・中国の”ネット人民”が共産党の「フロイド・プロパガンダ」を批判(BW)

「米国では警察の暴行に市民が抗議できるー中国では投獄かそれ以上の仕返しをされる」

(2020.6.15 BitterWinter  Han Sheng)

   新型コロナウイルス感染拡大や香港市民を規制する国家安全法導入に対して国際的な批判が高まる中で、中国共産党は、米国での黒人男性、ジョージ・フロイド氏の死を利用したプロパガンダ攻撃を仕掛けている。中国外務省の華 春瑩・報道官は、フロイド氏の最後の言葉「息ができない」を使って、米国を批判した。

  だが、中国の”ネット人民”は彼女の言葉に同意していないようだ。ツイッター・ユーザーの中には、現在続いている中国公安の人権派などへの残虐行為や1989年の天安門での民主化運動圧殺事件を引用し、「彼女(報道官)は本当にちゃんと呼吸をしているのか」と皮肉った。また、中には、中国本土での公安による残虐行為や香港でのデモ参加者に対する暴行の映像を集めがものをアップする動きもある。

 そして、彼らは、中国政府・共産党が、香港と中国本土の抗議活動に参加する人々を「暴徒」「暴民」とする一方で、米国でのデモ参加者を讃える、という”ダブルスタンダードを使っているのは、笑止千万だ、と批判している。中国で公安警察の残虐行為の犠牲になっている多くの人は苦情を訴えたり、社会から支援を得ることさえできないのだ。

【”ネット人民”の”告発”-中国・深圳の公安警察が若い女性の首を抑え、「息ができない」ようにしている】

 名前と住所を秘匿することを条件に、Bitter Winterの取材に応じたある男性-名前を仮に「張」とするーは、父親が公安警察に拷問されて死亡したと信じている、という。関与したと思われる公安の担当者は起訴されなかった。家族はこれまで37年にわたって、繰り返し、真相究明を求める嘆願書を当局に提出したが、地元の裁判所が訴えを聞き入れられることはなかった。張の兄も「精神病」と通告され、原因不明で死亡、家族全員が「徒党を組んだ罪」で監視下に置かれ、家族は破壊、財産も失った、という。「私たちは勝てないでしょう。家族全員を刑務所に行くリスクにさらすかもしれない」と首をうなだれた。

*残忍行為で死に至らしめた証拠があっても無罪判決

 37年前、張がまだ少年だった時、彼と兄弟たちは父親の恐ろしい死にざまを見せつけられた。父親は、村民の権利を守るために仲間と集まったが、間もなく姿を消した。

 その3日後、公安警察当局から、家族に、尋問室にいる父親に会いに来るように言われ、出かけてみると、父親は1メートルの高さの窓にぶら下がり、一本のロープが体から地面に垂れていた。首を絞められて殺されたように見えたが、首の周りにうっ血は見られなかった。だが、よく見ると、父親の頭に裂傷とコブ、そして背中には、鉄製のかすがいのようなものでつけられたとみられる傷が三つあった。

 内部の関係者によると、彼らの父親が逮捕された後、最初の二日間、監禁されていた尋問室から恐ろしい悲鳴が聞こえたが、三日目には静かになった、ということだった。だが、裁判所は、父親が拷問を受けたことを示す証拠がある、との張の家族の訴えにもかかわらず、「自殺」と判断、関係した公安の担当者全員が無罪となった。

 中国では、拷問を受けたとする手がかりがいくつあっても、残虐行為の被害者家族に真実が伝えられることはない。監視記録や検死報告の改ざん、証拠を消すために死者の遺体を焼却することは、日常茶飯事だ。だから、犠牲者の家族が死因を突き止めたり、関与した公務員を裁判にかけたり、合理的な補償のために戦ったりすることは、いっそう難しい。

*37年も真相究明の請願を繰り返したが

 無罪判決が出た後も、父親が無残な死を遂げた張の家族は、真相究明を求める請願を当局に繰り返したが、理不尽な被害を受け続けた。請願の先頭に立っていた長兄が、ある天気のいい日に海に釣りに出掛けたが、”溺死”した。公正な判断や真相究明を求めて嘆願を繰り返す人々の活動が「偶然の死」あるいは「自動車事故」で終わるのは、中国では珍しいことではない。張は、兄が”偶然死んだ”とはまだ信じられないでいる。

 長兄の死後、次兄が請願活動の後を継いだが、10年後に、地方の公安当局の手で精神病院に入れられた。担当医からは、「彼の偏執的な精神疾患の症状の1つは、父親の死について政府に大げさな補償を求めていることだ」と説明され、その後、退院したものの、「身体に異常をきたしていました。食事中、手が激しく震え、箸を使うことができなくなった。仕事をする能力を完全に失ったようです」と張はBitter Winterに語った。また、次兄は家族に、病院から「薬」を強制的に飲まされ、拒否すると、警備の者に殴打されるのだ、と説明したという。

*”国営”メディアに頼ろうとしても…

 張は請願を続けた。彼の弁護士から「メディアに報道してもらい、世間の注目を引くことで政府当局に圧力をかけることができなければ訴訟に勝つ見込みはほとんどない」と言われたが、中国のメディアは国家に属している。メディアの注目を集めるために、彼は公開イベントに出席したが、”残念”なことに、ジャーナリストの代わりに公安の注意をひいた。当局のブラックリストに載せられ、「これで、私の娘は学校を卒業しても、良い仕事に就けなくなる。それは確実です」と嘆いた。

 長い年月にわたって嘆願を続けた結果、張は16万人民元(約2300ドル)の借金を抱えている。母親は適切な治療を受ける料金が払えずに亡くなった。家族全員が厳重な監視のもとに置かれ続け、張の妻はそれに耐えきれずに、離婚してしまった。残酷な現実に押しつぶされそうな張は、「共産党の支配下にある中国社会はとても暗い」と語り、嘆願を続ける中で、同じような悲惨な経験をする人が多いことを知るようになった、と述べた。

 

*米国と中国が決定的に違うのは…「難しい」ではなく、「不可能」なこと

 このような張とその家族の悲惨な運命は、残虐行為を働いた警察官を裁判にかけることが、米国では「難しい」かもしれないが、中国では「不可能」だということを示す好例だ。

 一部の”ネット人民”が言うように、警察官が残虐行為を働いた時、米国では、人々は表に抗議に出かけたり、ホワイトハウスの前で抗議デモをすることさえ許されている。共産党が管理する中国のメディアは「米国で起きている抗議デモは、この国がカオスにあることを示している」と書き立てているが、実際は、米国で民主主義が機能していることを示している。中国では、公安警察の残虐行為に抗議した人々は、刑務所あるいは精神病院に入れられるか、もっと悪い状況に置かれることになるのだ。

 米国家安全保障担当のロバート・オブライエン大統領補佐官は、先日の米ABCニュースの取材に「中国と私たちの違いは、ジョージ・フロイド氏を殺害した警官が起訴される、ということだ。彼は調べられ、公正な裁きを受けるだろう」と語っている。一中国人として、筆者は、その通りだと思う。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

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2020年6月16日