・「シノドス的教会」と教会改革への選択肢―仏神学者の見方は(La Croix)

(2022.1.5 La Croix  Jean-François Chiron | France)

カトリック教会は、民主的な集会ープロテスタント教会のスタイルーの形をとるのか、それとも、評議会に意思決定ではなく協議の場としての役割を与える改革をするのか。

「synodality (共働性=共に歩む)」に関して形になり始めている議論は、カトリック教会内部でなされた暴力について、従来以上に強く認識される文脈から来ている。そして、それはいくつかのデータを見直す機会を提供している。私たちはそれを、統合的な形でそれを行うことになるだろう。議論を閉じるのではなく、代替案を思い起こし、そしておそらく曖昧さに対して警告を与えるために。

フランスのサレジオ会の道徳神学者XavierThévenot(1938-2004)は、2つの変化のカテゴリーを区別するのを好んだ。「タイプA」は、同じことをまったく異なる方法で行うことを意味し、「タイプB」は、何か新しいことをすることを意味する。私たちの教会は、地域や抱えている問題によって、どちらか一方を選ぶことが求められる。これは洗礼を受けた信徒の間で話し合わなければならないことだ。

 

*聖職者主義を教会から排除する

 聖職者の役割、つまり教区の司教と司祭の役割を考えてみよう。カトリック教会の伝統的となってきた「聖職者主義の教会」では、全世界の教会で教皇、教区で司教、小教区で司祭、と様々なレベルで、聖職者が最終的な決定権を持つとされてきた。

 問題は、この原則に疑問を呈するかどうかだ。疑問を呈するということは、「聖職者主義の教会」決定的に排除することにつながる。つまり、決定権が、信徒会や小教区評議会に与えられ、司祭の意見は、全員の中の一つ、「同等者間の第一人者」になる、ということだ。

 教会活動のあるレベルで適用されることは、論理的には、小教区から教区を経て、普遍教会(司教会議)に至るまで適用されることを意味する。このような見方は、議論に値する。それは、私たちをプロテスタント教会の運営の仕方ー多数決の原則が極めて多様なやり方で適用されているーに私たちを近づけるだろう。

 私たちは「タイプB」の変化、つまり”真の改革”に取り組むこととしたい。それに先立って、公式の”協議”ではなく、教皇フランシスコが奨励する”パレーシア(大胆に話すこと)”を通して、多様な表現を可能とする”本音の話し合い”がなされることになろう。

 十分に根拠のある複数の意見が表明された場合、ある人が自分の意志だけで決めることはできないが、逆に、少人数による協議の場合、最も強い意味で、一人の判断が力をもつ。また、多数派が少数派を圧倒することで決定するよりも、全体で合意する”コンセンサス方式”が望ましい。

 意思決定プロセスへの参加

 意思決定における「透明性」、強い意味での「責任」(上司だけでなく、同等者や仲間に対しても説明責任を負うこと)は、私たちの教会に欠けているものだ。

 この点で、重要な教義の場であるはずにもかかわらず、教会の法規で無視されている教区評議会”に、公式の地位を与えることが考えられる。小教区の司牧評議会の設置も、教会法で(現在は個々の司教の判断に設置が委ねられているが)義務化すべきだし、それによって存在の正当性を強化されるだろう。

 司祭が小教区の評議会に相談することなく、ミサ典礼を一方的にキャンセルするのは正常なことだろうか?司教が教区評議会に相談せずに司教総代理を任命するのは普通のことだろうか?問題は、洗礼を受けた信徒たちが判断すべきものの数を増やすことではなく、意思決定の過程に参加できるようにすることだ。

 このようなやり方は、一部の人には不十分であるように見えるかも知れないが、カトリック教会という巨大な船は、氷山を避けようとしても、あるいは、すでに氷山が船の側面を削っているとしても、急には曲がれない。他のキリスト教宗派の慣習をそのままカトリック教会に移植することもできないが、変化を考える場合、異なる歴史、神学的考察、霊性などを考慮に入れる必要がある。私たちは他者から学ぶことができる。

正当性の危機

 われわれはまた、現在の状況、すなわち、司教と司祭の正当性の危機を思い起こす必要がある。合法であるが失格となった者が、規制されていない権力掌握者に道を譲ると、最も弱い人々にとって問題のある状況が生まれる。さらに、こうした”権力獲得”の形には、現在の状況では、いわゆる”進歩的”な解決策に常に傾くとは限らない可能性があります。また、すべてのレベル(教区、教区、さらにはバチカン)での”創造”の恐れもある。大小の”領地”での”マスター”たちの説明責任が自分たちだけのためになってしまう。

 権威は正当性を意味するが、究極の正当性とは何だろうか。叙階された聖職者、それとも、最も多数を代表する者たちの最大数か。

 この点に、選択すべき手がかりがある。教皇フランシスコが2015年に、世界代表司教会議(シノドス)設置50周年の記念講話をされた際、最初の千年紀の教会からの原則を引用する形で「omn​​es tangit ab omnibus tractari debet」(すべてに関係することは、すべての人によって話し合われる必要があります)」と指摘された。

 ただし、教皇は講話で、その原則の最後の箇所 「et approbari debet(そしてすべての人に承認される)」を省かれた。不思議なことに、国際神学委員会は2018年にまとめた文書「教会の生活と使命における同義性」に、その箇所も含めた原則を引用している。ここでは、同じ原則の2つの異なる定式化があり、間違いなく、それらはsinodalityの2つの異なるアイデアを示している。

 ここで想起された代替案を考慮に入れると、提案されているものの決断と結果を組み立てるのに役立つ。 われわれが「シノドス的な教会」に私たちが期待していることは、これに部分的に依存している。

(ジャン=フランソワ・シロン(1956年生まれ)は、カトリックの神学者で、シャンベリー教区(フランス)の長老。現在、リヨンのカトリック学院で神学を教えている)

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2022年1月10日