・”シノドスの道”の歩み開始ー米国の中小教区は「もっと”時間”が欲しい」と(Crux)

(2021.10.16 Crux  National Correspondent  John Lavenburg) 

 ニューヨーク発—教皇フランシスコの10日の開始ミサ司式で2年にわたる”シノドスの道”の歩みが始まったが、テキサス州ラレド教区のジェームズ・タマヨ司教は11日になっても、教区でこの歩みを進める担当者を決められずにいた。

 教区として、歩みへの意欲は十分あるが、担当者を”自発的に”決めるのが難しいのだという。タマヨ司教は「私たちの教区のような中小の教区では、自発的な担当者を見つけるのは難しい。その理由は、資金、それと時間を割くことのできる人の確保の問題です。無償で教会での活動や地域社会での活動にすでに参加している人に、さらに無償で”シノドスの道”の推進に時間を割け、と言えるでしょうか」と語った。

 Cruxは今週、米国のラレド教区のような中小規模の教区の責任者と接触し、”シノドスの道”への取り組みを聞いた。教区で担当者を選べなかったのはラレド教区だけだったが、他の中小教区も取り組みに難渋している。信徒数のわりに担当地域が広く、点在した司祭、信徒との意思疎通を図るのは容易でない、特に”非カトリック地域”に居る信徒とは難しい、などの問題を抱えているのだ。

 全米司教協議会(USCCB)の正義と平和・人間開発委員会のリチャード・コル委員長は、”シノドスの道”を歩む上で、物理的、財政的な問題が中小教区で起きる可能性を認めたうえで、そうした問題を克服するために、教区が援助を受けられるようにすることを検討している、と述べ、「時間が問題です。バチカンのシノドス事務局から準備文書が出されたのが先月。私たちの取り組みはまだ初期段階にあります。具体的な支援策を立てようとしているのですが、バチカンの事務局からも、こうした問題に対処するための追加情報が示されることを期待しています」と語った。

 また、すでに実施している対策として、教区レベルの”シノドスの道”の歩みを円滑にするための指針をまとめ、18日までにWebのサイトを開設し、歩みを進めるための資料の提供や、質問への対応を始める、という。教区レベルの対応は、当然、それぞれに地域の事情などによって異なって来るが、一般的には、司祭、信徒の声を聴く場を設け、教区の事務局やソーシャルメディアを活用して、小教区や様々な教会共同体の声をまとめ、それをもとに、教区としての考えをまとめる、ということになる。

 だが、「時間」は全米の各教区にとっても課題だ。教区レベルの”シノドスの道”の歩みを始めるのは17日の主日のミサから、あと一日しかない。まだ、歩みをどのように進めるか具体的な計画はまとまっていない。ラレド教区のタマヨ司教は「USCCBを通じて教皇に私たちの声を送りたい。だから、シノドスへの取り組みは諦めないが、他の教区ほど早くは始められないかも知れません」と述べた。

 ジャクソン区教区のコパックス司教は、2人の担当者を決めて「チームを結成する途中」と言う。

 ケンタッキー州レキシントン教区のジョン・ストウ司教は「出発点として17日の日曜日を位置付けているが、信徒の大半は「シノダリティ、を良く知らないので、この歩みをどうしていくか皆に知れ渡るために時間がかかる」と語る。全米の各教区と共に、17日に”シノドスの道”の歩みを開始するミサを捧げ、バーベキューの食事会と、「シノダリティ」の意味などについて、簡単な意見の交換をし、歩みの進め方について信徒たちから質問や提案を受けられるようにするという。

 USCCBのコル委員長は、「(注:来年の3月までに教区としての意見をまとめる、というバチカンの事務局から示された)現在のスケジュールを守るために、可能な限り速やかに、しっかりと対応する必要があります」と語る。「教区は事前に計画を立て、予算を割り当て、担当者など人材をそろえる必要があるので、私たちも急がねばなりません」としつつ、 「確かに定められたスケジュールを尊重しますが、時間に余裕がもらえればありがたい」とバチカンのシノドス事務局に、教区レベルの意見取りまとめ期間の延長を希望していることを示唆した。

 このような「時間」の問題と共に、司教たちが”シノドスの道”を歩む上で懸念しているのは、「米国社会の二極化現象が与える影響」だ。

 コパックス司教は「キリストの精神と心から答えを得る方法として、対話と、聖書をもとに問いを投げかけることを計画している」と言う。「癒しを必要としている、祝福を必要としている、力を必要としている、と人々が大っぴらに語る場を考えているのです。”二極化”の観点から見て、出来る限り”論争”を起こさないようにすることを望んでいます」。

 すべきことは残っており、予期しない課題が待ち受けている。

 それでも、司教たちは、これまで経験したことのない新しい道を先導することについて楽観している。「この歩みが、私たちが教会にもっと積極的に関わっているのだ、と感じさせてくれることを願っています」とタマヨ司教は期待を述べた。「私の意見、心配、夢、そして展望を聞いた、と人々が言うところから、人々が教会から必要としていると言うことについて必ずしも同意しない人たちの声を聴くところから、私たちは歩み始める。そして、私たちは共に、隣人としてお互いを見始めるのです」。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年10月16日