(評論)レオ14世の第一歩は、フランシスコとの連続性を示しつつ、「合議制による統治」を明確にしている(LaCroix)

 (2025.5.12 La Croix   Nicolas Senèze

 教皇レオ16世の選出からこれまでの発言と見る限り、フランシスコとの強い継続性を強調しつつ、彼自身のアウグスティヌス的なタッチと、より大きな合議性で統治するという明確な意図が見て取れるようだ。

教皇レオ14世の最初のレジーナ・コエリ、バチカン市国、サンピエトロ大聖堂のロッジア、2025年5月11日。(P(picture alliance / Stefano Spaziani / Newscom / MaxPPP)

  新しい教皇の初期の動きは注意深く読まれ、広く解釈されている。彼は何をするのだろうか?彼は何を決めるのだろうか? バチカンでは、人々は徐々にフランシスコの後継者を知り始めている。ある関係者が言ったように「急がない、急がない、ゆっくり行こう」だが。

 それでも、教皇レオ14世の最初の発言と公の場への登場は、教皇制が形作られつつあることを垣間見せてくれる。フランシスコの遺産を継続し、唐突ではなく、慎重に進むことに努めているように見え、しかも、明確かつ確固と話すことを恐れない姿…

 11日の主日の正午の祈りで、彼はフランシスコの「第三次世界大戦の断片化」を描写するフレーズを繰り返し、教皇パウロ6世が国連の演壇から「これ以上の戦争はやめよう」と嘆願した1965年の嘆願を繰り返した。

 そのわずか数日前、8日木曜の夜に行われた最初の講話で、彼はすでに「すべての人に平和を」と呼びかけていた。日曜日には、ウクライナの「公正」で「永続的な」平和、捕らわれている人々の解放、拉致された子供たちの帰還を強く求めた。また、ガザでの停戦と人質の解放を呼びかけた。
 その同じ朝、この日が「世界召命祈願の日」であることを振り返りながら、再びフランシスコからのメッセージを引用し、前任者と同様に、彼らの人々の近くに生きる羊飼いの必要性を強調した。

*喜びに満ちた信仰と親しみやすい口調

 

 その同じ司牧的な精神は、前日土曜日の、ローマの東約50キロにある小さな町、ジェナッツァーノへの急遽の訪問中に示された。そこで彼は、かつて彼が総長を務めていたアウグスティヌス会に委ねられた善良な助言の聖母の礼拝堂で祈り、集まった何百人もの地元の人々に挨拶する時間を取った。それは彼にとって初めての公の外出であり、微笑みを浮かべ、親しみやすい教皇を印象付けた。彼の新しい役割が命じる注目に、まだ少し圧倒されているようにも見えた。

 フランシスコとのその連続性の感覚は、彼がジェナッツァーノから戻った後、前任者の墓で祈った土曜日の夜にも明らかだった。翌金曜日の朝、システィーナ礼拝堂の枢機卿たちとのミサで、教皇として初めての説教をし、「救い主イエスへの喜びに満ちた信仰」を宣言することの重要性を強調。そして、キリスト教の信仰があまりにも頻繁に「弱者や知性のない人々にとっては、ばかげたもの」と片付けられ、社会は「技術、お金、成功、権力、そして快楽」を好んでいる、嘆いた。

*第二バチカン公会議への全面的なコミットメント

 続けて新教皇は、「そのような場所では、使命を果たすことが急務です。信仰の欠如は、しばしば悲劇につながるからです。意味の喪失、慈しみの無視、最も劇的な形での人間の尊厳への攻撃、家族の危機、そして私たちの社会を深く苦しめる他の多くの傷です」と訴え、翌日、シノドスホールでの枢機卿たちとの会議でこのビジョンを強化した。

 そして、枢機卿たちに、「 求めるべき普遍的教会の姿は、第二バチカン公会議をきっかけに何十年にもわたって続いています。今日、私たちの完全なコミットメントを共に新たにしましょう」と促し、フランシスコの使徒的勧告『Evangelii Gaudium(福音の喜び)』のレンズを通して第二バチカン公会議を解釈する意向を明らかにした。

 フランシスコの教皇職の綱領として広く見なされているその画期的な文書から、レオ14世は、「全キリスト教共同体の宣教者による改宗」、「最も小さい者と拒絶された者への愛情深いケア」、「さまざまな要素と現実における現代世界との勇気と信頼に満ちた対話」など、いくつかの主要なテーマを強調した。また、第二バチカン公会議の『Gaudium et Spes(現代世界憲章)』を想起しました。

*彼自身のアクセントで、合議制のガバナンス

 フランシスコの脚本から深く引き出しながら、レオ14世はすでに彼自身のアクセントを加えている。前任者と同様に、彼は貧しい人々への懸念を共有している。しかし、1891 年に『Evangelii Gaudium(新しい事柄について)』を交付したレオ13世、その工業化に対する教会としての最初の主要な対応に敬意を表して、自身の教皇としての名に「レオ」を選んだことで、彼は新しいテクノロジー時代の課題に立ち向かう意欲を示している。AI(人工知能)、経済の混乱、人間の尊厳、正義、労働に対する新たな脅威など、今日の革命がもたらす課題について、カトリックの教説が語られることを望んでいる。

 最も注目すべきは、10日土曜の枢機卿との会議で、「合議制」の重要性を強調したことだ。これは教皇選挙の前の枢機卿団の全体会議で出された主要な批判の一つ、つまりフランシスコが時に孤立した形で統治したこと、に対する”返答”といえる。レオ14世は、「教皇の最も緊密な協力者」と表現した枢機卿たちとの密室での会話の前に、短く話すことで明確な声明を出したのだ。

 バチカンが「自由な会話」と呼んだ彼の目標は、「アドバイス」、「提案」、「提案」を集めることだった。「非常に具体的なこと」と彼は要求した。このやり取りは、レオ14世が聖ペトロ大聖堂のバルコニーからの選出直後の演説で呼びかけた「シノダル(共働的)な教会」を具現化する、新しい統治モデルへのシフトを示しているのかもしれない。

*「キリストが残るように消えなさい」

 フランシスコがイエズス会士であったのに対し、レオ14世はアウグスティヌス会士だ。そして、それが最も意味のある違いを示しているのかもしれない。若い頃、ロバート・プレボストは、アウグスティヌスの共同体における先任者の役割に関して教会法の博士号を取得している。その役割は、権威だけでなく、霊的な奉仕と共同体の識別力に根ざしていた。

 今、グローバルな共同体を率いることになったレオ14世は、教会は「その構造の素晴らしさや建物の壮大さ」で知られるのではなく、「その構成員の神聖さ」、つまり「神が召した者の奇跡を宣言するために選んだ人々」によって知られるべきである、と枢機卿たちに強調した。

 深くアウグスティヌス的な、キリスト中心のビジョンの中で、ほんの数日前に世界的な注目の中心にいた男は、彼が「教会で権威を行使するすべての人に対する無条件のコミットメント」と呼んだ印象的なアピールで締めくくられた。 「キリストが残るために姿を消すこと、彼が知られ、栄光を受けるために小さくなること、そして誰も彼を知り、愛する機会を奪われないように、自分自身を完全に捧げること」である、と。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
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2025年5月13日