(評論)なぜトランプが、ホワイトハウスで「灰の水曜日」のミサを再開したのか?(La Croix)

(2025.3.7 La Croix  Youna Rivallain)

   四旬節が始まった3月5日、ホワイトハウスで大統領官邸のスタッフを対象とした灰の水曜日のミサが行われた。 トランプ米大統領がプロテスタントでありながら、カトリック信者に送った新たなシグナルだ。

*カトリック信者たちにトランプが送った新たな”シグナル”?

 

 ホワイトハウスのウエブサイトには、ミサはホワイトハウスの別棟にある「インディアン・トリート・ルーム」で5日午前8時30分から行われことが知らされた。「(カトリックの信仰を)実践しているすべての信者が出席するよう招待されている」と。これには、トランプ大統領とメラニア夫人のメッセージも添えられていた―「この灰の水曜日に、私たちは四旬節の聖なる季節を迎える何千万人ものアメリカのカトリック教徒やその他のキリスト教徒と共に祈りを捧げます」。

 この数時間後には、(カトリック信徒の)ルビオ米国務長官が額に灰の十字架を印したまま『フォックス・ニュース』のインタビューに登場し、バンス副大統領はテキサスとメキシコの国境への国賓訪問から戻る際、額に灰十字を受けたところを写真に撮られた。

 ホワイトハウスではトランプが初めて大統領に就任した後、2018年に初のミサが行われ、 約100人の職員が参加した。 その後も、2週間に1度、ミサを続けたとトランプ大統領の1期目に行政管理予算局長を務めたミック・マルバニー氏は述べている。ウォール・ストリート・ジャーナルの昨年の記事で、彼は「ミサは2020年まで続いたが、(カトリック教徒の)バイデン氏が大統領職を引き継いだ時、彼のチームにホワイトハウスでのミサを続けるよう勧めたが、彼らはそうしなかった」という。

 トゥーロン大学のマリー・ゲイト=ルブラン准教授(アメリカ文明学)は「これは、トランプがカトリック信者に対して行った、より広範なジェスチャーのパターンの一部です」と言う。 昨年の大統領選挙期間中、トランプは、米国人の約20%を占め、伝統的に主に民主党候補に投票してきたアメリカのカトリック教徒を何度も口説いた。「トランプは、『カトリック教徒が、(米国では)最も迫害されてきたキリスト教徒であり、特に、バンス氏を歴史上最も”反カトリック “だ、と批判したバイデン政権によって、迫害された』と主張していた』と説明。

 さらに、選挙中、トランプは、「大天使聖ミカエルへの祈りをソーシャルメディアに投稿し、いくつかの集会では万歳三唱を流した。 長老派プロテスタントの家庭で育ったトランプは、2020年以降、自らを『超教派のクリスチャン』と表現しているが、これは米国では福音派とほぼ同義だ」と述べている。そして、この戦略が功を奏し、大統領選ではカトリックの白人有権者がトランプを支持し、ラテン系カトリック信者の民主党票を大きく減らした、という。

 

*カトリック信徒の閣僚たちに”囲まれ”ているが、司教団は「移民問題」でトランプ批判

 しかし、トランプ政権2期目の幕開けは、特に同政権の非常に厳しい移民政策をめぐり、トランプ政権と米国カトリック司教団との間に公然たる危機が生じた。 2月18日、米国カトリック司教協議会(USCCB)は、米国政府との長年の協力案件である移民支援プログラムへの資金提供が突然停止されたことについて、トランプ政権を強く批判した。

 司教団の大多数が保守的で、特に家族政策と人工中絶問題ではトランプ大統領と同意見でありながら、移民政策では反対の立場をとったことから、微妙な立場だ。

 トランプ政権では、カトリック教徒の割合が非常に高い。副大統領、入国管理局長、労働長官、運輸長官、国務長官、教育長官、CIA長官などなど、「トランプはカトリック教徒に囲まれている』と言ってもいいのだが。

 自身がプロテスタントであるにもかかわらず、四旬節、さらには「灰の水曜日」を重視するのも、そのためだ。トランプを支持する福音派では、四旬節は「社会的慣習」として守られるものではなく、各自が自分の信念に従って、イースターの準備期間として自由に過ごすものだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年3月8日