・「東トルキスタンにおける民族大虐殺」-ウイグル族弾圧を告発する新報告書発刊(BW)

Campaign for Uyghurs, chaired by Ms. Rushan Abbas, offers evidence of the criminal policies of the CCP, and calls for an international trial.

(2020.7.13 BitterWinter by Marco Respinti)

 民族的、宗教的あるいは文化的に特定の民族を一掃するために計画された犯罪行為を、何と呼ぶのか-ナチスのユダヤ人に対する犯罪行為を告発する際に、ポーランドの法律家、ラファエル・レムキン(1900‐1959)が使った造語”Genocide(大量虐殺)”がそれだ。道徳的、法律的、そして哲学的な重みさえもつ言葉だ。

(注:レムキンは1939年、ドイツ軍に侵略を受けたポーランドを脱出、スウェーデンを経て米国に渡り、1944年にカーネギー国際平和財団から『Axis Rule in Occupied Europe(占領下のヨーロッパにおける枢軸国の統治)』を出版。同書のなかで、「国民的集団の絶滅を目指し、当該集団にとって必要不可欠な生活基盤の破壊を目的とする様々な行動を統括する計画」を指す言葉として”Genocide”という新しい言葉を造語した)

 Genocideは残念ながら、世界史の中で何度も起きた行為である。特定の民族全体を抹殺しようと、可能な限り体系的、科学的に計画が立てられ、実行されるー私たちは「民主主義の時代」に生きていると言われているにもかかわらず、現代でも起きている。

  フランスの歴史家、レイナルド・セシェールは、人類の歴史上はじめての大量虐殺に関する最も優れた専門家の1人だ。その研究は、フランス革命の最中に、同国中西部ヴァンデのカトリック教徒が組織的に絶滅させられた戦い。彼は「大虐殺」の概念について詳しく説明し、さらに”Memorycide(記憶虐殺)”という言葉を創ったー大量虐殺される人間集団の記憶までも破壊し、歴史からその記録、痕跡を消し去ることだ。

 さらに、最近の学者たちは”Cultural geocide(文化大虐殺)”の概念も導入するようになっている。身体的抹殺にとどまらず、文化をも抹殺する行為を意味する。

 そして、これが、今まさに中国・新疆ウイグル自治区で起きていること。主にイスラム教徒のウイグル人やその他のトルコ系少数民族が住むこの地域を、彼らは「東トルキスタン」とも呼ぶのを好む。まさにこの理由から、法律家の中には、中国が、関連の条約を批准していなくても、中国共産党政権を国際刑事裁判所に引き出すことができるし、出来るだけ早く、そうすべきだ、と考えている。

 この問題に関する新しい報告書が出された。タイトルは「東トルキスタンにおける大虐殺」で、出版したのはルーシャン・アッバス女史が会長を務めるCampaign for Uyghurs’本部・米ワシントン)だ。報告書には、BitterWinterが最近報道を続けているこの地域における実情がまとめられている。

 民族全体を抹殺しようとする中国共産党の行動は、新型コロナウイルスの世界的大感染によっても止まることはなかった。新疆ウイグル自治区のイスラム教徒は、あらゆる方法で脅迫を受けて続けている。違法な逮捕・拘留、宗教的、文化的差別、さらには宗教的戒律で禁じられている豚肉を食べ、アルコールを飲むよう強制されるなどの屈辱を受け、そして家の内部をウイグルの伝統的装飾を外させられる。少しでも抵抗すれば、”教育キャンプ”に送られ、恐ろしい思想改造に遭う…

 報告書に重点的に書かれているのはウイグル族の女性たちの運命だ。ウイグル族の人々と生活を共にすることで 日常生活を管理下に置くのを狙いに、特別に訓練を受けた中国共産党の党員100万人がこの地域に送り込まれた。

 この”作戦”は中国共産党が”二重血縁計画”(ウイグル族の各家庭に実際の血縁者と中国共産党が持ち込んだ”血縁者”が共存する、という意味)と命名したもので、ウイグル族の少女、女性が共産党のスパイとベッドを共にする義務を意味する場合もある。その”結果”予測するのは難しいことではない。

 中国共産党が選んだ漢民族の男とウイグル族女性の強制された結婚という”災難”も日常化しており、さらなる苦痛をもたらしている。Campaign for Uyghursが非難しているように、これはウイグル族女性に対する性的暴行以外の何ものでもない。

 報告書の最も重要な部分は、「大量虐殺」の法的概念に関する序論と、中国共産党による大量虐殺の意図が明確に示されているいくつかの章だ。具体例として挙げられているのは、家庭崩壊を狙った行為ー強制収容所に送られた親や親類の子供たちを強制的に家から連れ出して”再教育”する、新生児が生まれないようにする女性に対する不妊手術や妊婦への流産措置などだ。

 「こうした犯罪は、国際委員会によって提訴されねばなず、犯罪者は国際司法裁判所で裁かれねばならない」と報告書は結論付けている。そうでなければ、ウイグル族の指導者だったイサ・ユスフ・アルプテキン(1901–1995)が警告したように、「私の民族は破壊の危険から逃れることができないなら、滅びてしまう」だろう。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2020年7月14日