・ドイツの教会指導者たち”シノドスの道”めぐるバチカンの警告に”驚き”、正式な場で話し合い求める(Crux)

(2022.7.22 Crux  Senior Correspondent  Elise Ann Allen

‎ローマ発 – バチカンから「ドイツのカトリック教会の”シノドスの道”の歩みは分裂をあおる」と警告を受けたのに対して、ドイツの教会指導者たちは、”驚き”を表明。一方的な警告ではなく、正式な場で指摘された問題を話し合うことを希望する、と述べている。‎

‎ バチカンは21日の声明で、「ドイツの教会の”シノドスの道”の歩みは、普遍教会の一致に対する脅威」と批判し、ドイツの司教たちには「カトリックの教義や道徳の変更を信徒たちに強制する権限はない。合法的行為ではない」と言明。「普遍教会のレベルで合意に達する前に、新しい仕組み、あるいは教義を教区で始めることは、教会の交わりに傷を与え、一致を脅かすことになる」としていた。

 ドイツ教会側は、”シノドスの道”の責任者であるドイツカトリック信徒中央委員会のイルメ・シュッテル=カルプ委員長と、ドイツ司教協議会のゲオルク・ベッツィング会長(リンブルグ司教)が21日に発表した声明で、「バチカンの声明は、私たちにとって驚きを与えるもの」と述べた。

 そして、”シノドスの道”のために2019年に作られた委員会は「ローマの関係機関と直接的な意思疎通を図る方法を見出す努力を続けてきた。それが、物事を明確にするための場だと確信していたからだ。だが、残念なことに、シノドス委員会がそうした意思疎通を図るための意見交換に招かれたことは、今に至っても実現していない」と指摘。さらに今回のバチカンの声明が事前連絡なしに一方的に発表されたことは「カトリック教会内の意思疎通の良いモデルとは言い難い」とし、声明に発出者の署名がないことにも異議を唱えた。

 ドイツのカトリック教会では、2018年に、司教団が第三者の専門家に委託した調査で、過去60年にわたって聖職者による未成年信徒などへの性的虐待が数千件に上ることが明らかにされて、教会と聖職者に対する信頼が大きく揺らいでおり、動揺を鎮め、教会内外に対する信頼回復が急務。

 そのための重要な取り組みとして、教皇フランシスコが提唱する前から、司教、司祭、修道者、一般信徒全員参加の”シノドスの道”の歩みを始め、教会運営における一般信徒の役割強化などで成果を上げている。だが、同時に、この歩みの中で、有力な聖職者、一般信徒の中から、女性の司祭叙階や同性カップルに対する司祭による祝福などを実現すべきだ、との声が上がり、報告書取りまとめの段階での採決で、司祭に独身制の義務をなくし結婚を認めること、同性婚は罪深いものでないと認めること、などを支持する票も入れられた。

 ベッツィング会長はこれまで、こうした問題について司教、司祭、修道者、一般信徒の間で意見が分かれていることを認め、小教区レベル、教区レベル、そして全ドイツ・レベルへと進む”シノドスの道”の歩みのとりまとめとして、この過程で提案された内容を、来年10月の世界代表司教会議の準備を担当するバチカンのシノドス事務局に伝えることを約束した、と伝えられている。

 ベッツィング会長とシュッテル=カルプ委員長は声明で、バチカンが、世界レベルで”シノドスの道”の歩みを始める以前から、ドイツの教会が取り組みを始めていたことを強調している点を評価するとともに、ドイツの教会の”シノドスの道”の歩みの過程で決議された内容には「各教区に対する法的拘束力がない。司教協議会および各司教が、それぞれの権限の範囲で教導職を執行することについて、影響を受けることもない」とした。

 そのうえで、「普遍教会に影響を与えるテーマに関連する決議は、”シノドスの道”の歩みのおける結果として、バチカンの事務局の報告する」とし、「ドイツの教会が”特別な道”を歩むことはないが、従来の慣行、規則を変更する必要がある、と私たちが信じる内容は、報告で明確にするのが、私たちの義務。私たちが提起する課題と問いかけは、ドイツに限らず、世界中で共通していると感じている」と述べた。

 さらに、「教皇フランシスコが提唱された3年にわたる”シノドスの道”の歩みに、ドイツの教会は積極的に参加を続けており、そこから得られた経験と成果をもって、世界の教会の歩みに貢献するつもりだ。私たちは常に、活動を通じてこの歩みに積極的に加われるよう努力してきた。そのことが、互いの豊かさにつながる、と確信している」とし、「(”シノドスの道”の当面の終着点となる)来年10月の世界代表司教会議は、バチカンが懸念するテーマを議論する場になるだろう」と見通しを語った。

 そして、「私たちは、バチカンの可能な限り多くの関係部局と、できる限り早く意見交換することに関心があることを強調したい」と訴えている。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年7月24日