(評論)トランプの”標的”はレオ14世から、カトリック信者の主要閣僚、バンス、ルビオに移った(Crux)

(2026.6.1  Crux  Managing Editor  Christopher R. Altieri)

Trump’s latest attack on Leo XIV isn’t really about the pope

*教皇と会見したシカゴ市長を『役立たず』とののしったトランプの狙いは

 

 トランプ米大統領が、またしてもソーシャルメディア上で教皇レオ14世について不満を漏らしている。

 「誰か教皇に、『シカゴ市長は役立たずだ』と説明すべきだ」と5月29日、自身の「Truth Social」アカウントに投稿した。「そして、イランに核兵器を持たせてはならない!」

 大統領の発言は、シカゴ出身の教皇と、シカゴの市長であるブランドン・ジョンソン氏との非公開会談を受けてのものだ。ジョンソン氏は、かなり進歩的な公約を掲げて当選した初当選の民主党員である。

 ジョンソン氏はまた、断固として反トランプ、反MAGA(アメリカを再び偉大に)の立場を取っているが、それは、教皇が地上の平和を力強く提唱していることと同じくらい、トランプの計算にはほとんど関係がない。

 しかし、トランプのネット上の言動は、実際には教皇や市長に関するものではなかった。

*バンス、ルビオはいつ、トランプと距離をおくのか

 

 トランプの言動のほとんどすべてがそうであるように、少なくともネット上では、この発言もトランプ自身に関するものであり、自身の政権内の有力なカトリック教徒たちに、自分と教皇のどちらを選ぶか迫るための計算された動きの一環だ。

 2028年の共和党指名争いで最も有力な2人の候補は、バンス副大統領とルビオ国務長官であり、両者とも目に見える形で、また公然とカトリック信者であることを表明している。彼らの政治姿勢や、トランプ政権で職務に就く、という決断について、人々が何を言おうとどう思おうと、あらゆる客観的な指標から見ても、彼らは誠実なカトリック信者だ。

 トランプは、カトリック系の政治家たちが大統領の暴言について問われることになるため、彼らに「アメリカ人の教皇」ではなく、自分を選ぶよう迫ろうとしているのだ。

 バンスもルビオも、いずれはトランプと距離を置かねばならなくなることを承知している。二人にとっての課題は、その「時」がいつなのか、ということだ。その答えは二人でそれぞれ異なり、タイミングは常に両者にとって厄介なものとなるだろう。その理由については、異なる点もあれば、一部は共通し、一部は異なるものもある。

 トランプが最後に教皇と対立したように見えたのは4月中旬、わずか6、7週間前のことだ。彼は教皇に対する長広舌を繰り広げ、AI生成による冒涜的な画像を投稿した。その画像では、自身が「癒しのキリスト」として描かれていた。

 トランプを擁護するとすれば、彼は投稿から数時間後にそのAIによる粗悪な画像を削除し、「自分は医師として、そして我々が支援している赤十字の現地スタッフとして、赤十字に関わるものだと思っていた」と述べた。とはいえ、トランプは自身の発言を撤回することはなく、その発言は、大統領に好意的なカトリック教徒さえ衝撃を受けた。とりわけトランプが教皇を「犯罪対策に弱い」「核兵器対策に弱い」と非難し、「急進的な左派に迎合するのをやめ」「しっかりすべきだ」と述べたことだった。

 トランプによって「宗教の自由に関する大統領特別委員会」のメンバーに任命されたロバート・バロン司教は、大統領は「教皇に謝罪すべきだ」と述べ、トランプの発言を「全く不適切かつ無礼だ」と批判した。そう感じたのは彼だけではなかった。4月の一連の出来事を経て、カトリック教徒の間でのトランプ氏への支持は低下している。その一因はトランプ氏の反教皇的な暴言にあり、また中東での軍事介入、二転三転する関税政策やその他の経済政策、そして拙劣な移民取り締まりにもある。

 シカゴのジョンソン市長は、5月29日に大統領が放った痛烈な批判を受けて反論し、「シカゴ市民は、トランプ氏のイランに対する冒涜的な戦争に、もううんざりしている」と述べ、「誰かが大統領に、彼の行動が『働く家庭の生計を立てることをますます困難にしているだけだ』と説明すべきだ」と批判した。

*トランプの最大の眼目は、MAGAキリスト教徒の支持基盤を守ることにある

 シカゴはまた、トランプ氏のICE(移民関税執行局)による取り締まり措置の結果、極めて厳しい時期を過ごしてきた都市でもある。この措置は、一般的に強硬な反移民政策を支持するカトリック教徒の間でも、特にヒスパニック系男性の間でも、不人気であり続けている。ヒスパニック系男性の約半数は、2024年の大統領選でトランプ氏を支持していた。

 トランプ氏の今回の発言は、4月の発言に比べれば穏やかなものだが、大規模な”攻撃”に続く、”滴下作戦”」だ。目的は、ルビオ氏とバンス氏の両者がトランプ氏への支持を継続し、時が来れば彼らが、カトリック票を取り込むの難しくすることにある。

 バンス氏は副大統領という立場上、トランプに解任されることはないため、在任中はより大きな裁量権を持っている。一方、ルビオ氏は解任される可能性があり、いずれにせよ、大統領の指示通りに米国の政策を実行するだけでなく、少なくとも「トランプ・ワールド」においては、上司を個人的にも政治的にも支持することが求められる職務に就いている。

 両者とも2028年の選挙でカトリック票を取り込みたいと考えており、2024年にはカトリック教徒の55%がトランプ氏を選んだ。ミサに通うカトリック教徒の間では、トランプ氏に投票した割合はさらに高かった。したがって、両者が注視することの一つは、トランプ氏の振る舞いが、教皇に対する個人的な態度であれ、国内外における政治的な行動であれ、その支持をさらに蝕むかどうかだ。

 前回トランプを支持したカトリック教徒は、彼の選挙公約や政策声明を好む傾向にあったが、概して彼の「MAGA(アメリカを再び偉大に)」共和党支持基盤の一部ではなかった。MAGAキリスト教徒は、トランプの支持基盤の大きな部分を占めている。彼らは福音派プロテスタントの傾向があり、トランプの政治姿勢だけでなく、その人物像にも惹かれている。

 トランプ氏は、中間選挙を通じて、さらには2028年以降も彼らの支持を受け続けられる、と信じているようだ。これらは、誰もが直面せざるを得ない政治的現実だ。

*トランプは、MAGA運動を自分のものとして維持したいのだ

 トランプ氏は、イランでの米軍の軍事作戦が国内外で極めて不人気であることを承知している。彼の経済政策や、移民法を執行する際の強硬な手法も同様だ。現在、世界で最も信頼できる人物として誰もが挙げる教皇と対立するのは、現時点では得策ではない。特に、今年後半の中間選挙で上下両院の支配権が懸かっている今の状況では、なおさらだ。

 トランプは、中間選挙の結果そのものよりも、共和党を「MAGA(アメリカを再び偉大に)」の路線に留め、可能な限り長く自身がその象徴であり続けることの方に関心があるようだ。トランプがそれを実現するために、共和党が11月の中間選挙で勝利する必要はない。言い換えれば、トランプは、 MAGA運動を自分のものとして維持したいのだ。共和党をMAGA路線に留めておきたいし、共和党員に対し、「自分に背けば確実に敗北すること」を示したいのだ。

 疑うなら、コーニン、マッシー、キャシディの各上院議員に聞いてみればいい。テキサス、ルイジアナ、ケンタッキーの各州選出のこの3人の共和党議員は、それぞれMAGA系でトランプ支持の対立候補に予備選挙で敗れた。そうした挑戦者たちの11月の本選挙での勝算は必ずしも高くないが、そこがまさに狙いらしい。

 トランプが必要としているのは、MAGA支持基盤が依然として自分のものであり、党を事実上支配し続けていることを共和党員に見せつけることだけだ。その基盤は新たな人物を生み出すことはできなくても、既存の政治家を葬り去ることはできるのだ。これは、中間選挙で知事や連邦議会議員を目指すカトリック系の共和党候補たちが耳にすることになるメッセージであり、その点において、トランプによる教皇への攻撃は、少なくとも短期的には、バンスやルビオよりも彼らに深刻な影響を与える可能性がある。

 とはいえ、トランプは6月14日に80歳になる。人は誰も永遠に生きられるわけではない。バンスとルビオは、中間選挙の行方を注視することになるだろう。カトリック信徒を含むアメリカ国民もまた、同様に見守ることになる。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2026年6月2日