世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期の会合6日目、8日に行われた記者会見には、新たに選出された21人の枢機卿のうち3人が出席。また、総会参加者がガザのカトリックの聖家族教区に6万2000ユーロを資金援助したことが明かされた。ルッフィーニ長官によると、総会参加者などから集められた寄付金は、エルサレムの教区大使館を通じて、ガザの聖家族教会の教区司祭、ガブリエル・ロマネッリ神父に渡された、という。
会見は、シノドス情報委員会委員長のパオロ・ルッフィーニ広報省長官の司会で行われ、新枢機卿に予定される21人の中から、コートジボワール・アビジャンのイグナチェ・ベッシ・ドグボ大司教、東京のタルチシオ菊地功大司教、ブラジル・ポルトアレグレのハイメ・スペングラー大司教が同席した。
*ルッフィーニ情報委員長:「全体会議で、総会最終報告の起草委員会の委員7人が投票で選出」
ルッフィーニ委員長によると、7日の会合で、シノドス事務局のグレック局長から、バチカンの「いのち・信徒・家庭省」が2018年のシノドス後に設立された国際青年諮問機関(IYAB)のメンバーとして新たに20人を任命したことを発表の新メンバーを任命したとの発表があった。
さらに8日の午前中の全体会議では、今シノドス総会の最終文書の起草委員会の14人のメンバーのうち7人が投票によって選出されたが、投票に先立って、起草委員会のリカルド・バトッキオ事務局長から、「委員会の使命は、最終文書の”物理的”な起草ではなく、作業を監督することにある」と説明された。
またこの全体会議では、言語グループから「この会合の目新しい点」について報告があり、具体的に、「報告者が、キリスト教の入信と、よりシノダル(共働的)的な教会を創る上での関係の重要性、そして必要なシノドス的かつ関係的な改宗を強調した」ことを挙げた。「カリスマと聖職の関係」も強調され、「聖職者の”ナルシズム”を避ける方法、奉献生活の重要な役割、傾聴の聖職、宣教に関連する聖職に関する差別化された識別、文化的および地域的状況」について考察した、という。
*ピレス情報委員会事務局長:公開討論で「教会内のスキャンダルで傷ついた関係の修復、シノダルな教会の歩みに信頼が重要」などの意見
シノドス情報委員会のシーラ・ピレス事務局長からは、公開討論では、18人の講演者がキリスト教の入信をテーマに意見を述べ、そのうちの何人かからは、小グループの報告者がすでに行ったように、改宗を中心に据える必要がある、との発言があった。また、ある講演者は、性的虐待問題を取り上げ、「教会内のスキャンダルによって傷ついた関係を修復する必要性、そしてシノダル(共働的)な教会の歩みを強化するために、信頼が重要性」を強調した。
他の講演者からは、教会を刷新するために助祭職についてより深く研究することの提案や、「神の民の教会論と慈善と宣教の重要性」の指摘があり、ピレス事務局長は「貧しい人々への愛は、聖体から生まれ、福音が教えるように、特に疎外され、拒絶され、時には教会からも排除されていると感じる人々に対して思いやりを持つ必要がある、と強調する意見も出ました」と説明した。
講演者たちからはまた、「世俗化した世界では、キリスト教の入信のプロセスがますます重要になっている。福音の証人となるためには、私たちは預言者にならなければならず、コミュニティ全体を巻き込んだ若い頃からの信仰形成のプロセスが必要」との意見も出た、という。さらに、「今会合では教会の指導者に女性が就くことについて議論する必要がある」との指摘あった。
キリストの愛に関連する赦しもテーマに取り上げられ、講演者たちは「共同体なしには、キリスト教への入信はあり得ない」と繰り返し発言し、「新しく洗礼を受けた人々への寄り添いにのさらなる取り組みを求める意見」も出た。
最後に、ピレス事務局長は、一部の講演者から「シノドス総会の準備要綱は、教会の現実と活動の一部に十分な注意を払っていない。その重要性は認識されるべきだ。シノドス総会の文書も含め、すべての人々が理解できる分かりやすい言葉で書かれるべきだ」との主張がされた、と説明した。
*新枢機卿、イグナス・ベッシ・ドグボ大司教:「私たちは、教会の生き方を変える過程にある」
続いて、新たに枢機卿に指名された3人が発言し、まずコートジボワール・アビジャンのイグナス・ベッシ・ドグボ大司教は、今シノドス総会の主なトピックの1つ「洗礼の秘跡」に焦点を当て、「そのおかげで、私たちはキリストに倣い、神の子、キリストの兄弟として自分たちを認識することができる。私たち一人一人が、今度は他の人の中にイエスの人格と顔を見て、見つけることができるのです」と述べた。
そして、普遍教会で起きていることと、今週のシノドス総会の会合で起きていることを比較し、「互いに耳を傾け合う」こと、会場のパウロ6世ホールで「交わりと共有の並外れた雰囲気」の中で経験された関係の重要性を強調。 「教会を物質的に変えるわけではないことは承知していますが、私たちは近い将来、教会の生き方を変えることになる過程にあります」と述べ、「傾聴する能力は相互認識から生まれ、各人が教会共同体の生活の中で自分の場所を持つことができるのです」と強調した。
*新枢機卿、タルチシオ菊地功・大司教:「”シノドスの道”における共通の基盤の構築」
次に菊地功大司教は、日本の教会の経験に焦点を当て、傾聴についても語った。「私の国では、2回のシノドス会議の間に、真のシノドスの基礎を築きました… 15の教区は全国会議を開催し、司祭、信徒、ボランティア、聖職者がさまざまな活動に参加し、バチカンでも実践している聖霊による対話が強化されました」と述べた。
2023年5月から国際カリタスの総裁を務める菊地大司教は、共通の目標は「”シノドスの道”において共通の基盤を求め、見つけ、構築することです」と語った。
*新枢機卿、ハイメ・スペングラー大司教:「枢機卿に選出された驚き」
続いて、ブラジルのハイメ・スペングラー大司教は、枢機卿に選出された驚きについて語った。
「故カルロ・マリア・マルティーニ枢機卿の『セクエラ・クリスティ』という素晴らし著作を読み終えた頃、携帯電話が鳴り始めました。たくさんのお祝いのメッセージを受け取りましたが、その理由が分からなかった。その後、多くの友人が、教皇が私のことに言及されているので、教皇の正午の祈りの録画を見るように勧めてくれ、その時、(何が起きたのか)理解しました」と語った。
そして、「枢機卿になることは教皇と教会に仕えることを意味すると認識しているので、枢機卿任命は当然、大きな喜びだった。世界、人類、そして教会共同体自体の歴史における、今ような微妙な時期に協力する機会を与えてくれた教皇に感謝します」と述べた。
*シノダリティ(共働性)型の統治に移行する必要
この後、枢機卿に選ばれた3人の大司教は、記者からの質問に答えた。
「シノドスが採用すべき統治スタイル」について尋ねられたシュペングラー大司教は、「民主主義の危機」の影響を受けた世界における問題の「複雑さ」を指摘し、その結果として、「権威の問題」が重要になる、と指摘した。そして、「人は、教師よりも証しをする人に注意深く耳を傾ける。教師に耳を傾けるのは、彼らが証しする人だからです」と語ったパウロ6世教皇の言葉を挙げ、「権威は、『社会学的要因』からではなく、『倫理的、道徳的、宗教的』な証しから生じるもの」と述べた。
これに関連して、菊池大司教は、「ピラミッド型」から「シノダリティ(共働性)型」に移行する必要性を強調したうえで、「これは『コンセンサス』だけによる意思決定に帰結してはならない。私たちは、シノダリティ(共働性)型を同じように理解していることを確認する必要があります… 共通の識別力があっても、最終的な決定を下す人がいるのです」と語った。
世界の3つの異なる地域から新枢機卿に選ばれた3人は、それぞれの教会共同体の特徴を特定するよう求められ、全員が「賜物の交換」というシノドスの理想に従うことに同意した。
菊地大司教は、このことが「以前は西から東へ、先進国から発展途上国へ」起きたが、今ではパラダイムの変化があり、教皇フランシスコが言われた「周辺」が、かつては欧州大陸だった「中心」の不可欠な部分になっている、と述べた。
一方、ベッシ・ドグボ大司教は、アフリカの教区の「精神的な」豊かさを強調し、「信仰が喜びとともに生きる」と述べ、自分が枢機卿に選出されたことを聞いた村の教会共同体の人々が通りに出て、地元のバンドが祝賀のために演奏したことを語った。 「アフリカは、小さなことで幸せになる貧しく謙虚な人々の、この単純な喜びを共有せねばなりません」と語った。
スペングラー大司教は、ラテンアメリカの福音伝道における「ドイツ人、イタリア人、ポーランド人、ウクライナ人、日本人の移民たちの貢献を強調し、彼らはしばしば「騙され」、「苦しんだ」が、「非常に美しい資質、つまり決意」を持っていたことを指摘。
また、アマゾン地域で「ミサが行われずに何か月も、何年も過ぎてしまう先住民の教会共同体のための特別な儀式を創設する可能性について、いくつかの質問に答え、大司教が議長を務めるラテンアメリカ司教会議(CELAM)では、担当のグループ、そのような課題実現の可能性に取り組んでいるが、それと並んで、伝統的なローマの儀式を地元住民の間で”文化化”するという考えもある、と指摘。伝統的な儀式を執り行う先住民の信者の「尊厳」を挙げ、「たとえそれがどんなに厳粛なものであっても、私たち自身のミサでは、もはやその価値を見いだせないことがある」とも述べた。
気候変動と、リオグランデドスル州で最近発生した洪水による甚大な被害についても、記者から質問があった。この洪水は同州史上最悪の自然災害である。2024年には、南米の国で火災が76%増加し、過去14年間で最悪を記録している、とした大司教は、「シノドスが分析したさまざまな課題の中でも、『私たちの共通の家』との関係には大きな注意を払う必要がある。人類の生存に対する単なる脅威を超え、地球を神の創造物と考えると、さらに重要な次元を帯びるものになっている」と指摘した。
*「”既婚司祭”の問題には、神学的側面と時代のしるしを念頭に取り組める」とスペングラー大司教
最後に、スペングラー大司教は、司祭の独身制という「デリケートな」問題について質問を受け、すでに採用されている「終身助祭」制度経験を踏まえて、「おそらく将来、これらの男性は特定の教会共同体の司祭に任命される可能性がある」と語った。そして、今後の道は「分かりませんが、神学的な側面と時代のしるしを念頭に置いて取り組むことが可能です」と結論付けた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)