・ポーランド司教団が”シノドスの道”で報告書「聖職者と信徒の亀裂を埋める努力が緊急に必要」

Poland’s Catholics complain of deep divide between clergy, laity

The Roman Catholic church in Wiejkowo, Poland, Saturday, July 30, 2022. (Credit: AP Photo Monika Scislowska.)

 クラクフ(ポーランド)発= ポーランドの司教団が25日、ポーランドの教会における”シノドスの道”ー教会指導者と一般信徒の意見交換ーをまとめた報告書を発表。「聖職者と一般信徒の間には深い亀裂があり、関係を再構築することが緊急に必要となっている」ことを明確にしている。

 Cruxのインタビューに応じたポーランド教会”シノドスの道”の歩みの責任者、エイドリアン・ガルバス大司教は「これは教会の現状についての報告ではありません。極めて個人的な文書で、教会のイメージを示すもの。そして、イメージは時として、かなり厳しくなります」と説明した。

*「性的虐待問題などで信徒は希望をなくしている」

 同国南部、カトヴィツェ大司教区では、信徒が「教会は、性的虐待問題で動揺し、信徒たちを憤慨させ、傷つけているだけでなく、希望をなくし、変化にショックを受け、信徒たちをいらだたせる存在になっている」と報告している。

 欧州の”東西の壁”を壊す「連帯運動」の発祥の地、グダニスク大司教区では、”シノドスの道”に参加したある信徒が「教会は、”匿名性”で特徴づけられ、信徒たちを“教区民の集合体”と見なしている。信徒たちへの個別の対応を欠いている」と指摘した。

 ガルバス大司教は、厳しい指摘であることを認めながら、「私にとって非常に希望があるのは、我が国の”シノドスの道”に参加した信徒たちが、教会に深く根を下ろしている人たち、教会のことを気にかけている”インサイダー”であることです」と期待を込めた。

*「聖霊に、そして互いに耳を傾け、意見を交わせられれば、”歩み”は成功」

 シレジア大学の哲学教授であり、世界代表司教会議のポーランド代表であるアレクサンデル・バンカ氏は、報告書の発表会見で「シノドスは”業務監査”ではない」と前置きし、「”シノドスの道”の歩みで司祭も信徒も互いに耳を傾け、意見を交換することを学べば、”シノドスの道”の歩みは、それですでに成功している、と言えると思います」と述べた。

 またポーランド司教協議会議長のスタニスワフ・ゴンデツキ大司教も「”シノドスの道”は、何よりも聖霊に耳を傾けることを目的にしています。そうしないとき、私たちは神の民を排除し、誤解し、疎外してしまいます」と語り、報告書発表者たちも同意した。

 

*「”歩み”に参加したのは、1500万人の信徒の一握り」との批判も

 報告書によると、ポーランドの約 10 万人の司祭、信徒が、調査に回答したが、ポーランドの信徒総数は約 1500 万人であることから考えると、「”シノドスの道”に参加したのは、活発に活動している一握りの信徒だけ」と見る関係者もいる。

 「そのような参加者の数字は、私たちがまだやらねばならないことがどれほど多いかを示しているのです」と語るのは、クラクフのワールド・ユース・デーの元スポークスパーソンで、現在はバチカンの「命・信徒・家庭省」で働くドロタ・アブデルムーラ氏。「”シノドスの道”(の実施者)は、信者に多くの”資源”と”時間”を求めなかった。周りの現実に気を配ることだけを求めたのです」とポーランドのメディアに書いている。

 ポーランドでは、35 の教区が公式に”シノドスの道”の歩みをまとめ、文書として発表したが、 3 つの教区は新聞発表文を出しただけ、4 つの教区は司教協議会に関係資料も出さなかった。

*「信徒の教会、司祭への厳しい意見は”愛の批判”」と担当大司教

 教会の活動に関する意見で多いのは、「司祭の説教が”抽象的な教会用語”でされたり、その質が非常に低いこと」だが、ガルバス大司教は、ポーランドの教区レベルの”シノドスの道”の歩みで信徒から出されるこうした批判の声は「”愛の批判”です」とし、「批判する信徒は教会を”蹴りたい”とは思っていない。批判の根底にあるのは”教会への愛”です」と説明。

 バンカ氏 は「”シノドスの道”に参加した人たちは、教会に求められている変化を実践する用意ができている。すべての教区のキーワードは『関係』。教会を変える可能性は非常に大きく、私たちはそれに応えなければなりません」と強調した。

 

*「聖職者の性的虐待スキャンダルが教会離れを加速、『宣教する教会』の基本に戻らねば

 欧州最大のカトリック・ コミュニティの 一つであるポーランドの教会は、このところ、聖職者による性的虐待問題で激震を繰り返している。最近のある世論調査によると、ポーランドにおける信徒の教会離れの最も一般的な理由は、教会 と聖職者の在り方に対する不満だ。教会を去った人の 7% はその理由を「教会と司祭への信頼の欠如にある」とし、5% は「性的虐待のスキャンダル」を挙げている。

 この報告書で、もう一つ頻繁に指摘されているのは、ポーランドの信徒たちが「聖職者の『世俗的な生き方』に傷ついている」ということだ。「そうした聖職者たちは、物質的なものに執着し、”行動主義”に陥り、霊性と使徒職を忘れている」とある教区の報告は指摘している。「ポーランドの教会は、あまりにも頻繁に”政治的なカード”を使っている」との不満も出されている。

 このような報告書で出された信徒たちの意見を受けて、ガルバス大司教は、「司祭たちは、この報告書を心して読んでもらいたい… 私たちが忘れているのは、教会が『宣教する教会』だということです。現代社会、日々のニュースの渦に飲み込まれ、『互いにキリストを分かち合う』という教会の基本的な使命を忘れています」とCruxに語った.

 そして、ポーランドの教会は、この”シノドスの道”の国レベルのまとめをもとに行動するのに「来年秋の世界代表司教会議の閉幕を待つ必要はない… 行動する時は今です。今すぐに始めねばなりません」と言明している。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

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2022年8月28日