☩教皇、マドリード3日目:スペイン議会で講話「公正な社会は、あらゆる人間の命、平和、自由を守る」

Pope Leo XIV address the Parliament of Spain in Madrid(写真右:Pope Leo XIV address the Parliament of Spain in Madrid =@Vatican Media)
(2026.6.8  Vatican News   Deborah Castellano Lubov)

   スペイン訪問中の教皇レオ14世は8日午前、歴代教皇として初めて、マドリードのスペイン議会下院で国会議員たちに講話され、「真に民主的な社会は、思想、良心、宗教の自由を促進しなければならない」「家族を支えることが国家を強固にする」「生命は受胎から自然死に至るまで保護されなければならない」、そして「戦争と再軍備は、社会にとっての失敗だ」と強調された。

*人間の不可侵の尊厳は、『使い捨て文化』によって脅かされかねない

 講話で教皇は、「思想、良心、宗教の自由は、あらゆる真に民主的な社会にとって決定的な問題です」とされた。講話の核心は、「あらゆる真に公正な社会は、人間の不可侵の尊厳の認識に基づいていなければならない」という点にあった。

 そして、「そのような尊厳は国家によるいかなる譲歩よりも先立つものであり、変化する社会的合意や一時的な多数派の気まぐれに従属させることはできないこと」を再確認され、この前提に基づき、社会的共存を法的に組織するという重大な責任を負う人々に対し、「冷静、かつ断固とした言葉を投げかけたい。教皇フランシスコが繰り返し指摘されたように、そうした共存は『使い捨て文化』によって脅かされかねません」と警告された。

*受胎から自然の死に至るまで、生命は守らねばならない

 さらに教皇は、「もしも、生命が根本的な価値として認められなくなり、社会が、まだ生まれていない子供、高齢者、病人、沈黙の中で苦しむ人々、あるいは他者の介護に完全に依存している人々を影に追いやるなら、私たちの社会にどのような未来があるでしょうか」と議員たちに問いかけ、「人間の生命の擁護は、私的な利益の問題でも、特定の信仰上の関心事でもなく、文明の目標です。あらゆる人間の命は、その存在のあらゆる状況において、受胎から自然の死に至るまで認識され、守られなければなりません」と強調。

 「この確信が曇ると、最も弱い立場にある人々が最初の犠牲者となり、法はその最も深い意味、すなわちすべての人々に奉仕し保護するという意味を失います」と警告された。

Pope Leo XIV addressing Parliament

(写真左:スペイン議会下院で講話される教皇=@Vatican Media)

*国家の道徳的偉大さは、脆弱な命に寄り添い、保護し、慈しむ能力に現れる

 また教皇は、「国家の道徳的偉大さは、より大きな脆弱性を抱える命に寄り添い、保護し、慈しむ能力に現れます」とされ、「公益が共有された地平でなくなる時、公的行動は部分的な利益へと分断され、すべての人々に属するものを守ることができなくなる危険性がある」と警告された。

 

 

*家庭は常に「人間性の最初の学校」、教育機関にも決定的な役割

 そして、「家庭が特に重要であり、それは人間社会の最初の現実であり、共同体の自然な基盤でもあります。家庭で世代が交わり、社会に内的な連続性をもたらす生きた記憶が受け継がれる。家庭が支えられているところでは、国家の精神的・社会的安定も強められる。家庭は常に『人間性の最初の学校』であり、他のいかなる場所よりも先に、共存の基礎的なルールや、生命を受け入れ、他者を思いやり、赦し、奉仕し、帰属する方法を学ぶ場です」と指摘。

 「教育機関も、この任務において決定的な役割を果たします。教育機関において、新しい世代が真理を求め愛すること、人生の意味やすべての人の尊厳について問いかけられるようになるのです」と語られた。

*移民・難民問題に、「流入の管理」に留まらない対応が求められている

 続いて教皇は、「平和、安全、そして未来を求めて、すべてを置き去りにせざるを得ない多くの人々の存在」に関心を向け、「移民・難民の悲劇的なドラマは、今日、国家の良心と国際秩序の倫理的基盤に問いかけています」とされ、また、「国籍、民族、宗教、言語的背景、あるいは経済的・社会的状況のために人が差別されるあらゆる事例」を非難し、そのような事態が生じるとき、「『すべての人間の尊厳が等しい』という普遍的原則が深刻に侵害されます」と警告。

 「移民・難民が置かれている状況に対して、人を中心に据え、彼らを故郷を離れざるを得なくさせる原因に対処し、単なる流入の管理にとどまらない対応をすることが、私たちに求められているのです」と言明された。

*社会正義による二つの要請-「安全・合法的な移住経路の提供」と「自国に留まる権利促進」

 

 そして、「社会正義に関する二つの要請が生じます。『安全かつ合法的な経路の提供、敬意を込めた受け入れ、そして真の統合の機会の創出』と『自国に留まる権利を促進』です。このために、平和や安全、尊厳ある生活条件の欠如、経済的不平等、あるいは気候危機の影響によって、誰も故郷を離れることを余儀なくされないよう取り組む必要があります」と指摘。

 「近年、ますます危険なルートが増加していることは、この現実がもたらす莫大な代償を浮き彫りにしています。その代償は、しばしば隠されたり、無視されたりしており、多くの人々が、彼らの絶望を悪用する人身売買業者や密入国斡旋業者の犠牲となっています」と述べられた。

 このため、教皇は、「特に地域的・多国間協力の枠組みの中で、予防、救助活動、および被害者への支援を強化する必要があります。いかなる国も、このような規模の課題に単独で立ち向かうことはできない。移民・難民に対して保護、受け入れ、そして真の統合の機会を保証し得る、調整された、支援的かつ効果的な対応が不可欠です」と強調された。

 

 

*世界は深遠な精神的・文化的危機に直面している

 

 教皇はまた、「世界が深遠な精神的・文化的危機に直面しており、それが暴力、分極化、相互不信といった多様な形で現れています」とされ、「こうした中で、平和は政治的願望であると同時に、それ以上に真の道徳的必要性です… 平和を実現するためには、異なる考えを持つ人々を尊重する公的な議論、出会いのために奉仕する制度、真実と和解を求める歴史的記憶、そして意見の相違があっても市民的な友情と相互尊重を維持できる社会生活が求められています』と言明。

 国際的なレベルで、平和には外交的勇気、倫理的責任、そしてあらゆる民族のアイデンティティへの尊重と、国際法が提供する平和的手段を通じて紛争を解決するという国家の義務に基づいた未来へのビジョンが必要です」と訴えられた。

*目指すべき真の安全保障は、「正義、忍耐強い対話、国際法の尊重、人々の命を優先できる政治」から生まれる

 続けて教皇は、あらゆる戦争を「交渉能力の痛ましい失敗であり、また国家間の正義の絆を認める人類共通の意識の痛ましい失敗でもある」とされ、「武器は一時的な沈黙を強いることはできても、真の永続的な平和を築くことは決してできません。欧州を含む世界各地で、国際情勢の脆弱性に対するほぼ不可避的な対応として、再び軍備増強が提示されている現状へ憂慮すべきこ事態です」と慨嘆。

 目指すべき真の安全保障は、「正義、忍耐強い対話、国際法の尊重、そして戦争から利益を得る利益よりも人々の命を優先できる政治から生まれます」と、政治家としての議員たちを激励された。

*戦争におけるAIと技術への警告

 教皇は、軍事分野における新技術や人工知能(AI)の発達についても、「生と死に関する決定が決して自動化されたシステムに委ねられたり、人間の道徳的責任から切り離されたりすることがないようにするために、厳格な倫理的監視が必要」とされ、「世界の国々、機関は、『条約の尊重、外交行動の透明性、そして武力行使よりも平和の優先』という誠実な意志に基づいた、公正かつ永続的な合意に向けた忍耐強い道として、対話の不可欠な価値を再発見するよう求められています」と訴えられた。

 

 

*「平和」は「言葉」を通じて確立され、守られ、公的責任を担う人々には言葉を守る特別な義務がある

 さらに教皇は、「平和は、単なる政治的、制度的な現実ではなく、恨み、無関心、憎しみが和解へと道を譲る良心の中に生まれる。そして、言葉を通じて確立され、守られるものでもある」とされる一方、「言葉は道を切り開くこともあれば、閉ざすこともある。現実を照らし出すこともあれば、出会いを不可能にするほど歪めることもある。公的責任を担う方々には、『言葉を無力化』するために、言葉を守る特別な義務があります」と議員たちに注意を促された。

 そして、「断固たる姿勢に軽蔑は必要なく、意見の相違は屈辱を意味するものではありません」と付け加えられ、「他者へのこの尊重から、他者の信念、良心、そして神との関係が成熟する場を保護する義務が生まれる。この内面の世界への配慮こそが、あらゆる真に民主的な社会にとって決定的な問題、すなわち思想、良心、信教の自由—個人の最も内密な領域を保護する基本的権利—をより深く理解できるようにします』と説かれた。

*本物の「自由」は、人間の宗教的側面を認め、尊重し、法的に保護する

 教皇はまた、現代国家の基盤となる「自由」について触れ、「それが真に本物であるなら、それは人間の宗教的側面を認め、尊重し、法的に保護します。そして、信仰を理由に、誰に対しても、その人が暮らす社会への貢献を放棄するよう強いることを避ける」とされ、「法的領域と道徳的領域を混同することなく、『自由』には、それ自体に対する完全な理解が必要だということを想起する価値がある。『自由だ』ということは、単に『制約なく生きること』、『多くの選択肢から選ぶことができること』を意味するのではなく、『善を認識し、責任を持ってそれに従うことができること』を意味します」と指摘。

 「したがって、真に自由な社会には、個人、共同体、団体の自由が不当に制限されないよう、公権力の適切な制限も不可欠です。そして、この観点から、世俗秩序の正当な自律性は、決して宗教的現象に対する敵意として解釈されてはならない… 信仰は、特権や強制によって自らを押し付けようとするものではない。だが、それゆえに、あたかも公的生活とは無関係であるかのように、沈黙へと追いやられることもあってはなりません」と言明された。

 

 

*教会にとって特別に重要な、告解の「秘跡の印」*は広範な宗教的自由の枠組みに属する

 この文脈において、教皇は、告解の秘跡の印が「カトリック教会にとって特別な重要性を持ち、それは信仰共同体に対し、生活、組織、内部規律の独自の領域を保障する、より広範な宗教的自由の枠組みに属するもの」とされ、「特定の職業において類例が見られるように、これを法的に保護することは、国際規範でも認められている通り、信者が外部からの圧力を恐れることなく神に心を開くことができる、内面的自由の聖域を守ることです」と指摘された。

*注*司祭(神父)が告解(懺悔・告白)の場で信者から打ち明けられた罪を、いかなる状況下でも絶対に他言してはならないという絶対的な守秘義務。

*スペインの国会議員たちに、「視線を上げ、生身の人間を思い起こそう」

 講話の最後に、教皇は議員たちに対して、「現実から距離を置くためではなく、公的機関のあらゆる決定が生身の人間に関わるものであることを思い起こすために、視線を上げるように。そして、技術的な解決策や立法改革に加え、道徳的な刷新も必要。あらゆる公的決定において、何が懸かっているのかをより深く見つめるように」求められた

 また、スペイン国民全体に対し、「皆さんのルーツを忘れることなく、未来を見据える勇気を失わず、出会いと文化、連帯、そして希望の地であり続けるように」と呼びかけ、「神が地上のすべての国々に、平和を、家族に和合を、良心に安らぎを授け、聖ヤコブの使徒的足跡とピラールの聖母の母なる御臨在に彩られたスペイン王国に、繁栄と平和と正義の日々が訪れますように」と祈られた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2026年6月8日