・「ウクライナには自衛し、外国から武器供給を受ける権利がある」とバチカン外務局長(Crux)

(2022.5.13 Crux  Rome Bureau Chief Ines San Martín)

 また外務局長は、米国と中国の果たすべき役割についても言及し、「(注:世界平和に強い影響力を持つ米中はじめ)私たち全員が、現在の状況に対して役割を果たす、という道義的責任を負っています」とした。

 そして「この戦争を速やかに停止させ、平和を回復できなかったことで、安全保障の国際的なシステムが弱体であることを示した事実」だが、 「私たちは安全保障の多国間の仕組みを放棄してはならない。逆に強化せねばなりません。米国、中国、そして国連の安全保障理事会のメンバー国のように国際政治に強い影響力を持つ国々は、果たすべき極めて重要な役割を持っており、私たちが直面している緊急性を理解する必要がある」と言明。

 さらに「『重要な役割』とは、『武器供与』だけを意味するのではありません。、外交と対話における『言葉』が最も重要であると私は信じています。ただ、言葉は”道具化”される可能性があり、実際に”道具化”され、人々の不信につながった。私たちの言葉で人々の命が危険にさらされるようなときには、特に誠実さが言葉に必要になります」と語った。

 外務局長はまた、ウクライナ戦争には宗教的側面があり、ロシアのウクライナ軍事侵攻によって、ロシア正教会のキリル総主教とギリシャ正教会のバーソロミュー・エキュメニカル総主教との間に「緊張」が生まれていることを認め、「残念ながら、正教会には、強い国民的アイデンティティ、国家と結びついた側面があることを、私たちは認識せざるを得ない」としつつ、 「ロシア正教会が、ロシア政府を批判、あるいは反対する決定を下すことは非常に困難ですが、教皇が語っておられるように、私たちは真の平和の推進者となるために、このような事態を克服せねばならない」と述べた。

 また外務局長は、教皇が先にイタリアの新聞Corriere della Seraとの会見でキリル総主教が「クレムリンの祭壇の奉仕者」になることを警告されたことについては、「起こり得ることに対しての警告です。正教会、とくにモスクワとイスタンブールとのエキュメニカルな関係は、教皇にとって優先事項。6月中旬に予定されていた教皇と総主教との会談はできなくなりましたが、対話は続けられます」と答えた。

 そして、会談の延期の決定は、教皇の「賢明」な判断であり、「それは、ご自身の行動が前向きな貢献となる必要があり、事態を悪化させるのではなく、平和の道を育む必要があることを、教皇が認識しておられるからです」とし、「教皇には、対話への使命があります。私たちは、どちらか一方にくみすることのないように努めていますが、現在の恐ろしい紛争の解決策を見つけるために、すべての人々の間で対話の場を探しているのです」と強調した。

 マリウポリの製鉄所に閉じ込められた2人のウクライナ兵の妻と教皇が会見するなどの教皇の行為の重要性については、「十分な貢献とは言えませんが、重要なこと。悲惨な現実を変えることができないとしても、できる限りのことをすべきです。『振る舞いの達人』である教皇は、ウクライナから避難して来た何百万人もの人々、特に女性と子供たちに明確な支援のメッセージをだしています。教皇は、彼らのおかれた状況を考える時、涙を流す、と言われますが、これは本当です。教皇は深い感受性を持っておられるのです。彼らが味わっている苦しみを全世界に伝える必要があります」と語った。

(編集・翻訳「カトリック・あい」)

バチカン外務局長ギャラガー大司教、ウクライナを訪問

(2022.5.18 バチカン放送)

 バチカンの外務局長ポール・リチャード・ギャラガー大司教が18日、20日まで3日間の予定でウクライナを訪問した。戦争に苦しむウクライナの人々に教皇フランシスコの寄り添いを伝えるのが目的で、ウクライナ西部のリヴィウ、さらに首都キーウを訪れる予定。

 初日18日、ギャラガー大司教は、ポーランド南東部コルチョバから、アンドリー・ユラシュ駐バチカン・ウクライナ大使とウクライナ司教協議会会長でリヴィウ大司教のミエチスラウ・モクシツキ師に迎えられてウクライナに入り、リヴィウ教区のラテン典礼大司教館を訪れ、教皇フランシスコの名のもとに、ウクライナの人々と国の平和を祈り、祝福をおくった。

 

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2022年5月14日