(2024.9.27 Vatican News Christopher Wells)
ベルギー訪問中の教皇フランシスコは27日の、同国の政治、経済、市民社会など各界代表、外交団、そして司教団などとの会見でのあいさつで、聖職者による性的虐待問題を重点的に取り上げ、「カトリック教会は、キリスト教徒としての謙虚さをもって児童性的虐待の『恥』と向き合い、二度とこのようなことが起こらないようあらゆる努力をしなければならない」と強調。同席した国王、首相も、教会関係者に厳しい注文を出した。
教皇は、一向に収まる気配のない世界的な聖職者による性的虐待スキャンダルに頭を痛められ、繰り返し絶滅の努力を、世界の教会関係者に求めておられるが、教会関係者以外の国の各界指導者たちを前にして、聖職者による性的虐待の現状を率直に認め、その再発防止を訴えられるのは極めて異例だ。(この部分、「カトリックあい」)
*「教会は言い訳できない、再発防止にあらゆる努力が必要」と教皇
あいさつで教皇は、聖職者による児童性的虐待は「私たちの恥であり屈辱」と言明。「教会は、このことを恥じ、キリスト教徒としての謙虚さをもって状況の解決に努め、二度とこのようなことが起こらないようあらゆる努力をしなければならない」と強調された。
そしてこのような行為を、イエス誕生時のヘロデ王による聖なる無垢な子供たちの虐殺に例えられたうえで、「今日、私たちが直面し、赦しを請い、虐待の恥、未成年者への虐待の恥を解決せねばなりません」と言明。「仮に、虐待の大半が(教会でなく)家庭や学校で起きているとしても、教会は言い訳できません… 教会は、これについて赦しを請わねばなりません… これは私たちの恥であり、屈辱です」と繰り返された。
教皇は、関連して、特に20世紀の中ごろに欧米で蔓延していた「強制養子縁組」を取り上げ、「子供たちと強制的に引き離されたシングルマザーの痛ましい話から、不正行為と犯罪の苦い果実が、当時の社会のあらゆる部分で支配的な見解と混ざり合っていたことが分かります」とされ、「たとえ、そうした”文化”が、福音から得た価値観を巧みに利用し、そこから苦しみと排除を引き起こす偽りの結論を引き出していたとしても… 教会は、誤った見解に決して従ってはなりません」と説かれた。
*「被害者の叫びを聞き届けるのに、あまりにも長い時間がかかっている」-ベルギー国王も批判
続いてあいさつされたフィリップ国王も、性的虐待がもたらしている危機について言及され、教皇が「教会内での言い表せないほどの性的虐待の悲劇」を「可能な限り強い言葉で」非難されたことを強調。性的虐待の被害者、強制養子縁組の被害者は「一生、癒えないような傷を負っています… 彼らの叫びが聞き届けられ、認められるまでにあまりにも長い時間がかかり、修復不可能とされたものを修復する方法を探し始めるのにあまりにも長い時間がかかりました」と指摘された。
そして、教皇が「これらの恐ろしい行為と戦う」ために講じた「具体的な」措置と、この点に関するベルギー教会の努力を認めながらも、それらの努力は「断固として容赦なく続けなければなりません」と国王は強調された。
*ベルギー首相も「隠ぺいは容認できない。言葉だけでは不十分」と教会の対応を批判
同じくあいさつしたアレクサンダー・デ・クロー首相も、聖職者による性的虐待の危機と強制的な養子縁組の歴史について言及し、「どちらもカトリック教会と市民社会への信頼を損なう行為です」と述べ、教皇がこれらの問題に「公正で公平なアプローチ」を約束しているにもかかわらず、「まだ道のりは長い」と指摘。「教会の聖職者は信念と慈悲を持って働いている」ことを認めつつ、「何か問題が起きた場合、隠蔽することは、容認できません… そのような行為は、すべての人が行っている貴重な仕事に損害を与えてしまいます。だからこそ、言葉だけでは不十分。具体的な措置を講じなければならない」と強調した。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)