(2022.10.5 Crux Cindy Wooden Catholic News Service)
ドイツのカトリック教会は、教皇フランシスコが世界の教会に”シノドスの道”を提唱するより前、2019年に独自で”シノドスの道”の歩みを始めている。
ドイツでは多数の聖職者による性的虐待が大きな問題となり、信徒の教会離れが加速するなど、深刻な事態が続いており、調査報告が出されたのをもとに、ドイツ司教協議会とドイツ カトリック中央委員会が、司教、司祭、修道者、一般信徒の参加による”シノドスの道”で、教会再建、信頼回復に取り組むことになったものだ。
これまでの全国の小教区、教区レベルの意見交換、それをもとにした4回にわたる”シノドスの道”の全国会議の中間まとめで、性的虐待とその隠蔽の「体系的な原因」の究明と具体的対応、教会における権力の行使の在り方、聖職者の在り方、教会における女性の役割などが、今後取り組むべき主要課題に絞られてきた。
*教会の信頼喪失、教会を去る信徒の増大
クロイター・キルヒホフ教授は、「性的虐待は被害者に際限のない苦しみをもたらし、教会は無限の信頼を失いました」と述べ、ドイツのカトリック教会では、2021年の公式統計で約36万人の信徒が教会を去ったが、2022年にはその数はさらに増えるでしょう」と述べ、「唯一の解決策は、性的虐待の”体系的な原因”に対処することです」と言明した。
ドイツの司教団は11月14日から19日までバチカンを定期訪問し、教皇フランシスコに会見する予定で、”シノドスの道”に関して出ている問題や疑問が主要なテーマになると予想されている。.
クロイター・キルヒホフ教授は、「”シノドスの道”の歩みは、ドイツだけで行われている歩みでないことに注意する必要があります。来年秋の世界代表司教 会議に向けて、世界的な様々な大きな変化に共通の懸念と希望を持つ、世界の教会が祈り、話し合い、識別を進めるものだからです」とも述べた。
ドイツの教会の”シノドスの道”でこれまで開かれた全国会議では、これまでに、これまでの歩みの成果の原案をまとめ、修正を経て、9月の4回目の会議で承認された内容には、独カトリック通信社KNAによると、「女性とトランスジェンダーの人々の教会における立場」「同性愛者の司祭」「ドイツのカトリック教会の指導体制」などがテーマとされている。ただし、教会の教義の変更に関わるものは、教皇に対する提案として策定されたものであり、ドイツの教会が独自に協議を変更することは意図していない、と説明されている。
*性倫理への新たな対応の提案、司教たちの3分の2の賛成得られず
教会としての正式文書となるには、全司教の3分の2の同意が必要だが、教会による性的倫理への新しいアプローチを求める文書案の箇所は、司教、司祭、修道者、そして一般信徒代表が参加する全国会議の前の投票で、全司教の 3 分の 2 の同意を得られなかった。
司教たちの3分の2の賛成票が得られず、正式文書からこの箇所が削除されることになったことについて、クロイター・キルヒホフ教授は、「”シノドスの道”そのものが失敗寸前となりました。それは、司教たちの 61% が賛成するにとどまったからではなく、反対票を投じた司教たちのほとんどが、事前の議論の過程も含めて、その理由を明らかにしなかったからです」と指摘。
そして、このような結果から、「司教たちが”神の民”に背を向けたり、”神の民”が司教たちと共にいなかったりすれば、教会が苦しむことになるのを学びました」と述べた教授は、「シノドス的な教会は、共通の信仰の場、互いに耳を傾け、共に識別し、共通の決定を下す場です… カトリック教会は階層的な組織であり、司教は正当に認められた特別な責任を負っていますが、孤立して活動することはできません」と強調。
だが、司教たちの賛否投票が議論を呼んだあとの、9月の全国会議で、「司教たちが声を上げるようになると、”共働性”はこれまでよりも、うまく機能しました」とも語った。
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
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