・新回勅タイトルは「All Brothers」よりも「All Brothers and Sisters」が適切(LaCroix)

(2020.9.11 LaCroix Vatican City Robert Mickens)

 先週の本稿で、あるイタリアの司教がこのほど行った記者会見で、教皇フランシスコが「人類の友愛」に関する回勅を発表する見通しを、うっかり漏らしたことを書いたが、LaCroixに掲載されて何時間も経たないうちに、その情報の正しさが確認された。

 アッシジのフランシスコ修道会が、教皇は新回勅Fratelli tuttiを公布するだけでなく、10月3日に聖フランシスコの地下墓所で個人的なミサを捧げられ、その際に回勅に署名される、と発表したのだ。

 教皇が、聖フランシスコの祝日である10月4日でなく、3日を訪問日として選んだのは、いささか奇妙に思われたし、それは今も変わらない。しかも、滞在時間もとても短い。教皇は3日のおそらく午後3時前にバチカンからヘリコプターでアッシジ入りし、到着後すぐに聖フランシスコ大聖堂のSacro Conventoとして知られる修道院に向かわれ、大聖堂に隣接する地下聖堂でミサを捧げられる予定だ。

*”兄弟”だとすると、人類の”残りの人々”はどうなのか?

 バチカン広報室によると、教皇が署名を予定する回勅は「友愛と社会的友情」に関するもので、教皇は署名を終えられたらすぐにローマに戻られる。

 回勅の文書が、様々な国語に翻訳された形でいつ、公開されるのか、については明らかにされていないが、教皇は、署名日の翌日ー聖フランシスコの祝日ーに、注目度の高いやり方で公開することを希望されていることが、考えられる。だが、文書の翻訳者たちが計画的に速やかに作業を進めない場合、公布はその内容に見合うような形でなされる可能性もある。

 現在のところ、バチカン放送は、回勅のタイトルが「Fratelli tutti」、英語訳が「All Brothers」となる、としているが、当然ながら、これは、性差別用語に敏感な人々の間で反発を起こしている。バチカンがこのタイトルに固執すれば、カトリック教会が女性蔑視と家父長主義の否定を拒む人々によって運営されていることを改めて示すものとして、この言葉の受け入れを拒否する女性たち(そして男性たち)を教会から、さらに遠ざけることになるだけだろう。

 回勅のタイトルを改めるのは、それほど難しいことではない。「Fratelli e sorelle tutti」なら、英語訳も. 「Brothers and sisters all(兄弟姉妹の皆さん)」あるいは「We are all brothers and sisters(私たちは皆、兄弟姉妹)」となり、どちらでも理にかなっている。

 だが、教皇文書の英語版タイトルは、伝統的に、文書の原本のタイトルー通常はラテン語-から採られている、という。例えば、 使徒的勧告「Evangelii gaudium」は英語版で「The Joy of the Gospel”(福音の喜び)」となっている。そして、新回勅のタイトルに予定される「Fratelli tutti」は、聖フランシスコの「兄弟である皆さん、ご自分の羊を救うために受難の十字架を担った、善き牧者を見つめましょう」 (Ammonizioni, 6, 1: FF 155)という言葉から採られているので、変更できない、との見方がある。

 そのような議論をナンセンスだ。もしも、教皇あるいは教皇の顧問たちが、本当に「変更できない」と考えるなら、タイトルの根拠に他の文書を選ぶか、単に他のタイトルを付ければいい。

 

*タイトル変更を恐れないで

 使徒的勧告「Evangelii gaudium」で、教皇フランシスコは、教会が伝えようとしているメッセージの妨げになる場合、長年の慣習を脱するように求めている。

 教皇が強調される識別力を増す中で、教会は福音の核心に直接つながっていない慣習ーそれが歴史的な根拠を持つものであっても、もはや正当には理解されず、評価されないーを見分けることができるようになっている。「それらの慣習は美しいかもしれませんが、今となっては、福音の伝達において同様の役目を果たしていません。恐れずに、このような慣習を見直していきましょう」(Evangelii gaudium43項)。

 いずれにせよ、「fratelli」は「兄弟」を意味する。英語を含む多くの言語にあるように、当初、それは兄弟と姉妹の両方を含むと理解されていたが、今はそうではない。そして、バチカンが1990年代の初めに、男女包括用語の使用を強く非難した時でさえ、教皇は、ずっと以前から、グループに対する呼び掛けとして、慣習的に使われてきた「Cari fratelli(兄弟の皆さん)」をやめ、 「Cari fratelli e sorelle(兄弟、姉妹の皆さん)」という、もっと分別のある言葉を使っていた。

 そのことで、教皇ヨハネ・パウロ2世を信じる(あるいは、咎める)ことができる。

*賢明で敏感であること

 教皇選挙まで、歴代教皇はこれまでのところ、(注:少なくともカトリックの)群衆に「Figli(sons=息子たち)」と呼びかけていた。当時は、明らかに、この言葉には「女性も含まれている」と受け取られていた。だが、時が変わり、そのような言葉に戻ったのだ。

  今を去ること42年、1978年10月16日にヨハネ・パウロ2世は、教皇に選ばれた直後、聖ペトロ大聖堂の中央バルコニーにからのあいさつで、前の広場に集まった人々に「Carissimi fratelli e sorelle(Dearest brothers and sisters=.最愛の兄弟姉妹)」と呼び掛けた。そして、その後の歴代の教皇たちは、この常識的な言葉を使ってきたのだ。確かに、男女包括用語は、ラテン語文化圏よりも英語圏の問題だが、フランスやイタリアでも、そうした用語の使用に対する感受性は強まってきている。

 

*過激な男女同権主義者たちから伝統を守ろうとする見当違いの熱意

 教皇フランシスが2020年の今もなお、男性用語を使うことが不必要で、役に立たないことを、正当に評価していないように見えるのは、残念だ。

 だが、教皇はラテンアメリカ出身の年長の司祭であり、このようなことが全く問題にならなかった教会文化の中で育った世代の人だ。にもかかわらず、自身の使徒的勧告「Evangelii gaudium」で、こう言っている。

 「私は、全てを作り変えるような宣教、という選択肢にあこがれています。それは、自己防衛ではなく、教会の習慣も、様式も、時間も、言語も、そしてあらゆる組織的構造も、現代の世界の福音化にふさわしい手段となるものです」(27項)。

 そして、このようにも書いている。

 「場合によっては、完全に正当な用語を耳にした信者たちが、それを「イエス・キリストの真の福音と一致するものではない」と受け取ることがあります。なぜなら、その用語が、彼らが使い、理解しているものではないからです」(41項)

 自分自身を、文化の戦士たちを、聖職者主義者たちを、そして教会の社会的な保守派たちー男女包括用語を使うことを拒み、正統派的な慣行を守ろうとする見当違いの熱意によってそうする人々ーを、子ども扱いしてはならない。

 彼らは、そうした偏執的な考えの中で、男女包括用語を「教会をひっくり返そうとする過激な男女同権主義者たちと同性愛者に共感する人々による、ある種の陰謀」と見なしているのだが、新回勅のタイトルについて論じられている問題は、まったく、そのようなことではない。13世紀にしていたように話すことは、もはやしない、ということだ。単純なことだ。

 回勅のタイトルが、教皇が伝えようとする核心にあるメッセージから人々の注意をそらす、あるいは、教会についての否定的な態度を強めさせてしまうとしたら、すべきことは、たった一つー問題の用語を変えよ!だ。そうすることは、「この使徒的勧告「Evangelii gaudium」の方針を、惜しみなく、かつ勇気をもって、恐れたり、禁止事項を設けたりせずに適用」(33項)する仕方の、少なくとも一つの見本になるだろう。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2020年9月13日