・「性的虐待、旧ラテン典礼、司教たちの不一致…癒されない傷」-米国司教団、”シノドスの道”で教区レベルの歩みまとめる(Crux)

 USCCBの報告書の第一章は「癒されない傷」で、各教区からの歩みの報告を「癒しへの深い渇望と、霊的交わり、教会共同体への帰属意識と団結感をもつことへの強い願望を明らかにしたもの」と要約。具体的には、聖職者による性的虐待が教会にもたらし続けている危機を「米国の神の民を苦しめる癒されない傷の中で、最も重いものとなっている」としている。

 そして、「性的虐待の罪と犯罪は、教会の位階制秩序と道徳面での完璧さへの信頼を大きく損なっただけでなく、人々が互いに関係を結ぶのを妨げ、切望する帰属感、絆の感覚をもつことを妨げる”恐怖の文化”を作り出した」と指摘。

 米国の教会が負っている「癒されない傷」はこの他にも、新型コロナウイルスの大感染の影響が長期にわたって教会共同体の活動に影響、教区民の間で時として、敵対的な意識を持つことにもつながっている旧ラテン典礼をめぐる分裂などが挙げられている。

 一方で、これまでの教区レベルの”シノドスの道”の歩みで、多くの参加者から寄せられた希望は、米国のカトリック教会が「神の民すべてが、共に歩むことのできる、開かれた教会となること」で、具体的には性同一障害の信徒、離婚した信徒、そして女性信徒を、前向きに受け入れることを求め、「より開かれた教会になるためには性同一障害の兄弟姉妹と共に歩む方法について、教会全体で継続的な識別をしていく必要がある」と報告書は述べている。

 また、離婚した信徒たちが「自分たちは教会で歓迎されていない」と感じることが少なくないことから、そのようなことをなくすような透明で明確な手続きを求める声もある。女性の教会活動における役割については、一般信徒と聖職者の両方に「より強いリーダーシップ、識別力、意思決定の役割を与えてもらいたい」との希望の表明があった。

 特別な配慮が必要な人々とその家族がミサに参加しやするする努力、多様な文化的・民族的なグループを積極的に受け入れる努力の必要や、若者たちの教会離れに対する取り組みの必要にも言及されている。

  また報告書では、信徒たちから、信徒と聖職者の共同責任の重要さが指摘され、教区、小教区によっては、「聖職者主義」の文化が根強く、教会活動への「信徒たちの参加と協力」が妨げられている、としている。そして、司教、司祭、その他の聖職者と一般信徒との良好なコミュニケーションの重要性も強調された。ほとんどすべての教区での”シノドスの道”の歩みを通じて、「明確、簡潔で一貫したコミュニケーションが、教会活動に適切な透明性を確保する鍵」であることが明らかにされたことから、「教会が”シノドスの道”を歩み続けようとするなら、明確、透明で一貫したコミュニケーションがなされることが極めて重要となる」と報告書は述べている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年9月22日