(2024.2.8 La Croix Loup Besmond de Senneville )
La Croixはこのほど、昨年9月にアメリカの保守系シンクタンクがチェコの首都プラハで主催した会議に、9人の枢機卿を含む21人のカトリック司教が出席したことを確認した。
プラハの中心部の5つ星ホテル「The Mozart Hotel」の会議場で開かれた「ジェンダーイデオロギー、科学、神の啓示の性質」をテーマとする”秘密会議”は、教皇フランシスコの高齢と健康問題の増大から、カトリック教会の統治の終わりが近づいているという思いが高まっている中で行われた。
出席者のうち、枢機卿9人の中には、ヴィルヒリオ・ド・カルモ・ダ・シルバ(東ティモール)、オズワルド・グラシアス(インド)、ウィリアム・ゴー(シンガポール)、パトリック・ドロザリオ(バングラデシュ)などアジアの教会指導者が目立ち、欧州からは、ウィレム・エイク(オランダ)、アンジェロ・バグニャスコ(イタリア)、ドミニク・ドゥカ(チェコ共和国)の3枢機卿。枢機卿以外にも、サルバトーレ・コルディレオーネ大司教(米サンフランシスコ)を含む多くのアフリカ系および米国系の高位聖職者が出席した。
出席者たちの多くは、その後ローマへ向かい、バチカンで10月に一か月かけて開かれたシノダリティ(共働性)をテーマとする世界代表司教会議(シノドス)総会に参加した。
早晩、フランシスコの後継者を選出するために召集される、選挙権を持つ枢機卿たちは、互いのことをあまりよく知らない。130人のうち、ローマに住んでいるのは25人だけだ。 他の枢機卿たち世界中に散在しており、皆が集まってカトリック教会とその統治の将来について考える機会はほとんどない。
そうした中でプラハで枢機卿など主だった高位聖職者が集まった”秘密会議”については、昨年9月29日にアブジャ(ナイジェリア)のイグナティウス・カイガマ大司教が自身のフェイスブックにこの会合について投稿したにもかかわらず、これまでほとんど秘密にされてきた。この会議のことは、開催費用を全額負担した主催者の米保守系シンクタンク「Austin Institute for the Study of Family and Culture」のウェブサイトにも掲載されていない。
会議に呼ばれた講演者として判明している中で特に注目に値するのは、属人区「Opus dei」の会員でハーバード大学の教授、ロバート・ガールで、「ジェンダーイデオロギーと受肉:人類学的異端の治癒」と題した講演を行った。
その前の日には、ユトレヒトのアイク枢機卿による「レズビアンのアイデンティティとジェンダー研究から神の妻、母、娘への旅」と題する講演があった。講演で枢機卿は、「『ジェンダー理論』は、家族とキリスト教信仰の宣言に対する脅威」と警告したという。
Austin Institute for the Study of Family and Cultureがこのような会議を主催するのはこれが初めてではない。2022年末にも会議を主催し、出席したオーストラリアの故ジョージ・ペル枢機卿は、未成年性的虐待の容疑で投獄され、その後無罪釈放となった経験を語り、フランシスコの路線を厳しく批判した。
亡くなった後もペル枢機卿の信奉者はおり、プロテスタントの牧師からカトリック司祭となった、新自由主義のアクトン研究所の創立者、ロバート・シリコ神父は、プラハの会議で「ペル枢機卿の神学的遺産」をテーマに講演した。
プラハ会議の出席者たちの多くは、LaCroixの電話取材に応じなかったが、Austin Institute for the Study of Family and Cultureのマーク・レグネラス所長はメールでのやり取りで、同研究所がこのイベントを主催したことを認め、 「広範な人々を招き、自由な議論の機会となった」と述べたうえ、「要するに、”知的な隠れ家”です」と付け加えた。 だが、同研究所が3日間の会議(および「研修」)の費用をどこから調達したのか、高位聖職者の誰を招待するかをどのように決めたのか、などの問いには答えなかった。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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