・「教会内部の”意見相違”は新しいことではない、健全なものであり得る」と教皇側近でシノドス総括責任者のオロリッシュ枢機卿(Crux)

 オロリッシュ枢機卿は、教皇フランシスコが進める“共働的”教会改革の一環としてのキリスト教内部の関係強化のための教会一致の主要行事について説明する記者会見で、教会内部で様々なテーマについて意見対立がみられることについて、「カトリック教会関係者の間にさまざまな意見があるのはごく普通のこと」とし、「私たちは変化の瞬間、時代の変化の中に生きています。 デジタル化のゼロ年にいます。この新たな世界が台頭する中で、キリストをどのように宣言できるか、共に考えねばならないのです」と強調した。

 現在、教会での多くの議論が、”シノドスの道”の歩みの中で起きているが、枢機卿は「”シノドスの道”そのものは、意見対立の原因ではない」と断言、”シノドスの道”では「 互いに耳を傾けることが求められているが、そうするだけでなく、『神がご自分の民に何を望んでおられるか』を識別するためのものでもある」と指摘した。

 教皇の有力な側近でありながら、性的虐待事件でバチカンの財務担当のトップの座を追われ、1月10日に亡くなったジョージ・ペル枢機卿が最後のエッセイで、「シノドスが”有毒な悪夢”になっている。準備文書は不完全で、教会の使徒的伝統に敵対している」と激しい批判の言葉を残し、教会関係者の間で論議を呼んでいる。

 オロリッシュ枢機卿は「”シノドスの道”の歩みに不平を言う”甲高い声”があるのは認識している。そうした中で、互いの声に耳を傾ける姿勢と識別力だけが、教会の答えになるでしょう」とし、「私たちは共に、主と共に、謙虚に歩まなければなりません。神を心底から信頼し、聖霊を信頼しなければなりません。それが、神の民が謙虚に共に歩むことになる」と答えた。

 さらに「教会内部のことに関心を奪われているキリスト教徒は、『世界で起きていることや与えられた使命には関心がなく、いつも自分のことだけを考えている少数グループ』というイメージを世界の人々に与えている。そのイメージを克服するためにも、”シノドスの道”を歩むことを選びたい」と語った。

 また枢機卿は、現在のカトリック教会内部で起きている”緊張”のほとんどは、「現代世界で、キリストに従い、キリストを宣言する方法を、誰もが率直に知り、共有したりしたい、と希望することから来ている」とし、これまでの”シノドスの道”の教区レベルの歩みや信徒、司祭などの分かち合いの報告を基にした、大陸レベルの歩みのための準備文書で明らかになっているのは「前向きな”緊張”」だ、と述べた。

 そして、カトリック教会をテントにたとえ、「テントを張る場合、ある程度の緊張が必要です。そうしないと、テントが倒れてしまう」としたうえで、「神の言葉に耳を傾け、共に道を歩むことで、緊張が和らぎます。 私たちは教会を破壊する”悪い緊張”を望みませんが、調和を図るために、”良い緊張”が必要な場合もあります」と強調した。

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 オロリッシュ枢機卿がこの会見で発表した、教会一致の行事は、10月4日から29日にかけて「シノドス(共働)的教会のために:交わり、参加、使命」をテーマにバチカンで開く世界代表司教会議(シノドス)第16回総会の第一期の開会に先立つ9月30日に聖ペトロ広場で行う徹夜の祈りが中心。欧州の様々なキリスト教宗派の18 歳から 35 歳の若者が参加する特別プログラムも9 月 29 日から10月1日にかけて予定され、このような行事を通して、キリスト教一致に向けた様々な宗派の信徒が互いに耳を傾け合う、カトリック信徒にとどまらず、全キリスト信徒が共に歩む機会するのが狙いだ。

 また、シノドス総会そのものの目的も、オロリッシュ枢機卿は「教会の”政治”についてではなく、神の霊に耳を傾け、共に前進し、祈ること」と強調。その目的のために、9月30日の教会一の徹夜の祈りに続いて、シノドスに参加する司教たちが10月1日から3日にかけてローマ郊外で3日間の集団黙想を行う、としている。

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 23日の記者会見には、他のキリスト教指導者、代表者が参加した。

 英国国教会のローマ駐在でカンタベリー大司教の個人代表のイアン・アーネスト大司教は、教会一致を追求することの難しさについて、「 私たちは一致について話しますが、それは”均一”になることではない。さまざまな意見を持つ人々に場が与えられるべきであり、彼らの意見を心に留める必要があります」と語ったうえで、”シノドスの道について、「シノドスのプロセスは、協力することの重要性を教えてくれます」と評価した。

 同様に、アルメニア使徒教会のローマ駐在代表のエミネンス カジャグ バルサミアン師も、リーダーシップの最も重要な側面の 1 つは「テーブルの周りの人々を調整に導くこと」であるとし、「福音書に書かれているように、使徒たちの間にも意見の相違がありましたが、行動を共にし、一体感を育て、祈りを通して、聖霊に導かれ、イエス・キリストの真の弟子になることができました。『一致』が鍵です」と述べ、また、謙虚であることの重要性を強調。「謙虚さは弱さのしるしだと考える人もいますが、それは逆です…最も謙虚な人が最も強い」と語った。

 2人を含めて会見に出席したキリスト教の指導者たちは、教皇フランシスコの教会一致への取り組みを高く評価し、「10月のシノドスの開会前夜の徹夜の祈りは、教会一致への取り組みの新しい段階を示している」としている。

 欧州教会会議とフランス・プロテスタント連盟の会長、クリスチャン・クリーガー師は、教皇フランシスコによって始められた”シノドスの道”は、「おそらく何十年にもわたる教会、カトリック教会の歴史を示す非常に重要な瞬間になりつつあります。他の教会にとっては、教会一致の取り組みです」とし、シノドスそのものは、英国国教会はじめ多くのた教会では伝統的に行われており、目新しい物ではないが、「新しいのは、カトリック教会によって組織された”互いに耳を傾け合う”プロセスであること。 現代の信徒たちが抱える問題に対する解決策が得られるように、カトリック教会の”シノドスの道”の歩みが進むように、すべてのキリスト教会が共に祈ることです」と指摘。

 「教会一致の取り組みに”シノドスの道”が必要であるのと同じように、”シノドスの道”の歩みには、教会一致の取り組みが必要です。一致への強い望みは、”シノドスの道”を通じて、さらに深まっていくでしょう」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年1月25日