・「一般信徒の役割拡大、反対意見に寛容な姿勢が必要」と、独司教団が”シノドスの道”報告書

(2022.8.11 Crux Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

  報告書の中でドイツの司教たちは、ミサ参加者の減少、教区評議会や他のカトリックの機関への参加の減少、それに伴う国の教会税制度から得られる収入の減少など、ドイツの教会が抱える問題を挙げ、その克服が”シノドスの道”の歩みのドイツ教会として目的とするところだ、としている。

*司祭の独身義務の廃止、女性司祭の叙階、同性愛者への祝福などを支持する声も

*バチカンはドイツ教会を批判するが、独司教団は「教会改革の提案は来週の世界代表司教会議に出す」

 これに対して、ドイツ司教協議会のゲオルク・ベッツィング会長は、「驚き」を表明。司牧上の判断はあくまで司教の権限に属することを確認したうえ、「将来的には、論争の的となる問題がより正式な場で議論されるようになるように」と希望を述べた。また、会長は、ドイツ教会の”シノドスの道”の歩みの中で出された教会改革の提案は、”道”の当面の終着点である来年秋の世界代表司教会議に提出する、とも語った。

*教会に対する批判にも耳を傾けることが必要

 報告書によると、教区レベルの歩みの中で、教会を去った人々や、女性や既婚男性を含む「教会の役職や奉仕から排除された」人々、そして移民。難民の人々、貧困の中にある人々などは、「教会からのけ者にされている」と感じていることが、改めて浮き彫りにされた。

 また、「教会への批判にも耳を傾ける重要性」を強調し、「時代のしるしを識別するだけでなく、さまざまな信者に耳を傾けることは、”シノドスの道”の歩みの基本」とする意見や、「教会が社会正義、貧困、気候変動、移民・難民、平和問題などの課題にもっと積極的なかかわり、その際、ソーシャルメディアを積極的に活用すること」への希望も強く寄せられた、と指摘。

 さらに、教会の外の人々からは、カトリック教会は「ばらばらで、過度に位階的、時代遅れ」と見られている、とし、一般の信徒、特に女性、若者、ボランティアは「メディアを通じて、司教たちのように、自分たちの声を届けたいと思っている」「避妊、中絶、同性結婚など、教会で禁句とされているれている性に関連する問題について、指導者たちと誠実でオープンな意見の交換をしたい」との希望も出された、としている。

 「神学者たちは『率直な発言をすれば、教授の免許が取り消されるのではないか』と恐れる一方、信徒たちは「聖職者や神学の知識を持つ人々に対して、意見を述べることに劣等感を感じ、意見を述べても理解されないことが多い」と不満を持っている、とも指摘している。

 

*説教、一部の典礼、葬儀、洗礼などを一般信徒にもできるように

 また、ミサ典礼に関しては、報告書は、「すべての教区で『質の高い典礼』がなされていることが示されている」とする一方、ミサ参加者、司祭の減少が続いていること、信徒の日常生活と日曜日のミサの間に断絶があること、などの問題も指摘。「分かりやすい言葉の使用も含めた典礼に対する理解を深める努力、信徒たちの日常生活の現実につながるようなミサ典礼とする必要がある」と司教団は見解を述べている。

 そして、具体的な方策として、”シノドスの道”の歩みの過程で、「一般信徒の説教者」制度を創設することや、適切な訓練を受けた女性、若者、志願者が典礼祭儀ー言葉の典礼、聖務日祷、葬儀ーを司式することの提案が出された、という。

 これに対し、ドイツの司教たちは報告書で、「これまでの教区の経験は、これらの形態の奉仕について、一般信徒のより積極的な参加を可能にすることを示唆している。女性のカリスマ性を聖書の宣言と解釈に反映させることも可能」と述べ、これらの典礼祭儀は、「司祭による司式が不可能な場所での信仰生活を維持するため、拡大されるべきである」としている。

 司教たちはまた、一般信徒による、結婚希望者に対する支援、洗礼の実施について、信徒たちから明確な希望表明があり、「代替的および伝統的な礼拝形式の両方で全体として、より大きな多様性が求められている」と述べている。

 報告書はさらに、意思決定に対する現在の教会の「トップダウン」方式が、「司祭や信徒へのより多くの責任分担を求め、助祭の役割を拡大すること」を提案した信者によって批判されたことも明らかにし、教会の運営などについて決定は信徒たちと共にされるべきこと、透明性の向上、司教や小教区司祭の任命方法の抜本的見直し、教区や小教区の役職の任期性、権限の乱用、性的虐待などの行為に対する監視と処罰の明確化などを求める声も出された、としている。

*来秋の世界代表司教会議に女性が“フル出場”し、投票権も持てるように

 また、報告書で司教団は、来年10月の世界代表司教会議について、「女性が、すべての協議に参加し、議決が必要な場合は投票権をもつ」ようにすることを求めた。さらに、多数の信徒たちから、小教区の司祭の役割を秘跡や司牧に限定し、管理運営の指導者としての役割を解いて、一般信徒に委ねるようにとの要請があった、とも述べている。

*司教団は、差し迫った課題に明確な立場を示せ

 報告書は、”シノドスの道”の歩みを踏まえてドイツ教会の今後の在り方について意見を求められた人物の、次のような言葉で締めくくられている。

 「ドイツの司教たちが信頼を回復したいのであれば、教会の管理運営へのすべての信徒の平等な関与、性道徳の見直し、同性愛者が性的少数者への差別なき対応など、現代の差し迫った課題に対して、明確な立場をとる必要がある…。『明確な立場を取る』とは、複雑な言い回しで問題をはぐらかそうとせず、皆が理解できる言葉を話すことも意味する」。

「聖職者の性的虐待の問題にについては、明確な責任を取ることが求められる。権力が勝手に振舞えないようにし、性的、精神的虐待の犠牲となった人々への償いに努めねばならない」。

 そして、最後に、司教団として「シノドス(共働的)教会は、すべての信者が責任を負い、小教区および教区レベルでの決定に参加できる場合にのみ、成功できる」と述べている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年8月12日