・バチカンがドイツの教会に警告「ドイツの“シノドスの道”には教義を変える力はない」（Crux）

(2022.7.21 Crux Senior Correspondent Elise Ann Allen)

　声明は、「神の民の自由と司教職の執行を守るために、ドイツの”シノドスの道”の取り組みには、司教たちと信徒に対して新たな統治の仕方とと教義と諸道徳への新たな対応をする義務を負わせる力がないことを明記する必要があると思われる」と述べ、「普遍的な教会のレベルで合意に達する前に、教会の交わりを傷つけ、一致への脅威となるであろう新たな公的な仕組み、あるいは教義を教区で始めることは、合法とはならないだろう」との判断を示している。

　ドイツのカトリック教会では先に、過去60年の間に数千件に及ぶ聖職者による性的虐待が公的な調査で明らかにされ、教会に対する信徒だけでなく国民の信頼が大きく失墜し、信徒の教会離れが加速している。

　このような危機にある教会を活性化し、信頼を回復するための”シノドスの道”の歩みの一環として、同国の司教団は、一般信徒に教会運営への積極的な役割を担わせる方針を打ち出している。

　一般信徒と司教たちが同等に参加する一連の”シノドスの道”の大規模会合では、女性の司祭叙階や同性のカップルに司祭が祝別を与えることなどを支持する主張が高まり、大きな物議を醸している。会合によっては、聖職者への独身の義務付けをやめ、結婚を認めることに賛成票を投じるケースも、「同性結婚は罪深いものではない」と宣言するケースもあり、司教選任における一般信徒の強い発言権を求める声も出ている。

　2200万人の信徒を擁し、ドイツ固有の教会税制とによって豊富な財力が保証されているドイツのカトリック教会は、世界のカトリック教会の中でも大きな影響力をもつものの、聖職者による性的虐待の広範囲かつ多数の醜聞が明らかになったことで、信徒の教会離れに拍車がかかるなど、深刻な危機に陥り、危機克服、信頼回復のため、さまざまな抜本改革を模索しているのが実情だ。

　ドイツ司教協議会のゲオルク・ベツィング会長はこのほど、同性カップルの祝別式の是非や女性の司祭、あるいは助祭への叙階の是非について、これまでの”シノドスの道”の歩みの中でて非常に異なる意見があったことを認めた。また同国のカトリック通信社KNAは、ドイツの司教団は、小教区レベル、教区レベル、そして国レベルと三段階にわたって進めてきた”シノドスの道”の歩みの中で出された提案に基づく教会改革案を2023年秋に予定する世界代表司教会議に提出する、と発表している。

　教皇はすでに2019年6月に、ドイツのカトリック教会あてに書簡を送り、ドイツ教会が分裂の火に油を注がないよう求め、「”シノドスの道”は、忍耐をもって、聖霊の導きのもとに歩まねばなりません。成果を上げるのを急いではなりません。嘘と分裂の父、分離の達人の誘いに乗れば、神の民の聖なる忠実な体（教会）はバラバラになってしまいます」と警告していた。

ツイート