・「司祭は”シノドス(共働)“的教会で信徒と共に働く”僕”」仏南部の教会主任司祭(LaCroix)

Parish missions: the seeds of a synodal Church

(2022.2.5  LaCroix  Le Priol | France)

 Jean-Luc Gebelin神父は、南フランス・ニーム教区の広い農村地域を担当する小教区の主任司祭だ。LaCroixの取材に、どのように小教区の司牧者としての使命を果たしているかについて語った。その内容は以下の通り。

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LaCroix:あなたの小教区は20以上の町や村に及んでいます。このように広い農村地域でどのようにして、司牧者としての使命を果たしていますか?

Jean-Luc Gebelin:私が担当する小教区の町と町の距離は40キロもあります。教会活動を進める上での主たる障害は、信徒の断片化、分散です。信徒であることがもはや当然ではなくなった社会で、キリスト教徒が信仰を生きるためには、共に集う必要があります。そうした問題意識が、”巡回派遣”の出発点となりました。 ニームの元司教、Jean Cadilhac師が、ラザリスト会(ヴィンセンシオの宣教会の通称)の協力を得て1980年代から始めたこの取り組みは、村々の信徒たちに強力な働きかけとなり、信徒たちを結びつけました。私自身も、1990年から、新型コロナの大感染が深刻化する直前の2020年まで、さまざまな小教区への派遣に参加しました。

LaCroix:ラザリスト会の協力は今はどうなっていますか?

Jean-Luc Gebelin:残念ながら、現在は、ラザリスト会の後継者不足で、協力は停止しています。以前は、数人のラザリスト会の宣教師のチームが来て、 2つから4つの村を担当してくれていました。おかげで、信徒の間に絆が生まれ、ラザリスト会の人々が去った後も、私たち教区司祭と信徒は、「続けなければいけない」と自分たちに言い聞かせ、続ける努力をしています。私たちの村では、これまで15年ほど、信徒と一緒に毎年、催しを開いて来ました。いずれにしても、私たちはラザリスト会とその宣教の仕方から、たくさんのことを学びました。ですから、彼らがいなくなった後も、広い地域の町や村への巡回を続けることが出来たのです。

 

LaCroix:具体的にどのようなことされているのですか。得たものは?

Jean-Luc Gebelin:まず個別の町や村で行う催しを企画し、参加してもらうために、ボランティアのチームを作って、その町や村の全ての家を訪問し、招待状を届けました。招待状には、クリスマスなどのお祝い、聖書物語、ハイキングなど催しの内容の説明を入れます。これまで、知らない人の家に出掛けて、ドアを開けてもらい、催しえの誘いをするなどという経験は、私自身にもなかったので、なれるまで容易ではなかった。でも、ほとんどの方に、招待は好意的に受け入れられ、とても関心を持ってくれたことに、感動しました。こうした経験は、おそらく私たちカトリック教徒の多くが、見逃していることではないでしょうか。

 

LaCroix:主任司祭のあなたと、信徒、そして以前はラザリスト会の人々と、どのような形で協力が行われているのですか?

Jean-Luc Gebelin:どういう活動をするか、宣伝ポスターのデザインはどうするか、町や村の役場庁舎の会場の予約はどうするか、招待状に入れる祈りはどうするかーなど、私たちそれぞれが得意な分野を受け持つ形で進めます。これまでの催しでは、最も多い時は、40人が参加してくれました。あとで、その祈りを読み返し、答えが得られているのが分かって、喜びを感じました。

 

LaCroix:そうした活動の成果にはどのようなものがあるでしょう?

Jean-Luc Gebelin:私たちの小教区はまだまだ脆弱で、日曜のミサに来る信徒の数もそれほど多くありません。しかし、私たちが今日も小教区に留まっていられるのは、こうした活動のお陰だと、確信しています。「参加するキリスト教徒」。私たちは、共に何かをするのが可能であることを経験しました。それが成果の一つです。私たちは社会と教会を変容させる”資源”をもっていますが、それが十分に活用されていません。私たちの前には素晴らしい未来があるのです。もう一つ成果をあげるとすれば、ニーム教区に展開し、神の言葉の周りに人々が集まることを可能にする”福音の家”です。

 

LaCroix:なぜ、司祭と一般信徒との協力が福音宣教の使命を果たす力の中心になる、と思うのですか?

Jean-Luc Gebelin:それは、一人では使命が果たせないからです。福音宣教は、”集合的な働き”です。福音書では、イエスは、単数形ではなく複数形で使徒たちに語りかけることが多い。そして、イエスは使徒たちに、「私の父」ではなく「私たちの父」に呼びかけるように祈ることを勧めておられます。司牧のための“荷物”を皆で協力して運ぶのは、とても簡単です。私自身だけではできないことが、たくさんあります。使命を果たすために、私たちは自分の長所と短所を共有して進めねばなりません。そうでなければ、私たちは「自分は全能だ」と信じようとし、うまくいきません。

LaCroix:そうした活動の中で、司祭としての権威はどうなのでしょう?

Jean-Luc Gebelin:そのようなことよりも、私はいつも、「共に働く」という原則に立っています。皆に参加してもらいたいなら、自分が参加する必要がある。教会活動では、催しで、皆と役割を分担するなど、いつも小教区の信徒たちの側に立っています。そうした活動は、私たち司祭のためでもある。そうしたことを必要としているのです。私は大きな刺激を受けることができました。信徒たちとチームで働くのが好きです。自分だけでは、どうしたらいいか分からない場合も、チームでやれば、視界が広がり、光が差します。共に働き、成功することは大きな喜びです。互いに受け取ることを学び、自分だけで持つのではないことに気付かされます。私たちの多様な才能は、予想していなかったことを引き起こします。

LaCroix:シノドス(共働)的な教会における司祭の場はどのようなものだと考えますか?

Jean-Luc Gebelin:司祭だけでは、教会の将来のために何もできないのは明らかです。信徒の皆さんは、私たちを感性を異にす司祭たちの間の不毛な対立から抜け出すのを助けてくれます。さらに前進するのを助けてくれます。私にとって、「司祭」とは、何よりも、信徒たちの間の対話の”僕(しもべ)”であることを意味するのです。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2022年2月10日