ローマ 発— 就任早々、改革や人事、新体制の導入で波紋を広げた教皇フランシスコとは異なり、教皇レオ14世は足場を固め、自身の在位期間をより長期的な視点で捉えようとしている。その中で、教皇は、これまでにいくつかの重要な決定を下しており、なお、いくつかの課題が控えている。
*5つの重要な人事
米国およびバチカンで予定されているいくつかの人事は、教皇にとって、教会の階層構造や中央統治を自身の意向や優先事項に沿って形作る機会となるだろう。
シカゴのブラース・クピッチ枢機卿は3月に77歳となり、司教の定年を2年超過した。つまり、教皇は間もなく、自身の故郷、シカゴに新たな大司教を任命する可能性がある。
12月にはロサンゼルスのホセ・ゴメス大司教が75歳を迎える。これにより、レオは米国最大の教区に新たな指導者を任命する機会を得る。
教皇はすでに、間もなく退任するニューヨークのティモシー・ドラン枢機卿の後任としてロナルド・ヒックス大司教を指名しているが、その人事は「イデオロギー的にどちらかに劇的に偏るものではなかった… こうした多くの決定に対する教皇の全体的なアプローチに沿ったものだ」と、教皇の母校であるビラノバ大学の法学・宗教学教授、マイケル・モレランドは述べた。
バチカンでは、典礼秘跡省の長官、英国人のアーサー・ロッシュ枢機卿が76歳を迎える。同省は、フランシスコ教皇による「伝統的なラテン語ミサへの物議を醸した規制」を執行する責任を担っていた。ロッシュの後任者については、教皇がこの問題にどう対処するかを示すものとして、厳しく注視されることになるだろう。
もう一人のバチカンの重鎮は、アメリカ人のケビン・ファレル枢機卿だ。78歳と定年を大幅に過ぎているが、依然として、命・信徒・家庭省を率いている。彼はまた、教皇を選出したコンクラーベを監督したカメルレンゴを務め、金融投資やバチカン市国の最高上訴裁判所を管轄する、最も機密性の高い聖座委員会も統括している。
カナダのマイケル・チェルニー枢機卿は7月に80歳の誕生日を迎える。これにより、彼はバチカンで最年長の長官(総合的人間開発省)となるだけでなく、次回のコンクラーベでの投票権も失うことになる。
チェルニー枢機卿が投票権を失うことで、教皇選出の投票権を持つ枢機卿の数は117名となり、80歳未満の投票権を持つ枢機卿の通常の上限である120名を下回ることになる。これは、教皇が来年、後継者を選出するための最初の枢機卿任命を発表する可能性があることを示唆している。
*レオがフランシスコの政策を変えた4つの点
教皇就任当初、フランシスコは若者に対し、それぞれの教区で現状を打破し、「混乱を起こす」よう呼びかけた。レオはすでに、こうした”混乱”の一部を整理しようとしている。
先月、バチカンはフランシスコ教皇の提唱による「世界子供の日」を中止した。この行事については、その目的や意義について疑問の声が上がっていた。「世界子供の日」の中止は、フランシスコ教皇が2024年の同イベントのために設置した教皇特別委員会の活動を、教皇が正式に停止したことに続く措置だ。
昨年12月、教皇は、フランシスコが死の床にあった最中に疑わしい経緯で設立されたバチカンの「資金調達委員会」を解散させた。同委員会は、専門的な資金調達経験のないイタリア人だけで構成され、委員長は国務省のアセッサー(顧問)だったが、国務省は以前、ロンドンの不動産取引におけるスキャンダルで数千万ユーロの損失を出した際、フランシスコによって資産管理権限を剥奪されていたバチカンの部署だ。
そして、同委員会解散の後、教皇は資金調達案と体制を策定する新たな委員会の設立を発表した。「教皇は明らかに注意を払っていた」と、発展途上国における教皇の慈善事業に資金を提供する米国の富裕層寄付者グループ「ザ・パパル・ファウンデーション」の会長、ワード・フィッツジェラルドは述べた。「教皇は、それが十分に機能しないだろうと気づいていたのだ」。
また教皇は、フランシスコが2022年に発布した、バチカン銀行に財政権限を集中させる法令も廃止。新たな法令を発布し、財務的に合理的であれば、聖座の投資委員会がバチカン外の銀行を利用することを認めた。
教皇は聖職者による性的虐待の被害者である活動家たちと面談。彼らによると、教皇は、バチカンに対し虐待に対する世界的なゼロトレランス政策の採用が求められる中で、対話をすることを約束したという。フランシスコは個々の虐待被害者とは定期的に面会していたが、擁護団体や活動家グループとは距離を置いていた。
*教皇との3つの重要な謁見
教皇の非公開謁見は、彼の関心事や懸念事項の手がかりを与えており、自身の意見をほとんど明かさないとしても、多様な意見に耳を傾ける姿勢があることを示唆している。
3月16日、オプス・デイ運動における疑惑の不正について記した著書『Opus: The Cult of Dark Money, Human Trafficking and Right-Wing Conspiracy Inside the Catholic Church』の著者、ガレス・ゴア氏と会った際もそうだった。
2月6日、教皇は「カレッジ・インターナショナル」の代表団と非公開で会談した。同団体は教会が運営する組織であり、「同性愛傾向を持つ人々が貞潔に生きるのを支援している」と主張している。批判派はカレッジを「反同性愛的であり、転換療法を推進している」と非難しているが、同団体はこれを否定している。
3月5日、『Trads. Latin Mass Catholics in the United States』の著者であるスティーブン・ブリヴァントとスティーブン・クラニーと会った。彼らは、伝統的なラテン語ミサに参加するカトリック信者について調査を行っていた。教皇は、ラテン語ミサに対するフランシスコ教皇の規制をめぐる論争を十分に認識しており、古い典礼をめぐる分裂をいかに癒やすかを検討する中で、伝統主義者たちと話し合い、彼らの見解を理解したい、という意欲を示している。
*2つの差し迫った問題-「聖ピオ十世会」の司教叙階とドイツ教会の司教・信徒協議機関設立
ラテン語ミサをめぐる争いは、来る7月1日に4人の伝統主義カトリック司教が、教皇の同意なしに叙階されることで、決着を迎える可能性がある。叙階を予定する司教たちは、分離派の伝統主義団体である「聖ピオ十世会」に所属しており、彼らの叙階は、これまでのところ教皇の権威に対する最大の挑戦となるだろう。もしこれが実行されれば、それは分裂行為に等しく、彼らの自動破門をほぼ確実なものにするだろう。
「聖ピオ十世会」は、伝統主義カトリック全体の中では過激派グループに過ぎない。しかし、聖座と完全な交わりにある伝統主義カトリック教徒たちは、レオがどう動くかを注視している。
その対極において、バチカンは「シノダルの道」として知られる長期的な改革プロセスを巡り、ドイツカトリック教会との重大な決裂に直面している。これは、ドイツの司教と信徒からなる恒久的な機関の創設案につながっており、統治権を司教のみに委ねるカトリックの教会論から大きく逸脱し、司教と信徒が共同で決定を下すことになる。
バチカンはすでに、このような共同組織に反対する姿勢を明確にしており、同性カップルへの祝福を正式化するドイツ側の提案に対しても異議を唱えている。フランシスコ教皇はこれについて、非公式かつ臨機応変な範囲内でのみ認めていたが、ドイツ側の提案が最終承認のためにバチカンに提出された際、対立が生じる可能性がある。
*当面の大きな仕事は—AIや他の平和・正義の問題を扱う回勅の発出
レオが直面する最大の課題は、ドナルド・トランプ大統領との関係や米国訪問の可能性だと言う者もいるが、教皇自身はおそらく、待望の最初の回勅を挙げるだろう。今後数週間以内に発表される見込みのこの回勅は、AI(人工知能)やその他の平和・正義の問題を扱うという。
教皇はすでに、AI革命の存在論的な重要性は、「レオ13世が世紀の変わり目に直面した労働者の権利に関する懸念と同様」と述べている。レオ13世は、画期的な回勅『Rerum Novarum(新事について)』の中で、この問題に取り組んだ。「産業革命に直面したレオ13世と同じレオを冠した教皇は、画期的な技術的変革の時代となるかもしれないこの時代に、教会が重要な役割を果たすことができる、と明確に認識している」と、 Sacred Heart Universityのダン・ロバー准教授は指摘している。