・米大統領の海外援助打ち切りに世界の人道支援団体衝撃、イエズス会の援助機関も

JRS project in South SudanJRS project in South Sudan  (JRS)

*広がる人道危機

 

米政府の援助打ち切りで、米国の拠出金に頼っているUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)やその他の米政府と連携して活動していた組織を含む、より広範な人道支援ネットワークが資金凍結の危機にさらされている。米国は世界の開発援助総額の40%以上を提供しているため、その影響はJRSだけに留まらない。

Br.シュプーフは「これはまだ第一波に過ぎない。他の人道支援組織が米政府の援助打ち切りに対する対応策を決定すれば、混乱の第二波が起こるだろう。世界の人道支援ネットワーク全体が苦境に立たされる。そして、難民の子供たちは教育を受けられなくなるだけでなく、前述の通り、学校が提供する安全と安定も失うことになる。また、多くの子供たちは学校で食事を受け取っているため、援助打ち切りは、即座に、救命を必要とする人道上の危機を引き起こすだろう」と警告。

このシナリオは、「人命救助」の意味そのものを議論に付すことにもなる。米政府は「人命救助」活動に関する一定の免除を想定しているため、プロジェクトの資金が精査されることになるだろうが、「では、人命救助とは何だろうか? もし飲み物や食べ物があれば、それで人命救助は終わりなのだろうか? ”死ななければいい”ということか?これは今まさに議論すべき重要な問題だと考えている」とBr.シュプーフは述べた。

*多国間主義の終焉?

 

Br.シュプーフはさらに、「米政府のこのような動きは、単に資金援助の削減にとどまらず、世界秩序のより深い変化をの前兆となり得る」とも指摘。

「もし多国間主義と価値に基づく世界秩序に別れを告げれば、それに代わるものは存在しない。これは新たな世界秩序への出発なのだ。教皇 フランシスコは、このような変化に対して繰り返し警告を発してきた。 米国の司教たちに宛てた最近の書簡でも、『人間の尊厳の真実を認識しない力によって始められたものはすべて、まずい形で始まり、最悪の形で終わるだろう』と警告されている」と強調した。

*「それでも可能な限り援助を続ける」

 

だが、現実がどうであれ、JRSは難民を支援し、可能な限り援助を提供することに引き続き努力する考えだ。「私たちは単なるサービス提供者ではなく、難民と共に歩む組織だ。危機的状況においては、私たちは避難を余儀なくされた人々と揺るぎない連帯を保つ。私たちにとって重要なのは、彼らと共にこの脆弱な事態を受け入れることなのだ。キリスト誕生の物語は、神が意図的に人間となることを選び、最も不安定な状況にある彼らと同一化することを伝えている。これが私たちに求められていることなのだ」とBr.シュプーフと述べた。

*緊急募金の呼びかけ

 

JRSは、今後2ヶ月間の緊急資金不足を埋めるために、150万ドルから200万ドルの寄付金を集めることを目指し、緊急募金(Jesuit Refugee Service (JRS) – Accompany, Serve, Advocate)を始めた。ただし、金銭的な寄付以上に重要なのは、世界的な政策において人間の尊厳の保護を擁護するであり、「私たちは政治権力を持つ人々に訴えかけ、今日ある集団から尊厳を奪うことは、明日は私たち全員に同じことが起こり得るのだ、ということを、彼らに思い出させなければならない」ことも強調した。

 

 

*教皇フランシスコのリーダーシップ

 

また、Br.シュプーフは「JRSのような組織にとって、最も弱い立場にある人々に対する教皇フランシスコの揺るぎない支援と擁護がどれほど重要であるか」ということも強調。

「教皇は、精神性に深く根ざした方だ。政治家ではないが、現実主義者。福音について語る時、善きサマリア人の例について瞑想する時、そして米国の司教団への書簡で、あなたが目にしていることは、あなたが生きている世界で起きていることなのだ、と言われている。『信仰とは単なる道徳的教義ではなく、行動における信仰』なのだ」と語っている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2025年2月18日