(評論)シノドス討議要綱でバチカンは教会の四つの統治改革を提示している(La Croix)

(2024.7.10 La Croix   Loup Besmond de Senneville In Rome)

   The mountain that labors bring forth a mouse?(大山鳴動して鼠一匹、となってしまうのだろうか?)という一部の懸念をよそに、 バチカンが9日、10月の世界表司教会議(シノドス)総会の第二会期に向けた「Instrumentum Laboris(作業用具=バチカン放送日本語訳は「討議要綱」)」を発表した。約30ページ、111項目からなる文書は、「カトリック教会の内部意思決定プロセスにおける重大な変化」を明らかにし、4つの改革を提案している。

 討議要綱は、全体を通して、「カトリック教会内の意思決定を再考し、司教の権威を変えることなくすべての信者の参加を促進することの重要性」を強調している。その意図するところは、「教会における階層的なピラミッドを廃止すること」ではなく、「いくらか平らにし、頂点を底辺に近づけること」にある。

 密度が高く、やや技術的な内容のこの討議要綱は、ガバナンスの問題に焦点を当てている。この作成に当たって今年3月、昨年10月のシノドス総会第一会期で最も注目を集めた問題(女性の助祭、同性愛者の歓迎、独身制)を”脇に置く”ために10の作業グループが設けられている。

*提案された 4 つの改革

第 1 のポイント: 教会活動への女性の参加

  バチカンのシノドス事務局長は、時として「マッチョ」な文化を非難し、「教会の識別プロセスへの女性の幅広い参加」を推奨。また、女性が教区、神学校、トレーニング センターで「責任ある地位」に就き、「教会法のプロセスにおける裁判官」としての役割を担うことを提案している。

第 2 のポイント: 「信徒奉仕」の拡大

 信徒による奉仕の拡大は、第 2 バチカン公会議によってすでに開かれており、近年ではカテキスタ、朗読者、侍者奉仕の創設によって実証されている、これは必ずしも「典礼の領域」に結び付けられてはいない。「傾聴と伴走の奉仕」の創設は、「さまざまな理由で教会共同体から排除されている、または排除されていると感じている」人々を考慮するために推奨されている。討議要綱は、教会の包括的な側面を繰り返し強調し、信徒が「ミサ聖祭の儀式中を含め、神の言葉の説教に貢献できる」と考えている。信徒奉仕の拡大は、多くの司祭が感じている”作業負荷”を軽減するのに役立つだろう。ローマは「司牧活動の考え方と組織化の新しい方法」を推進し、司祭と信徒の間で「仕事の再配分」につながる。

透明性

 第3のポイント:教会の意思決定プロセスの再考

 教会の意思決定者の身元は変わらない。それは常にその地域の司教だが、「シノダル(共働的)な教会」では、「権威の行使は恣意的な意志を押し付けるものではなく、むしろ神の民の一致への奉仕として、聖霊が要求するものを共同で探求する力となる」べき、と述べている。この点で、イエズス会の霊性において特に重要とされている「識別」が、この討議要綱の中心となっている(この言葉は50回も登場している)。教区は現在よりもさらに強固な協議プロセスを確立すべきである、とし、参加者として、イタリアなどの一部の国ですでに行われているように、さまざまな「評議会」(小教区あるいは教区)のメンバーが選出される可能性を示している。

 第4のポイント:教会の階層による決定の透明性と説明責任の確立

 また討議要綱は、「金融スキャンダル、さらには未成年者や社会的弱者に対する性的虐待やその他の虐待」によって失われた教会への信頼性を取り戻すために、緊急に求められている、と強調。

 「透明性と説明責任の欠如は、”聖職者主義”を助長している。『聖職者は、与えられた権限の行使について誰に対しても説明責任を負わない』という暗黙の前提に基づいている」と指摘し、これに対処するために、教区は、例えば、「安全防護(未成年者や社会的弱者の保護)の分野や、女性の権威ある地位へのアクセスと意思決定および意思決定プロセスへの参加の促進の分野で行われた取り組みの実例を含む、使命の遂行に関する年次報告書」を通じて「財政的および司牧的な決定を報告」することが求められる。

 以上のような論理の転換は、10月2日からローマで会合するシノドス総会第二会期の会合で決定される。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年7月11日