(2024.9.26 Vatican News Lisa Zengarini)
ルクセンブルク・ベルギー訪問を開始された教皇フランシスコは26日昼、ルクセンブルクのセルクル・シテ宮殿で、同国の各界代表、外交団と会見され、あいさつで、欧州大陸におけるナショナリズムと戦乱が再興ようとしていることに強い懸念を示すとともに、欧州の中心にあるこの小さな国が「欧州の統合と平和を促進する上で果たすことのできる重要な役割」を強調された。
「戦争の恐怖ではなく平和の利点、そして強硬な立場や利己的で近視眼的、あるいは暴力的な利益追求の有害な結果ではなく国家間の協力の利益を、ルクセンブルクはすべての人に示すことができます」と語られた教皇は、「この大陸でナショナリズムが復活し、戦争の危機が迫る中、平和への長年の取り組みと「統合された兄弟愛の欧州」の構築にしっかりと取り組むよう、参加者と、欧州各国指導者たちに促された。
教皇は、「ルクセンブルクが欧州大陸での最も重要な歴史的出来事の岐路に何度も立たされてきたこと」を思い起こされ、第二次世界大戦による荒廃の後、この国が、「欧州連合の創設メンバーとして欧州の平和と統一を促進する上で重要な役割を果たしてきたこと」を指摘された。
そして、この国の、人間の尊厳と法の支配を促進する「強固な民主主義構造」を称賛され、「それが、欧州の中心にあるこの小さな国が繁栄し、大陸の文脈で大きな役割を果たすことを可能にしました… 一国が国際舞台で重要な役割を果たすために、あるいは経済や金融の中枢になるために不可欠な条件は、領土の広さでも住民の数でもないのです」と語られた。
さらに教皇は、1985年にルクセンブルクを訪問された聖ヨハネ・パウロ2世教皇の言葉を引用する形で、特に貧しい国々を支援する上で、国家間の連帯の必要性を繰り返し強調され、ルクセンブルクを「文化の重要な交差点」として、教会の社会教義に沿って「すべての人が統合的発展の組織的プロセスの主人公」になれるように世界的に協力を促進するという使命を継続するよう、勧められた。
参加者たちに、環境を尊重し、社会的排除に反対する発展モデルを追求し、「富を持つことには責任が含まれる」ことを思い起こさせられたうえで、教皇は「発展が本物で全体に均衡のとれたものとなるために、私たちは”共通の家”を略奪したり、劣化させたりしてはなりません。周縁にいる人々や社会集団を見捨ててはなりません」と強調。「ルクセンブルクのような裕福な国には、恵まれない国々が貧困から脱却できるよう支援し、強制的に移住させられる人々の数を減らす義務があります… 歴史と多文化の人口を持つルクセンブルクは、移民や難民を歓迎し、統合するモデルとなり得るのです」と強調された。
また、教皇は大きく変動する現在の世界情勢に目を向けるられ、「人類が過去と同じ過ちを繰り返しているように見える欧州や世界中での武力紛争の復活」を非難され、「人類が現在持つ、より大きな技術力によって、紛争はさらに悪化している」と憂慮。「莫大な人的犠牲とさらなる無益な虐殺」を伴う愚かな戦争に理性が屈するのを防ぐために、人々とその指導者が「高貴で深遠な精神的価値観に動かされる必要があります」と訴えられた。
教会も「人類に奉仕し、平和、連帯、正義を推進する」という本来の使命を再確認された教皇は、「イエス・キリストの福音が、個人と社会を和解と紛争の平和的解決へと導くよう、その使命を果たすように、強く求められた。
そのうえで教皇は「私は、使徒ペトロの後継者として、そして人類の専門家である教会を代表して、福音が生命の源であり、個人と社会の再生の絶え間ない新鮮な力であることを、証しするためにここにいます」とされ、ルクセンブルクに平和、統合、協力の利益を示し続けるよう促された。
そして、世界の指導者たちに、「あなた方の使命の一つは、世界が平和になるのを助けること」として、互いの摩擦を解決するための誠実な交渉に「断固として」取り組み、「何も損なうことなく、すべての人々の安全と平和を築くことができる「名誉ある妥協点」を見つける意欲をもつように求められた。
あいさつの締めくくりに教皇は、今回の訪問のモットーである「奉仕する」は、教会の使命を指しているが、毎日従うべき崇高な仕事と生き方として、すべての人に当てはまる、と説明され、「神が、あなた方が常に喜びと寛大な心で奉仕できるようにしてくださいますように」と願われた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)