・世界中で修道女たちが新型ウイルス感染との戦いの最前線にいる

Around the world, nuns on ‘front lines’ of coronavirus pandemic

Nuns attend Holy Thursday Mass in a nearly empty cathedral April 9, 2020, in Ouagadougou, Burkina Faso, during the COVID-19 pandemic. (Credit: Anne Mimault/Reuters via CNS.)

 ローマ発ー新型コロナウイルスの世界的な大感染の中で、世界中の修道女たちが感染の予防、意識向上などの分野で働き、貧しい人々、病気の人々、高齢な人々の世話に献身している。

 国際女子修道会総長連盟(UISG)のパット・マレー事務局長はCruxのインタビューに答え、「修道女たちは主として、新型ウイルスの蔓延防止と病気の人の世話の二つの最前線にいます… 特に世界の貧困地域で、非常に重要な役割を果たしているのです」と説明した。

 UISGは世界の約2,000の女子修道会の総長をメンバーとし、それぞれの修道会が新型ウイルスの感染拡大防止に戦っている。事務局長によると、多くの修道女は、医師や看護師として、アフリカやアジアの小さな地方病院や、医療クリニック、ヘルスケアセンター、移動医療施設で、医療支援や人々の教育に当たっている。

 先進国では、すでに新型ウイルスとの戦いに従事しており、途上国では、医療施設などで必要な資材の調達に忙殺されているが、多くの施設で人工呼吸器や医療用マスクの確保に大変な苦労をしており、家庭でマスクを作るのを手伝いに出かけることまでしている、という。

 貧困国のスラムや小さな村でも積極的に活動しており、保健衛生に関する住民たちへの教育活動や、国が発行する感染防止の注意事項についてのパンフレット配布、字の読めない人への口頭での説明などを進めている。食糧支援のNGOなどで働いている修道女は、住民への食料を配布するだけでなく、それでも足りない場合は、自分の食料を分け与えたり、必要な日用品を買えない人の為に提供することもしている。

 修道女たちの支援活動は、医療や食料の提供にとどまらず、感染の危険を避けるために人との接触を減らす対策の一環として、インターネットを使った「オンライン講座」を開設し、祈りや黙想、霊的生活の指導を始める修道女もおり、「希望や安心を持てるようにすることを目標にしている」という。高齢者や移民・難民あるいは人身売買被害者たちと働く修道女は、彼らと常に連絡を取り合い、定期的に無事を確認し、新型ウイルス感染を含む危険な目に遭わないように努めている。

 問題は、イタリア、スペイン、アメリカなど膨大な感染者が出ている国で、修道女たちの修道院内感染が目立っていることだ。特に、高齢者の多い欧州の修道院では多くの死者も出て、感染の危機が深刻だ。正確な実態はUSIGは把握していないが、「姉妹を失うことは共同体にとって大きな損失です… 深い悲しみにおいて、修道会は一般家庭と変わりません。修道女の死は、彼女の親族と修道会の二重の悲しみです」と事務局長は語る。

 感染予防策としては、現地政府の規制に倣って、手洗いの励行、フェイスマスクの着用、人との間で社会的距離を置く、など厳重な対応に努めているが、これまでは、特に欧州で、新型ウイルスの感染力の強さ、症状の重大さなどに十分に気付く前に、感染が拡大してしまった。大規模な修道院では、基本的な衛生習慣に加えて、修道院の中でも互いに適切な距離を保ち、食卓に就く時に間隔をあけるように食事時間をずらす場合もある。病院、診療所、休憩所で働く姉妹は、修道院内でも、他の姉妹が感染しないように、物理的な距離を置くのに努めている。

 事務局長によると、UISGは、現地で働く修道女たちに対する支援の一環として、修道院と住民とのビデオ会議やインターネット・セミナーによる対話・交流などを工夫している。

 最近、女子修道会Sister of Mercyの修道女で心理学者のシスター・マリアンヌ・ローレイは、「大感染における対処のあり方」と「大感染における個人的、社会的悲しみにどう向き合うか」について、修道女たちに、考え方を提供した。その中で、「悲しみの津波」の最中にあって、教区、家族、友人ちと、インターネット・セミナーからの情報を共有することを奨励している。

 事務局長は、先日、UISGのヨランダ・カフカ会長が出した復活祭に当たってのメッセージを引用し、「私たちは、暗闇に立ち向かいつつ、夜明けを期待して待つ女性です… 私たちはすべての人類と共にこの暗闇に直面しています(そして)私たちは自分自身の精神的な資源を、希望を養うために活用することができるのです」と語った。

 そして、「人類の危機の時を生き、働く中で、そこにある希望と思いやりの種を育てることに、目を向けることもできます。それが、カトリック教会の『豊かな霊的な伝統』です」と強調した。「私たちは今のこの時に、その霊的な伝統を、信仰のある人々、信仰のない人々と共有したい… 人類を養い育て、私たちを含むすべての人の信仰を養い育てたいのです。そうすることで、皆が共に生きる新しい道を見つけつことができるように。現在の状況においてだけでなく、将来のおいても、地球上で最も貧しい人々のために、そして私たち自身の世界と私たちの生き方のために、です」。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年4月25日