・米国で6月の地域”シノドス”に向け各教区から報告書ー若者や取り残された人たちに手を広げる必要を確認

 米シンシナティ教区長のデニス・シュナ-大司教

First US diocesan synod results show need to reach youth, marginalized(2022.5.6 Crux  |National Correspondent   John Lavenburg) 

 二ューヨーク発– ”シノドスの道”の歩みを進める米国カトリック司教協議会(USCCB)は6月30日に総会を開くが、それに向けて教区レベルの歩みの報告が寄せられている。

 報告の中で、小教区の司祭、信徒から指摘されているのは、米国社会から取り残された人々にもっと真剣に手を差し伸べること、教会活動の状態をもっと透明にすること、道徳面での教育をもっと着実に行うこと、そして特に、青少年に信仰を取り戻させることの重要性だ。

*シンシナティ大司教区の”歩み”にこれまで1万7000人以上が参加

 4月下旬に報告書を発表したシンシナティ大司教区はオハイオ州西部と南西部の19の郡に210の小教区、約45万人のカトリック教徒がおり、これまでの”歩み”で、”listening session(耳を傾ける集い)”には1万7000人以上が参加した。

 内訳は、男女別では女性が57.73%、出身地域別では欧州系が86.48%を占め、ヒスパニック10.47%、アフリカ1.83%。年齢別では50歳以上が62%で、65歳以上の高齢者が38.38%、24%が19〜34歳だった。

 シンシナティ大司教区では、昨年末から”シノドス・チーム”を設け、識別と祈りのもとに”歩み”を開始。今年初めから4月にかけて、大司教区内の小教区、祈りのグループ、修道会、大学などで集まりをもった。うち2つの集いはスペイン語で行われ、また二つの集いには手話通訳者も参加した。

 チームは、これらの集いの結果を要約する形で報告書にまとめ、デニス・シュナー大司教の承認を得て、USCCBに送付した。

 報告には、大司教区がこれまでに行った”歩み”の内容、参加状況、listening sessionの主な結果などが13ページにわたって書かれており、シノドス担当者は、前書きで「今よりももっと”シノドス(共働)的な教会になろうとする私たちの努力の中で、大司教としては、(司祭や信徒から)表明されるいかなる意見も、賛否の判断をすることなく受け入れ、どのような対応をすべきかを見極めたい」と述べている。

*一般信徒の間には、”シノドスの道”の歩みの効果に疑念を持つ向きもあるが

 Listening sessionは、4つのトピックー①聖霊がおられる所で共に働くグループとしての小教区信徒の経験②教会の使命⓷小教区・教会・共同体社会で聴いてもらえない声④参加と透明性を高めるための大司教区としてのあり方ーを中心に進められ、報告書には、その結果として、これまで聴かれることの無かった17件の”新鮮”な指摘が示されている。

 その一つが、”シノドスの道”の歩みによって「実際に何かが変わるのか」という教区信徒たちの疑念だ。「これまで教会の位階制のもとで、(信徒たちの声を聴き、それを教会運営に反映させる、という) feedbackの欠如、一般信徒との意思疎通の欠如、過去の考えや発想を改めようとする意志の欠如を経験させられてきた」からだ。そうした疑念を消すために、「大司教区における意思決定過程の”トップダウン”を無くす必要がある」としている。

*受刑者、貧困者、高齢者‥. ”片隅”に置かれた人たちが無視されている

  また一般信徒から多く出された指摘は、「教会の”片隅”に置かれた人の声が頻繁に無視されている」というものだった。具体的には、受刑者、貧困者、ホームレス、アルコールなどの中毒患者、高齢者、難民、そして移民などだ。また、手話ができる司祭がいないと、聴覚障害者が告白しにくいこと、視覚障碍者のための点字のミサ典礼パンフレットが整備されていないことなども指摘された。

 また、一般信徒からの提案として、「青少年を、信仰に呼び戻す努力をすることが重要」「親たちが、わが子の信仰の”最初の教師”となることができるように、”育成”する体制が必要」などの意見が出された。

*司祭が本来の仕事に打ち込めるように、教会の管理運営を一般信徒に

 聖職者からも複数の主張があり、 「司祭が、聖職者としての職務に打ち込めるように、教会の管理運営の責任から解放される必要があり、一般信徒にその用意もできている」との声が多かった。また、教皇から小教区の司祭に至るまで、「道徳的な教えでもっと首尾一貫すること」「現在の日常生活と課題にもっと関連したテーマで説教をする熱意をもつこと」が指摘された。

*女性司祭含め女性の地位向上、一般信徒による活動促進なども課題にすべきだ

 さらに、社会正義の問題としての女性の司祭や助祭への叙階、女性の教会の意思決定過程への参加、性的マイノリティの問題への取り組みの努力、一般信徒主導の組織や小教区のグループの活動促進、教会の意思疎通に関わる全ての分野における透明性の向上なども、取り上げられている。また、「ミサやその他の教会行事に来た人たちが、『自分たちは歓迎されている』を思えるような方法を確立する必要がある」という提案もあった。

 報告書は、最後に「大司教区の一般信徒たちは、教会をより良いものとするために上位聖職者を助ける準備ができている」と結論付け、次のように締めくくっている。

*一般信徒には教会に寄与する賜物がまだ多く残っている

 「一般信徒は、教会に寄与できる多くの賜物をまだ活用されずに持っている。”シノドスの道”の歩みは、聖職者と一般信徒が共に力を合わせ、彼らの司祭、予言者、そして王の呼びかけを、さらにしっかりと自分たちのものにすることで、世界中のすべての人に救いのメッセージをさらに広めるためのもの。これまでの集いやこれからの集いから、さらに多くの成果を得ることができる」

・・・・・・・・・・・・・・・・

*教区の”歩み”は6月末の報告締め切りに向けて順調

 シンシナティ大司教区のこのような報告書の内容は、他の教区でこれまでの”シノドスの道”の歩みで示された司祭、信徒たちの声とも共通するものが多いようだ。現時点で見ると、米国のほとんどの教区では、listening sessionを終えている、あるいはその過程にある。 USCCBのシノドス顧問のジュリー・マクストラボグ氏は、Cruxに「6月30日の締め切りに間に合わせるために、ほとんどの教区で”目標”が達成されています」とし、シンシナティ大司教区のほかに、ラファイエット教区(ルイジアナ州)とボーモント教区(テキサス州)も報告書を提出ずみだ。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」(欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年5月8日