( 2022.6.17 La Croix Malo Tresca | France)
フランスの司教協議会(CEF)は14,15両日、リヨン・カトリック大学で、一般信徒や修道会代表も参加した臨時総会を開き、これまで各教区の”シノドスの道”の歩みで信徒たちから出された声をまとめた報告案について検討を加え、これをもとにしたCEFの見解を盛り込んだ添付文書とともに承認、バチカンのシノドス事務局に送付することを決めた。
フランスの教会の”シノドスの道”の取り組みは、昨年10月から小教区レベルから始まり、教区レベルで信徒たちの声を集約するまでに、15万人以上の信徒が参加した。これらの人々の声をもとにした添付文書では、今後取り組むべき優先事項として、次の5つを挙げている。
①秘跡とともにある教会の人間的側面をもっと明確に語ること②教会における女性たちの苦しみと期待に関する叫びを聴き入れること⓷司祭と司祭たちが果たしている聖職の状況に対して表明された懸念に耳を傾ける④司祭たちに期待されていることと実際にしていることに明白な差があるのを理解すること⑤ミサ典礼がなぜ、繰り返し相矛盾する場に留まっているのか、その理由をより的確に特定すること。
また、これまでの”シノドスの道”の反省として、「多様な神の子たちのすべてが共に歩むに至っていないこと」を挙げ、特に伝統的な考え方に固執する司祭、信徒や若者たちの参加が少ないことを指摘。
その一方で、「シノダリティ(共働性)が教会活動のスタイルになり、教会共同体が”最も小さい人々、貧しい人々”の足跡をたどって歩く”ことを学び、教会の使命、カリスマ、そして賜物の多様性、相補性が”競争”でなく”喜び”の源になることへの、多くの希望が出てきている」という前向きの評価もしている。
このほか添付文書が、信徒たちの声をまとめた報告書について指摘しているのは、教会の使命、主要な社会的な問題、環境と国際連帯の問題におけるキリスト教徒の証しなどの課題に言及していないことだ。「友愛について学ぶ場としての家庭については言及されていない… キリスト教徒の霊的豊かさー秘跡、奉献生活、司祭の独身制、助祭職などが、しばしば無視され、あるいは軽視されています」と添付文書では述べている。
ともあれ、この添付文書は、臨時総会でいくつかの修正を経て、投票権を持つ司祭たちのほぼ満場一致で承認され、招待された信徒代表たちの賛成の意思表示を得た。だが、これにいたるまでには、舞台裏で大きな転換があった。ある関係筋によると、もともとの案では、添付文書ではなく、報告書そのものにすることが意図されていた。
だが、それは、二日間の臨時総会の初日午後の、司教たちと信徒や修道会代表との非公式協議で、明確な拒否を受け、『”シノドスの道”出の信徒の声をまとめた報告書』と『司教たちがまとめる添付文書』の二本立てで、バチカンに送付することが事実上決められた。
「このことは、報告書への強い支持を際立たせるのに役立ちました」と関係筋は指摘する。報告書は「神の御言葉の中に私たちの強さを見い出すことの重要さ」「社会に語り掛ける信頼できるしるしを提示することの緊急性」「兄弟姉妹的な対話の場の必要性」を主題とする形で、各教区から出された報告をもとにまとめられた。
フランスの教会の現状を明確にしたうえで、社会の周辺部にいる人々に目を向けた「より兄弟的な」教会となるための、改革のあり方を提示しており、具体的に、教区レベルの統治における、”真の対抗力”をもった一般信徒の貢献の場の増強、教会組織における女性の役割の強化、非キリスト教徒との対話のための”第三の場”の設置などが要請されている。
「このような報告書の内容に比べると、司教団がまとめようとしていた文書は、私たちにとって、とても不十分な内容でした。ですから、司教たちとの非公式協議で、私たちをそのように言い、彼らは聴き入れてくれました」と協議に参加したある女性信徒はLaCroixに語った。
これまでの”シノドスの道”の歩みでは、「不都合な声は取り除かれてしまうのではないか」「”検閲”されるのではないか」との懸念が信徒たちなどから表明された。「実際、司教団が当初まとめた文書は、内容的に見劣りがし、あらゆるレベルにおいて、多くの不満が出されました」と取りまとめに当たったある司教は認め、「バチカンは、この不十分な文書しか読んで切れないのではないか、心配がありました」とフランス北西部の教区から参加したある信徒は述べた。
14日午後行われた司教たちと一般信徒代表などの非公式協議では、そうした批判を背景に、深夜まで行われ、それを踏まえて司教団の常設委員会が、最終原案をまとめ、15日朝の司教団の話し合いで、手直しがなされ、全体会議に提案され、信徒たちの声をもとにした報告書と、それを踏まえた司教団の添付文書として承認にこぎつけた。
「私たちは、極めて短時間に、自分自身に問い直し、協調する能力を示すことができました」とある司教は言い、また別の大司教は、「この報告書のとりまとめは、私たち”同僚性”を高めることになった。なぜなら、私たちが、現場の人たちの声を聴くことから始めたからです」と述べた。
また、ある信徒は、こう語っている。「フランスの教会における性的虐待に関する報告との危機の文脈から見て、私たちは、この”シノドスの道”で示されたシノダリティ(共働性)は、聖職者主義の”解毒剤”だということを認識すべきです…そして、私たちの教会に挑戦する反対の証明と権力の乱用を避けることを、私たちに可能にします」。