(評論)2028年「教会会議」への新たな道のりー教皇は”シノドス”の実践を見届けることを望んでおられる(LaCroix)

(2025.3.17   La Croix   Mikael Corre)

 3月15日、バチカンは入院中の教皇フランシスコの承認を受け、シノドス事務局が世界の司教たちに送った書簡を公開した。この書簡は、世界中の司教たちに、昨年10月に閉幕したシノダル(共働的)な教会のあり方をテーマにした世界代表司教会議(シノドス)第16回総会の成果を実践することが「任意」でないことを、思い起こさせるものだ。

 教皇は1か月にわたる入院・治療中にもかかわらず、執務を続けておられる。それはここ数日、バチカンから発せられているメッセージであり、シノドス事務局長のマリオ・グレック枢機卿が署名し、全世界の司教宛てに3月15日付で送られ書簡を公表する決定の背景にある理由だ。

 この書簡には、2021年に教皇が開始した大きな教会改革(精神面と運営面の両方)を完了させることを目的とした、新たな段階のスケジュールについて「3月11日、教皇は最終承認をなさった」と明記されている。

 書簡の送付を承認した時点で、88歳の教皇は26日間入院されており、急性呼吸器疾患の危機を何度か乗り越えたばかだったが、医師団は、教皇の容態は「安定しており、わずかながら改善の兆しが見られる」と述べていた。教皇の退院の可能性について、バチカンで教皇に次ぐ地位にあるパロリン国務長官が3月14日に言及した。長官はこの日、バチカン駐在の各国大使を招いて、パウロ礼拝堂で行われたミサの冒頭で次のように述べた—「私たちは今朝、教皇の健康を祈るために集まりました。教皇は回復し、私たちのもとに戻ってこられるでしょう」。

*2028年「教会会議」への新たな歩みは「すでに教区で実践されていることを支援、評価する」こと

 このように、政治の世界に安心感を与えるメッセージが出された後、教会に向けられたこの”シノドス”に関する書簡は、教皇の健康状態について懸念が残っていることや、教皇の辞任の可能性に関する憶測がたびたび報道されることを踏まえると、決して軽く扱えるようなものではない。昨年10月26日にシノドス第16回総会の最終文書が発表され、即座に教皇によって承認された(これは珍しいことである)際、複数の関係者は、聖職者主義をなくし、教会をより水平的なものにするために開始されたこの取り組みは、教皇の遺言的な性質を持つものだ、と指摘した。

 3月15日に出された教皇承認の書簡は、この長期間にわたる、時に理解するのが難しい”シノドスの道”の旅が軽視されないようにすることを目的としている。「これは、世界代表司教会議(シノドス)の成果の実践段階そのものを目的とするものではない。すでに多くのことが各地域で実践されている。そうした中で、『何から始めたらいいか分からない人々を助けるための方法を示すものだ」と、バチカン関係者は慎重に説明した。

 この書簡は、2028年10月までの非常に詳細な日程が示し、「教会会議」の開催も盛り込まれている。そしてその目的は、実際に教区で実践されていることを「支援し、評価する」ことと述べている。「実践」には、例えば、女性が教会で指導的地位に就くこと、財務の透明性に関する規則の制定、虐待防止策の策定・実施、司祭や司教の協議会の設置などが含まれる。

*シノドス事務局長の書簡の内容は義務的な性質

 グレック事務局長は、この書簡の中で、この支援と評価の期間を「歩んできた道のりを固めるプロセス」と表現した。これは、「教皇が、この『シノドスの最後のテキスト』を承認することで、教義上の権威を与えた」ということを、強く印象づけるものでもあった。つまり、その内容は、教皇ご自身が書かれたものと同等に、世界の教会や司教たちに拘束力をもつ、ということ意味しているのだ。

 教会内部で統治の変更を求める声に反対する意見もあるが、この書簡に示された新しいプロセスは「これまで”シノドスの道”の歩みにあまり関与してこなかった教区が、まだ完了していない段階に追いつき、独自のシノドス・チームを結成する機会を提供する」と書簡は主張している。

 この”指令”が義務的なものであることを示すものとして、署名者のグレック事務局長は、世界の各教区に対し、枢機卿団チームの「構成と参考資料」を、枢機卿のメッセージに添付された専用フォームでバチカンに提出するよう求めている。

 書簡で発表された日程表には、教皇が引き続き中心的な役割を果たす新たな協議が含まれている。バチカン報道官室は3月14日の夜、「教皇の健康状態が安定している限り、健康状態に関する最新情報は今後はより少ない頻度で発表されることになる」と述べた。2028年まで「教皇は、教会全体にとって有効とみなされるこの新しい段階からの方向性を聞き、確認することができる」と、この書簡はさらに詳しく説明している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年3月18日