・「ガザの人たちは飢餓状態、だが、支援もままならない、同僚と家族も死亡、早く停戦を」ーカリタス・エルサレムの代表が訴え

(2024.12.24 La Croix Anton Asper)

IDF forces in the Gaza Strip in October 2024. (Photo: IDF/Wikimedia Commons)
IDF forces in the Gaza Strip in October 2024. (Photo: IDF/Wikimedia Commons)

 この1年、カトリックの援助団体、カリタス・エルサレムのスタッフは、人道支援および開発組織としての役割を果たしながら、カトリック教会の社会・牧会的使命を体現してきた。ガザ地区での戦いで、イスラエル軍によるガザ地区の聖ポルフィリオス正教会への空爆で、スタッフの一人が夫と幼い娘と共に命を落とす、という痛ましい悲劇に見舞われるなど、大きな困難にも直面した。

 2022年9月以来、カリタス・エルサレムの代表を務めるアントン・アスパー氏は、La Croixの取材に応じ、現在も直面し続けている困難について語り、降誕節の希望を語った。

 アスパー氏と彼のチームは、イスラエルによるハマスに対する戦争の交戦地域に取り残された何千人もの男女や子供たちを支援している。エルサレムのシリア・カトリック教会の助祭であるアスパー氏は、戦争が始まって以来、自身とスタッフが目撃し、耐えてきた苦難について振り返りつつ、待降節の時期に輝く小さな希望の光をしっかりと抱きしめている。

  一問一答の内容は次の通り。

問:クリスマスはキリスト教徒にとって喜びにあふれた期待の時です。しかし、聖地に住む多くの人々、特にガザ地区の人々にとっては、希望を持つことはほとんどできない。混沌とした状況の中で、希望の兆しは見えますか?

アスパー:信仰に基づく見方では、私たちは常に内なる希望を抱いています。つまり、「何か良いことが起こり、平和の王が自らの土地、聖地に平和をもたらす」という希望です。レバノンで停戦が実現し、そこで何が起こったのかを私たちは目の当たりにしました。そして一時、「ガザ地区でも停戦が実現し、それが恒久的なものとなる」という希望が持てるのではないかと、私たちは本当に楽観的しました。

 当地のキリスト教徒たちは、自分たちのやり方で、自分たちの家でクリスマスを祝おうとしていますが、公共の場では祝えない。ガザ地区でこれほど多くの人々が殺傷されたことを考えると、それは本当に容易なことではありません。ガザ地区やヨルダン川西岸地区に親戚がいる人も多い。それでも、「変化が訪れる」と信じている。変化が訪れる兆しは、すでに少し見えています。私たちは、大きなコミュニティの中の小さな、しかし、たくましいコミュニティです。私たちは、聖地に住むキリスト教徒であり、主イエス・キリストを、私たちにできる方法で証ししています。そして、それが私たちの誇りでもあるのです。

 

 

問:キリスト教徒として、またカリタス・エルサレムのディレクターとして、聖地で過ごすこの特別な時期は、あなたにとってどのような意味を持つのでしょうか?

アスパー:降誕節は全世界に希望をもたらします。 私は、エルサレム・カリタスの事務局長として、この希望を少しでも伝えるために全力を尽くしている。 まず、戦争中ずっと本当に多くの苦難を経験してきた同僚たちに伝えるために。 ガザ地区には約100名のスタッフがいます。そして2名の同僚を失いました。スタッフを危険にさらさないよう最善を尽くしていますが、ガザに「人道地帯」が設けられているにもかかわらず、依然として危険が伴う。数週間前には、ガザの南にあるヌセイラ難民キャンプ、私たちはそこに医療施設を設けているのですが、が砲撃を受け、私たちの医師2名が負傷した。

 パレスチナ人であれイスラエル人であれ、特にイスラエル政府に対して、この戦争を終わらせるよう圧力がかかることを望んでいます。即時かつ恒久的な停戦は非常に重要です。私たちは、罪のない一般市民を支援している医療チームや援助活動家の保護を、援助物資の輸送ルートの確保を求めている。ガザでは人々が飢饉の危機に瀕しており、援助物資は本当に不足している。また、ヨルダン川西岸地区全域における軍事作戦と入植者による侵略行為の停止を求めています。

 

問:現在、カリタス・エルサレムが直面している問題は何でしょうか。また、今年のクリスマスに期待することは何でしょうか。

アスパー:ガザ地区では、戦争が始まって以来、大きな問題が山積しています。多くのスタッフはガザ地区の聖家族ラテン典礼修道会や正教会の施設に避難することを余儀なくされていますが、その正教会の中央施設に隣接する建物が砲撃されてシェルターが崩壊し、18人のキリスト教徒が亡くなっています。死者の中には私たちの同僚のビオラと彼女の幼児の娘、夫、そして姉妹も含まれていた。同じ家族の12人が、その砲撃で命を落としたのです。

 支援業務の遂行やガザ地区内の移動にも多くの困難や課題があります。ガザ地区の北部であれ南部であれ、容易なことではない。ガザ地区では、燃料もきれいな水も不足しており、ゴミがあふれ、病気が蔓延している。ガザ地区では環境の大惨事が起こっているのです。

 またガザの医療センターに隣接する学校が砲撃された際に被害を受け、修復のために エンジニアや請負業者と、何度かそこへ行こうとしたのですが、2週間ほど前に、その医療センターから2.5キロ以内の地域に立ち退き命令が出された。私は、そこに住む人々に危険を冒させたくないので、現地での復興作業の開始を延期しました。

 南部では、医療チームの移動に大きな課題があります。ガザでは9つの医療拠点で17の医療チームが活動していました。ガザで活動するスタッフは100人。燃料不足により、スタッフの輸送がいかに困難が想像していただけるでしょう。スタッフはロバが引く荷車に乗せられて、支援地に行くこともある。地域社会に提供しようとしているサービスでさえ、物資不足で、その質と水準は高くない。救援物資や支援物資の輸送は、10月2日以降減少しています。人道支援のための輸送ルートが開かれ、質の高い物資が地域社会に提供されることを願っています。

 ガザ地区には、本当に苦しんでいる子供たち、母親、家族など、罪のない人々が大勢います。彼らには食料も水も野菜も手に入らない。生活必需品がまったく手に入らないのです。このクリスマスシーズンに、私たちは主が介入し、特にヨーロッパの指導者たちの目と心を開いて、この苦しみを終わらせるためにさらに圧力をかけるよう、祈りを捧げています。私たちは、彼らが2つの社会間の真の対話を促進し、この長引く紛争の解決策を見出すことを願っています。この紛争は10月7日に始まったわけではありません。その根源は40年前にさかのぼるのです。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
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2024年12月25日