・「ドイツの教会”シノドスの道”が抱える大きな課題」女性リーダーが語る(Crux)

(2022.10.5 Crux  Cindy Wooden  Catholic News Service) 

 

 ドイツの教会の”シノドスの道”でこれまで開かれた全国会議では、これまでに、これまでの歩みの成果の原案をまとめ、修正を経て、9月の4回目の会議で承認された内容には、独カトリック通信社KNAによると、「女性とトランスジェンダーの人々の教会における立場」「同性愛者の司祭」「ドイツのカトリック教会の指導体制」などがテーマとされている。ただし、教会の教義の変更に関わるものは、教皇に対する提案として策定されたものであり、ドイツの教会が独自に協議を変更することは意図していない、と説明されている。

*性倫理への新たな対応の提案、司教たちの3分の2の賛成得られず

 教会としての正式文書となるには、全司教の3分の2の同意が必要だが、教会による性的倫理への新しいアプローチを求める文書案の箇所は、司教、司祭、修道者、そして一般信徒代表が参加する全国会議の前の投票で、全司教の 3 分の 2 の同意を得られなかった。

 司教たちの3分の2の賛成票が得られず、正式文書からこの箇所が削除されることになったことについて、クロイター・キルヒホフ教授は、「”シノドスの道”そのものが失敗寸前となりました。それは、司教たちの 61% が賛成するにとどまったからではなく、反対票を投じた司教たちのほとんどが、事前の議論の過程も含めて、その理由を明らかにしなかったからです」と指摘。

 そして、このような結果から、「司教たちが”神の民”に背を向けたり、”神の民”が司教たちと共にいなかったりすれば、教会が苦しむことになるのを学びました」と述べた教授は、「シノドス的な教会は、共通の信仰の場、互いに耳を傾け、共に識別し、共通の決定を下す場です… カトリック教会は階層的な組織であり、司教は正当に認められた特別な責任を負っていますが、孤立して活動することはできません」と強調。

 だが、司教たちの賛否投票が議論を呼んだあとの、9月の全国会議で、「司教たちが声を上げるようになると、”共働性”はこれまでよりも、うまく機能しました」とも語った。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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(「カトリック・あい」)

 ドイツのカトリック教徒の数は約2200万人で全人口の4分の1を占めているが、教会離れが急速に進んでおり、2006年の離脱者8万人強から2008年に12万人、2021年には36万人と大幅に増加。教会に在籍する信徒も日曜のミサに出る割合は1割と切っていると言われる。教会離れの理由は「聖職者による性的虐待」のほか、「司教の態度が威圧的」「教会が民主的でない」「女性が差別されている」などが指摘されている。

 こうした教会離れの加速に対する危機感の高まり、真剣な取り組みが、ドイツの少なくない教会指導者たちにこれまで見られなかった背景に、国が教会に代わって徴収してくれる「教会税」制度がもたらす潤沢な教会財政がある、との見方もある。

 住民票の記載事項に宗教があり、「キリスト教」と申告すれば、自動的に所得税の約1割相当の教会税が課税され、国の”代行徴収”によって、教会は労せずに収入を得られる、というわけだ。日本のように信徒の”少子高齢化”で教会維持費の確保に苦労することもない。ドイツのカトリック教会に入る教会税収入は日本円にして年間約7000億円にものぼり、世界のカトリック教会の中で最も財政的に豊かな教会とされている。

 教会が信頼を失い、多くの離脱者が毎年出ている理由の一つに「このような教会のために税金を払いたくない」という意識の高まりがある、との指摘もあるが、信徒の絶対数の多さから、財政基盤が揺らぐ事態には至っていない。資金が潤沢で、”経営者”の危機感も高まらない、そこのドイツの教会の根本的な問題がある、とも言えるようだ。

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2022年10月7日