米国の有力調査機関Pew Research Centerが19日発表した世界の移民の宗教別調査によると、2020年現在で、世界の全人口にキリスト教徒が占める割合は30%だが、出生国以外に住む人口に占める割合は47%、1億3100万人に達している。
そのキリスト教徒の移民の現在の居住地は、37%が欧州、30%が北米、10%がアジア太平洋地域。中南米とサハラ以南のアフリカがそれぞれ)9%強、中東と北アフリカは4%。
また出身地として最も一般的なのはヨーロッパ(35%)で、続いて中南米(30%)です。アジア太平洋地域(17%)やサハラ以南のアフリカ(各13%)の国出身のキリスト教徒移民は少ない。
*移民の国別の移住先は
キリスト教徒は、すでにキリスト教徒の人口が多い国に移住する傾向があり、上位 10 か国の移住先のうち 4 つは主に英語圏の国だ。他の宗教グループと同様に、キリスト教徒は経済的機会を求めて裕福な国に移住するのが目立つ。
米国は、世界のキリスト教徒移民・難民の推定 27% (3540 万人) と、他のどの国よりも多くの国際移民・難民を抱えています。
ドイツは、外国生まれのキリスト教徒にとって 2 番目に多い移住先で、約 6% (840 万人) が移住している。米国と同様に、ドイツには多くのキリスト教徒と、巨大でダイナミックな経済があります。ドイツへのキリスト教徒移民の最も一般的な出身国はポーランド (180 万人) だが、欧州地域以外、カザフスタンから来る移民・難民も目立つ。
2020 年現在で見る限り、ロシアはキリスト教徒移民・難民に 3 番目に人気のある移住先国で、720 万人が住んでおり、ウクライナ、カザフスタン、ウズベキスタンなど近隣諸国から来る傾向がある。ロシアは歴史的に多くの周辺国に比べて経済的に恵まれており、1991年のソ連崩壊以前からこれらの国々から移民を引き寄せていた。
*移民の出身国は
いくつかの例外はあるものの、キリスト教徒移民は、キリスト教徒が多数派で近隣諸国よりも経済的に弱い国から来る傾向がある。
メキシコはキリスト教徒移民の最も一般的な出身国(1130万人)であり、世界のキリスト教徒移民の9%を占めている。メキシコからのキリスト教徒移民の大部分は、米国に移住しており、通常は仕事、より安全な場所の確保、または以前に移住した家族との再会が、移住の理由だ。
ロシアはキリスト教徒移民の2番目に多い出身国(780万人)だ。ロシアのキリスト教徒は、仕事を求め、あるいは家族との再会のためにウクライナ、カザフスタン、ドイツなどの近隣諸国に移住する傾向がある。
フィリピンは、キリスト教徒移民の出身国として3番目に多い国(520万人)だ。フィリピン人は、よりよい経済的機会を求めて、または政情不安のために国を離れることが多い。
意外かもしれませんが、インドもキリスト教徒移民の一般的な出身国で、300万人以上がインド出身。インドではキリスト教徒は全人口に占める割合はわずかだが、世界一の人口をもち、インド生まれのキリスト教徒は数千万人に上る。
さらに、インドは移民が宗教的少数派から来る割合が不釣り合いに高い国の一つだ。キリスト教徒はインドの人口の2%だが、インドで生まれて現在他の地域に住む人々の推定16%を占めている。
*出身国と移民先の関係
これまでのところ、キリスト教徒の移民にとって最も一般的な経路は、メキシコから米国への経路だ。1100 万人以上のキリスト教徒がこの経路を通ってきた。2020 年現在、世界のキリスト教徒移民の約 8% がメキシコで生まれ、現在は米国に住んでいる。
ウクライナとロシア間の双方向の移動もキリスト教徒にとって一般的であり、2020 年現在、240 万人がそれぞれの方向に移動している。歴史的に、人々は仕事、教育、家族の再会のために、この 2 国間を移動することが頻繁にみられる。
フィリピンで生まれた 200 万人以上のキリスト教徒が現在、米国に住んでおり、これは世界で 4 番目に一般的なキリスト教徒の移民先となっています。
*1990 年以降の変化
キリスト教徒の移民の総数は、1990 年の 7300 万人から 2020 年には 8割増え、1 億 3100 万人強となっている。増加率は、同時期の移民全体の83%増を若干下回る。
米国、ドイツ、スペインではキリスト教徒移民の増加が最も大きかった。米国では、キリスト教徒移民は1990年の1690万人から2020年には3540万人へと2倍以上に増加したが、これはメキシコ、フィリピン、グアテマラからの移民の急増が一因だ。
ドイツでは、この期間にキリスト教徒移民人口が280万人から3倍の840万人に増加した。その多くは、1989年以降のロシア・東欧圏での共産主義政権崩壊で、ポーランド、カザフスタン、ロシアなどから豊かな西欧諸国への大量の流出が起きたことが主因となっている。
スペインでは、キリスト教徒移民人口が、この期間に50万人未満から8倍の420万人近くに急増した。この急増した移民のほとんどは中南米諸国から来ており、コロンビア、エクアドル、ベネズエラで起きた金融危機が景気後退を引き起こし、何百万人もの人々が他国で職を求めることになったが背景にある。中南米の多くの国がスペイン語を公用語とていること、欧州連合の新メンバーとしての経済的成功により、スペインはこの地域からの移民にとって最大の移住先となった。
もっとも2020年の時点でスペインへの移民の主体はルーマニアになった。この国は、ソ連の崩壊で独裁政権が崩壊した後、長年にわたって政治的、社会的混乱を続け、安全で安定した生活を求めて、スペインなどへ脱出する者が増えた。ルーマニアからスペインへのキリスト教徒移民の数は、1990年の2000人から2020年には55万人に急増している。
ウクライナに住む外国生まれのキリスト教徒の数は、1990年の430万人から2020年には3割減の300万人になった。
マラウイでは1990年の99万人から17万人に減少。これは”帰還移民”によるところが大きい。マラウイでは、隣国モザンビークの内戦終結後、同国から多数のキリスト教徒が帰還した。
1990年から2020年の期間の、出身国からみたキリスト教徒移民の最大の増加はメキシコからで、1990年には470万人だったのに対し、2020年には2.4倍の1130万人に増加した。大部分は米国に向かった。その一因は、1994年に発効した北米自由貿易協定が、結果としてメキシコの農民の大規模な失業をもたらしたことが背景にある。だが2006年以降、メキシコから米国への純移民は減り、その後逆転した。メキシコから米国に帰る移民の数がメキシコから来る移民の数を上回ったためだ。
メキシコに次いで、この期間に急増したのはベネズエラからの移民で、1990年にはわずか16万人のキリスト教徒移民だったのが、2020年時点では460万人に増えた。急増したのは2015年以降、インフレの高騰、政情不安、暴力の激化により、国外に脱出したもので、2020年以降も国外流出は続いている。
キリスト教徒移民の減少が目立つのはロシアで、1990年の930万人から2020年には780万人(15%減)。モザンビークでは190万人から60万人(68%減)となった。両国とも、経済的および政治的混乱が収まり安定したかに見えたことがある。