カトリック中央協議会がこのほど、2025年末時点の日本の教会の現状をまとめた 2025 年度版「カトリック教会現勢」を発表した。
昨年の記事で、バチカンの要請を受けて毎年、半ば”義務的”にされており、日本の信者に、現状を理解してもらい、共に今後の教会のあり方を考え、福音宣教のための具体的な方策を立てるためのデータしようとする姿勢、データの重要性への認識が欠落していることを指摘したが、改善の努力が今回もみられない。今後を考える際に欠かすことのできない、信徒、司祭の年齢層別データも、信徒の日本籍、外国籍別のデータもないままだ。発表者名は「カトリック中央協議会広報部情報管理課」となっており、司教団がどこまで責任をもって“監修”しているのかも不明だ。
日本の教会の現状を客観的に知るためのデータはこの「現勢」しかないのも事実であり、「カトリック・あい」では、20年前の2005年、10年前の2015年のデータを別途入手するなど苦労を重ね、日本のカトリック教会の現状、そして今後の行くへに関心を持たれる方々の現状理解に少し手も役立つべく、以下に分析をお示しする。
【日本の信徒は20年間に8.6%減少、聖職者・修道者・神学生は37.6%の大幅減少を続けている】
まず、2025年版「カトリック教会現勢」の発表データを過去に発表されたデータと合わせてみると、2025 年 12 月末現在の日本の聖職者、一般信徒などを合わせた「信者数」は前年より3888人減って40万9070 人。20年前の2005年の45万125人、10 年前の 2015年の 44 万 3721人より、それぞれ4万1055人(減少率9.1%)、 3万4681人(同7.8%)減っている。いずれも2024年の20年前、10年前の減り方が大きい。
日本の総人口に占める信者数の割合は、2005年の0.355%、2015 年の 0.346 %から、2025年は 0.329 %で、日本の総人口の減少率を上回る減り方を続けている。
信者数を信徒数と聖職者・修道者・神学生数で分けてみると、信徒数(在籍数)は40万3700人で、2005年の44万1514人、2015年の43万6505人よりも、それぞれ3万7815人(減少率8.6%)、3万2805人(同7.5%)の減少。
聖職者・修道者・神学生については、2025年は前年より243人減って5370人。2005年は8611人、2015年は7216人で、20年間に3241人(37.6%)、10年間で1846人(25.6%)と信徒数の減少を大きく上回る深刻な落ち込みが続いている。2025年の5370人のうち、司教は29人、教区司祭445人、修道会・宣教会司祭は727人。前年に比べて、司教は2人増える一方、教区司祭は35人減、修道会・宣教会司祭は52人も減った。
「教会現勢」には肝心の年齢別データがないが、司祭の高齢化、病弱化はこの10年、20年で急速に進んでいることは、小教区の現場をみるだけで明白だ。複数の小教区の掛け持ちを余儀なくされる事態、病院に通いながら小教区を担当させられるケースも目立つ。年齢別のデータが無い限り、正確な実態把握も、今後の予測も不可能だが、司牧活動可能な聖職者はこの数字よりもさらに減っており、今後も続くと推定される。
そうした中で、このような事態に真剣に取り組もうとしない司教団で、前年比で二人も司教が増えているのに、違和感を持つ信徒も少なくないだろう。
【コロナで激減したミサ参加者、受洗者数などは、今も以前の水準を回復せず】
2020年に日本で始まったコロナ大感染の影響について直接分析したデータは「現勢」には皆無だが、新型コロナ発生直前の2019年のミサ参加者を見ると、主日は10万6915人、復活祭は17万965人、クリスマスは21万7664人。それが、翌年2020年には、それぞれ6万1391人、14万965人、9万9980人に落ち込み、さらに2021年には復活祭、クリスマスのミサ参加者は若干回復したが、主日のミサ参加者は5万9352人とさらに落ち込み、その後は徐々に回復してきているものの、2025年は主日ミサ7万8649人、復活祭14万354人、クリスマス16万7777人と、いまだにコロナ前の水準を大きく下回っている。
コロナが終息しても、いったん教会を離れた信徒は、教会からの積極的な働きかけもないまま、戻る機会を失うケースが多いのではないか。コロナ大感染の長期化で、信徒の高齢化、脆弱化が進んだことも考えられるが、東京教区などでは、子供たちの姿がほとんど見られなくなり、コロナ前は恒例となっていたサマーキャンプもいまだに復活できない教会もある。
年間の全国受洗者数を見ても、2014年の5712人から、新型コロナ蔓延の2020年に3502人に落ち込んだ後、2023年に4158人まで回復しかけたものの、2024年は3922人、2025年は4133人と回復のテンポは遅い。コロナ前の7割の水準だ。”教会離れ“が常態化しつつある懸念がある。
【教区別にみた信徒数、「札幌」は10年で2割減、1割超える減少が「長崎」「大阪・高松」など5つ、東京も4.2%減っている】
また、全国で15ある教区別に見ると、信徒数が最も多いのは東京で9万1292人だが、2015年からの10年間で3998人4.2%減、これに次ぐ長崎は5万4475人で同6899人11.2%減、続く横浜が5万1424人で同4299人7.7%減。合併した大阪・高松は4万7954人で同6892人12.5%減と、長崎と共に減り方が際立っており、信徒の十分な理解を得ずに行った”吸収合併”が裏目に出ているといえそうだ。札幌は1万2999人で10年間で3130人19.4%減と落ち込みが目立つ。
また信徒数が1万人以下の教区は昨年と同じ5つあるが、最も少ない大分が5445人で10年間で5.0%減少に留まっているものの、新潟6387人で11.6%減、鹿児島7706人で14.1%減、仙台8619人で12.4%減といずれも1割を超える減少。わずかに沖縄が6149人で10年間に83人1.4%の微増になっている。
このようにほとんどの教区で信徒減少、財政悪化が続く中で、教区の再編統合を求める声が以前から出ている。そして、2023年8月に教皇フランシスコが、最少の信徒数で財政的にも赤字に苦しんでいた高松教区の大阪教区への事実上の吸収合併を認められたが、その後も、日本の教会の長期ビジョンの策定、その中での教区の再編統合などの議論は、公表されている限り、全くなされていない。
【聖職者・修道者・神学生は10年間で「福岡」「仙台」「鹿児島」が4割減、「京都」など3割減も4つ、「東京」「大阪・高松」なども2割減、一桁減は長崎のみ】
教区別に見た2025年まで10年間の聖職者・修道者・神学生の減り方は、福岡が42.1%減と最も大きく、以下、4割減が仙台(41.4%減)、鹿児島(40.5%減)と3つもあり、3割減が京都(39.0%減)那覇(35.9 %減)、さいたま(32.2%減)、新潟(31.4%減)と4つ。2割減が横浜(28.9%減)、広島(27.0%減)、東京(25.5%減)、札幌(25.3%減)、大阪・高松(23.4%減)、大分(21.3%減)と6つ。1割減は名古屋(14.0%減)で、減少が一桁に留まったのは長崎(7.9%減)のみ。減少幅は違うものの、これに高齢、病弱などの増加を加えれば、事態は極めて深刻であり、しかもその度は年を追って増しているということができるだろう。
(終わりに)日本の教会の再建に、適切なデータが不可欠なことを、司教団は、なぜ理解しようとしないのか
日本の信徒や司祭が日本の教会の現状を理解し、今後の在り方を考える資料として役立てるために、適切なデータの取りまとめ、分析を含めた情報の開示は、必要不可欠だが、なぜこのような不完全な「教会現勢」の発表が続いているのか。
理由は簡単だ。もともとバチカンに報告を義務付けられているデータだから、半ば義務的にまとめているだけで、「日本の教会の現状を正しく把握し、今後の対応を考える資料とする」という意識が司教団に欠落したまま、現在に至っているためだ。グラフが添えられているのが”工夫”と言えば工夫だが、とても分析に足るようなものにはなっていない。
データのとり方も、十年一日で、日本の教会をめぐる環境の大きな変化に対応した工夫なども皆無。信徒、聖職者の高齢化、若者の教会離れ、外国人信者の増加などを客観的に知るための年齢別の数字、国籍別の数字などが欠落したままだ。このようなデータがあれば、AI技術などを活用すれば、5年先、10先の日本の教会の姿を予測することも可能だし、具体的な対策を立てるのも容易になるはずだ。
教区によってかなりの差があるが、外国人信徒の占める割合が大幅になっている首都圏のある教区の場合、小教区によってはほとんどが外国人信徒で占められ、日本人信徒の居場所がなくなっているような話も聞く。しかも、教会維持費を負担する慣習が無いのか、パーティーなどにはお金を使っても、教会の維持管理の負担は限られ、小教区の会計は慢性的な赤字になっている、というところもある、と言われる。このような実態は、今の公表データでは全く把握できない。
日本の教会の現状がよくわかるようなデータを司教も、司祭も、一般信徒も共有し、それそれの立場、環境から、それを補強するような意見を出し合い、これからの日本の教会、福音宣教の使命を果たす教会をどうすれば作って行けるのか、その具体的なビジョンを策定し、実行していくのが、教皇フランシスコが始められた”シノドスの道“の日本での歩みに最も必要なことだ。
改めて言う、今の日本の司教団にはそのような問題意識も、具体的な対応も見られないのは極めて遺憾だ。
(「カトリック・あい」代表・南條俊二)