(Credit: Susan Walsh/AP.)
ローマ 発– イタリアの神学者は、バイデン米大統領が大統領選から撤退したことは、事実上、米国における「和解のカトリック」の終焉し、教皇フランシスコの姿勢とは正反対の「ポピュリスト的かつ実質的に人種差別的な信仰」に取って代わられることを意味する、と見ている。
神学者で、バチカンが後援する「ヨハネ・パウロ2世記念、結婚・家族科学のための神学研究所」の客員教授と務めるマルチェロ・ネリ氏は21日にニュースサイトSettimana Newsに掲載した評論で、「バイデンが次期大統領選挙の民主党候補を辞退したことは、第二バチカン公会議に触発され、多くの感動をあたえてきた米国の”カトリックの季節”の終わりを象徴するものだ」と述べた。
また、「バイデンはカトリック教徒だが、米国の司教たちから本当の支持を受けたことはない」とも述べ、2021年1月6日の米国議会議事堂襲撃事件後の司教たちの「沈黙」は、今回のバイデンの立候補辞退に先行して、第二バチカン公会議によって始まった「長い民主主義の季節」の終わりを告げていた、とも指摘。
「バイデン氏は、非個人主義的で非党派的な社会カトリックの最後のあがきを代表していた。国務執行の中で穏やかな調子とやり方に満ちており、最終的には一部の国民が人間生活と社会生活に対処する上で孤立してしまうような特定の主張に固執することなく、米国の社会構造の複雑さを維持し、支えることができた」と、その”功績”を振り返った。
一方、共和党のトランプ大統領候補が、2019年にカトリックに改宗した社会保守派のJ・D・ヴァンス氏を副大統領候補としたことは、「新しいタイプの米国カトリックへの移行」を表しており、「バチカン(特に教皇フランシスコ)に象徴されるカトリックの疑念の原動力として自らを位置づける重荷と責任を、ヴァンスは引き受けることになる」と予想した。
1942年生まれのバイデン氏は、1965年12月に第二バチカン公会議が閉幕した時、23歳で、カトリック教会に引き起こされた大変化を記憶している。だが、現在39歳のヴァンス氏にとって公会議は「教会の歴史」の一つの章だ。
ネリ氏は、「この”非和解のカトリック信者”は、帝国主義者と同義、と言える… 教皇フランシスコの教皇職に抵抗する小集団に何百万ドルも支援し、普遍主義的なカトリック教会を、本部を米国に置く”世界的な巨大宗派”に変えるプロジェクトに従わせている」と批判。
そして、「多くの表現において大衆主義的で、実質的に人種差別的だ」とし、「このような姿勢に、『福音の喜び』の余地はなく、あるのは、怒りと恨みだけだ。トランプを『米国を再び偉大にする救世主』と見なす米国民の一部によって巧みに操作されている」とも述べている。
これまでのところ、このネリ氏のコメントは、バチカン内外からの、バイデン氏撤退に対する、数少ない実質的な反応の1つだ。
ローマ時間の22日朝の時点で、バイデン撤退のニュースはまだバチカンの公式メディアで報道されていなかった。イタリア司教協議会の新聞「 Avvenire 」は2つの記事を掲載し、1つはバイデン氏の撤退発表について、もう1つはカマル・ハリス副大統領が民主党の大統領候補となる可能性を扱っている。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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