」と彼女は、BitterWinterの記者に訴えた。
また、福州市の役人は4月30日、同時に住む別の80代の女性宅に押しかけ、家に飾ってある十字架像を布で覆わないと、高齢者手当の支給を止める、と通告。女性は従わざるを得なかった、という。
福州市政府は4月下旬から、「帰郷調査」と使って、”宗教調べ”を強化した。信仰を示すような行為を止めさせた場所への”訪問調査”だ。調査の対象とされた高齢のプロテスタントの男性の場合。彼は、身体マヒで8年間、老人ホームに収容されていたが、「信仰を続けるなら、ホームを出なければならない」と同市民政局の担当者に言い渡された。信仰を止めない場合、「5つの保証」、つまり住宅、食料、衣料、医療、および葬儀費用についての公的援助を取り消す、ということだ。
彼のホームの部屋に置かれていたイエス像は、昨年秋にすでに撤去されていた。「当局は『共産党がお前を養っているのだから、神ではなく、共産党を信じるはずだ。そうしなければ、お前が得ている社会的援助はすべて取り消される』と私に言いました」と言うこの人はBitterWinterに、 「政府からどのように強要されても、私は信仰を捨てません。信仰を守ることで援助を打ち切られるなら、私はもっと早く、神に会うことができる」と悲壮な思いを語った。
江西省の鷹潭市では、1月19日に市の担当者が、病いのために外出できず、自宅で友人たちと集会を開こうとしたキリスト教徒の女性が、公的補助金の支給を停止された。3月には、別の2人の受給者の信徒の自宅にあった教会歴を取り上げられた。
また、山東省の大安市に住む70代のカトリック信徒の女性は今年1月、、自宅に家に聖画が飾ってあるのを市の担当者に見つけられ、「共産党の福祉政策の下で暮らすことができている」との理由で、習近平や毛沢東の肖像画に置き換えるように言われた。従わなければ、補助金の給付を止められる可能性があるが、「主イエスの肖像画を削除するように強いることで、当局は私の神への信仰を止めさせようとしました。でも信仰を私の心から奪うことはできません」と言明している。
4月の終わりに、山東省荷泽市 の貧困者補助金を受けていた数名の高齢の信徒の家にあった十字架などの像を、当局の役人が破壊した。信徒たちは「当局は家庭にそのような像を置いている人々に補助金を与えるべきではない、と言うのです」と訴えた。補助金を受け続けるためには、神でなく、共産党を信じねばならないのだ。
同じ月に、4月、河南省開封市の貧しいキリスト教徒の女性の家から、教会歴と十字架などの聖画を取り払い、当局の幹部が調査に入る前に家を改装し、便器を取り付けるように命じた。そうした命令は、貧困対策の規則に反するものだった。「収入がないのに、どうすればいいのでしょう。私は、どうやったら彼らを納得させられるのでしょう。文化大革命の時と同じ(注:理不尽なやり方)です」と悲嘆に暮れている。
(写真は、高齢者手当の支給継続のために、80代の女性が自宅の十字架像を布で覆うことを余儀なくされた)