・ウクライナ侵攻に反対のロシア正教の司祭「亡命先から”聖戦”続ける」(La Croix)

Russian Orthodox Archpriest Alexei Uminskï (Photo by Valeamicus / WIKIMEDIA/CC BY SA 4.0)
Russian Orthodox Archpriest Alexei Uminskï (Photo by Valeamicus / WIKIMEDIA/CC BY SA 4.0)

 (2024.7.5 La Croix   Malo Tresca) ロシア正教のモスクワ聖三位一体教会の主任を務めていたアレクセイ・ウミンスキー大司祭は「ウクライナとの戦いにおける聖なるロシアの勝利」の祈りをミサ中に唱えることを拒否したため、今年1月にモスクワ総主教区での司祭職を解任され、フランスに亡命した。

 現在は、パリのノートルダム・デュ・シーニュ・ロシア正教会で奉仕しているウミンスキー大司祭がLa Croixの独占会見に応じ、亡命生活、そしてクレムリン反対派への支援などについて語った。

 一問一答は以下の通り。

問: あなたは、ロシアのウクライナ軍事侵攻に公然と反対した数少ないロシア人司祭の一人です。そして、モスクワ総主教区は1月5日にあなたを職務から解任しました。これはどのように起こったのですか、そしてあなたはどう反応しましたか?

 

*「ロシアの勝利」の祈りを唱えるのを拒んだのが解任の理由

 

答 :私はモスクワ中心部のホフリの聖三位一体教区で30年近く奉仕していました。1月5日、モスクワ総主教庁の特別委員会が、「国内のすべての正教会の司祭が礼拝中に『ウクライナにおける聖なるロシアの勝利』の祈りを唱えているのに、どうしてあなたはそうしないかのか、と私に尋ねました。この委員会は、私が戦争に反対する理由を聞きたくありませんでした。そのわずか数時間後、私は、アンドレイ・トカチェフ大司祭が私の後任として教区長に就任することを知りました。ロシアの民族主義チャンネル『ツァーリ・グラード』の協力者で、ロシアで非常に人気のあるこの司祭は、モスクワ総主教庁とクレムリンを支持していることで知られています…私とはまったく正反対です!

 

*「モスクワに留まっていたら逮捕される」と警告された

 

 このことは、私と多くの教区民にとって本当にショックでした。私は後任にすべての持ち物を引き渡し、彼にとっての新しい教会、イコン、祭服、聖なる物を紹介しなければなりませんでした…この辛い決断の翌日は、正教会のクリスマスでした。私にとっては喪に服す日のように思われ、教会に行く気はなかった。妻と私はアパートに留まり、友人の司祭が家に来て典礼をし、聖体祭儀をしてくれました。出発前に、この友人は、「あなたに悪い知らせがある… 『モスクワに留まれば逮捕されるだろう』とまじめな人々から知らされた」と忠告してくれました。

 問: それであなたは、亡命を急ぎました。 その時、どのような内なるジレンマに直面しましたか?

 

 

*高齢の父を置いて、長い亡命の旅に

 

答: 私はロシアを離れたくありませんでした。特に、今年 89 歳になる父を残しては…。妻から、「でも、お父さまはあなたが海外で一人でいるのを知った方がいいか、それともモスクワにいて刑務所にいるのを知った方がいいのか、どちらです?」と問い詰められ、私は亡命を決めました。電話で脅迫も受けていたので、このままいては危険だと悟りました。それで、わずか 30 分で、小さなバッグに荷物を詰め、ジョージアに向けて出発したのです。

 長い旅が始まり、ジョージアから、イタリア、ベルギー、トルコ (ファナールでコンスタンチノープルのバルトロメオス総主教と会いました) を巡り、その後ベルギー、そして最後にフランスへと向かったのです。フランスでは、これまで (編集者注: コンスタンチノープル総主教区のフランス大都市に付属する教区で) 3 か月間奉仕してきました。

 

問: これらの試練を乗り越えるために、信仰はどのように役立ちましたか?

 

*「何も恐れるな」と言う詩編の言葉に出会い、”扉”が徐々に開かれた

 

答: 少し妙かも知れませんが、亡命することで、解放され、落ち着いた気分になりました… 生来、少し衝動的で短気な性格の私は、自分を批判したり、非難したりする人々に対して憎しみや怒りを感じなかったことに、我ながら驚きました。ジョージアに到着し、私は聖職禁止の身にもかかわらず、神、信仰、聖体拝領について語ることができると思っていました。キリスト教徒として、教会での典礼祭儀に出席を続けました。

 そして、イタリアのカトリック教会を訪問していた時に、ある”事件”が起こりました。回廊の片側への立ち入りを禁止する標識がありましたが、入り口の扉が半開きだったので、無理やり開けて入ろうとして、指を切りました。その扉の先は、礼拝堂に通じており、「何も恐れるな」という詩篇の一節が目立つように掲げられていました。私はそれを「良い兆し」と感じましたが、実際に、”閉ざされていた扉”が徐々に開かれ、パリのノートルダム・デュ・シーニュ教区での聖職の復活につながりました。私はここで非常に歓迎され、多くの教区民が礼拝に出席してくれています。

 

問: 今日、ロシア政府の方針を後ろ盾にして言説を過激化し続けているモスクワ総主教区の将来をどう見ていますか?また、ロシアの聖職者の間での(プーチン大統領やそれに組するロシア正教指導部などへの)反対勢力の状況はどうなっていますか?

 

*プーチンと強く結びついてモスクワ総主教区の将来は不明、でもロシアに残る司祭たちと連絡は欠かさない

 

答: 率直に言って、モスクワ総主教区はプーチン政権と非常に強く結びついており、これからどうなるのか、分かりません。私は、以前訪問していた政治犯に毎週月曜日に手紙を書き続けています。また、ウクライナ戦争というこの惨事を支持したくないロシアの司祭たちと連絡を取り続けています。彼らは約10人います。私たちはお互いに手紙を書き、私は彼らからニュースを受け取っています。週を追うごとに、状況は悪化しています… 中には、十分な説明もなく、単なる法令によって聖職を禁じられる人もいます。司祭たちへの制裁の手続きは迅速化され、教会の法廷に出廷することさえなくなりました。彼らは控訴する機会を奪われ、何もできない状況に置かれています。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2024年7月6日