【 教皇・東南アジア、オセアニア歴訪】「多様性の中で人々を一致、調和させる相互尊重が求められている」インドネシアの各界代表たちに

 (2024.9.4 バチカン放送)

 東南アジア・オセアニア4ヵ国歴訪中の教皇フランシスコは、最初の訪問国インドネシア到着の翌日、4日、ジャカルタの大統領官邸であるムルデカ宮殿を訪問、宮殿前広場でジョコ・ウィドド大統領と歓迎式典に臨まれた。この後、宮殿内に同大統領を表敬訪問し、個人会談を持たれ、さらに、国家宮殿(イスタナ・ネガラ)で、同国の政府関係者、各界代表、同国駐在の外交団と会見された。

 この会見でのあいさつで教皇は、「アジアとオセアニアを結ぶ海に浮かぶ、何千、何万の島々がなす広大な群島、インドネシアにとって、海がすべての島々を統合する天然の要素であるように、インドネシアを構成するすべての集団の各々の文化的・民族的・言語的・宗教的特徴に対する相互の尊重は、この国の人々を一致させるために不可欠な、人々をつなぐベースとなっています」と語られた。

 そして、インドネシアのモットーである「多様性の中の統一」は、「様々な民族が一つの国の中で固く結びついている、この多様な現実をよく表すもの」とされ、「多様性における調和は、『一人ひとりのビジョンが共通の必要に配慮し、それぞれの民族・宗教に属するグループがすべての人の善に奉仕する』という、崇高な目標を追求しながら、兄弟愛の精神のうちに行動する時に達成されるもの… 多様な文化と、異なるイデオロギー的視点、一致を強固にする原則との間との、この賢明かつ繊細なバランスは、均衡を乱すあらゆる要素から絶えず守られねばなりません」と強調された。

 また教皇は、「諸宗教間対話の機会を豊かにすることを望むカトリック教会の意向」を表明しつつ、「これによって、偏見を排除し、相互の尊重と信頼の環境を育むことに貢献できるでしょう…  また、これは、宗教を歪曲し、欺きと暴力を用いて自分たちの考えを強要する過激主義や不寛容への対抗をはじめ、共通の課題に立ち向かうために欠かせないものなのです」と説かれた。

 1945年に制定されたインドネシアの憲法の前文を取り上げ、「多様性の中の統一、社会正義、神の祝福を、社会秩序を促し導く基本原則」が示されている、とされたうえで、「残念なことに、今日の世界には、普遍的な兄弟愛の発展を妨げるある種の傾向が見られます… 様々な地域で見られる暴力的な紛争は、多くの場合、相互尊重の欠如から来るもの」とされ、「たとえそれが共同体全体に終わりのない苦しみを与え、流血の戦争をもたらそうとも、自らの利益や立場、自己の歴史的ストーリーの一部を、『何が何でも優位に立たせたい』という不寛容な欲望の結果なのです」と指摘された。

 また、神の祝福を求めることを「人間や市民社会に無用なこととみなし、自分たちの力だけで発展しようとし、しばしば失敗や挫折に突き当たること」がある一方で、「神への信仰を常に第一としながらも、平和構築、交わり、対話、尊重、協力、兄弟愛を促進するはずが、分裂と憎しみをあおるように変質させられている場合もある」など、宗教を取り巻く様々な現実に目を向けられた。

 そして、「このような問題を前に、インドネシアの制度にインスピレーションをもたらす哲学が均衡のとれた賢明なものであることは喜ばしいことです」とされた。

 教皇は、「平和とは、正義の実りです。調和は、一人ひとりが自分の利益や考えのためだけではなく、すべての人の善のために、橋を架け、合意や協力を育み、あらゆる形の道徳的・経済的・社会的貧困に打ち勝つために努力する時にこそ実現されます」と訴えられ、最後に、インドネシアに希望あふれる未来を願い、神の平和の祝福を同国の上に祈られた。

(編集「カトリック・あい」)

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2024年9月4日