新*10月5日の記者会見:総会第2会会期の討議の4日から5日の模様について

(2024.10.5 Vatican News   Antonella Palermo)

 世界代表司教会議(シノドス)通常総会第2会期の 5 日、定例記者会見に出席した参加者数名が4日午後から5日朝にかけての討議などについて語り、会合が平和と人権尊重を求める機会となることを期待するとともに、現在世界中に広がっている戦争の原因となっている、あらゆる形態の原理主義や武器取引を非難し、皆が「平和の職人」となるよう呼びかけた。

 

 

*レバノンのマロン派司教「危機的状況に世界は沈黙を続け、暴力にゴーサインを出している」

 

 イスラエルの無差別攻撃で危機的状況にあるレバノン情勢について、バトゥルンのマロン派のムニール・ハイララー司教は「残念ながら、世界は沈黙を続け、あるいはこの暴力すべてにゴーサインを出しています。キリスト教の価値観とは無関係な政治的、経済的利害関係が多すぎるからです」としながら、「希望はまだ残っており、この国が平和のメッセージであり続けることができる」と語った。

 そして、2つの国家と2つの民族(イスラエルとパレスチナ)の承認に関する決議がイスラエルの政治家によって常に拒否されてきたことを思い起こしつつ、「私は、イスラエル人全員が暴力に賛成しているとは言いません… だが、自国の利益が最優先され、西側諸国でさえ、私たちを支持しないのです」と述べた。

 そうした中で、今回のシノダリティ(共働性)のためのシノドス総会が「暴力と貧困に最も苦しむ人々の重要性を改めて強調する良い機会」になる、とし、「教会がシノドス総会を通じて、共に生きること、他者を尊重すること、他者への恐怖から自分たちを解放することの必要性を伝える使者となることが、最も大きな決断となるでしょう… これは人類に対する偉大な提言の第一歩となる」と総会への期待を表明した。

 

 

*ハイチの大司教「慢性的な不安定、武装団による虐殺…私たちは絶望している」

 

 ハイチのカパイシャンのローネ・サトゥルネ大司教は、ハイチが慢性的な不安定な状態にあることを指摘。「これまで秩序と平和をもたらすはずだった人々は、その責任を果たしてこなかった… 人間の尊厳の尊重にはほど遠い現実があります」と嘆いた。

 大司教は、武装ギャング団によって70人が死亡し、多くの家屋が放火され、多くの人が避難を余儀なくされた、3日に起きた虐殺事件を取り上げ、「ギャングたちは暴力行為を予告していたにもかかわらず、それを防ぐための措置が何も取られなかった… 私たちは絶望しています、ハイチの首都では人口の70%が避難を余儀なくされている」と指摘。カトリック教会の多くの教区が閉鎖されたため、若者の生活と教会の使命に悪影響が及んでいることを強調。「経済的な観点から見ても、国が南北に分断され、連絡が取れないため、過去5年間は何の進歩も見られなかった」とも述べた。

 だが、このような中で希望もある。大司教は「交わり、参加、使命」が強化されるべき基本的な価値観として浮上しており、「多くの宗教団体が、新しい世代にこれらの価値観を伝え、いつの日か彼らがこれらの価値観に基づいた社会を築けるようにしようとしている」と説明。ハイチ司教協議会も、いわゆる”政治的移行期間”が長くなりすぎないように求め、政治的移行の責任を引き受ける「多国籍軍」のスポークスマンとして活動してきた、と述べ、ハイチの司教たちは、カリブ海諸国での出来事に関心を示してくれた教皇に深く感謝している、と語った。

*フィリピンの司教「国際、国内の人の移動の中で、地方の人々を脅威とみなす問題も」

 次に、フィリピンのカルーカン司教でシノドス情報委員会のメンバーであるパブロ・ビルヒリオ・S・ダビド司教が発言。シノドス総会の昨年10月の第1会期からこれまでに行われた教区司祭の大陸レベルの協議について語り、フィリピンに影響を与えている人の移動に照らして、シノダリティ(共働性)と宣教の関係を説明した。 フィリピンの人の移動は、「海外で働くために出国するという国際的なもの」と「地方から都市に移動するという国内的なもの」があり、国内に関しては、一部の都市住民が地方の人々を脅威とみなすなどの問題が起きている。そうした中で、「2015 年にフィリピンに来られた教皇は、私たちに郊外での活動に力を入れるように言われ、私たちはそうしました。私の教区に 20 の宣教施設を作りました。教区は宣教の観点から大きく変化しています」と述べた。

 

 

*カナダの大学教授「”グローバル・サウス”が対話の中心的な役割を担うようになってきた」

 

 カナダ・オタワのセントポール大学で組織神学を教えるカナダ人教授キャサリン・クリフォード氏は、総会第2会期の最初の週の印象を語った。

 「総会参加者の間には、昨年10月の第1会期に参加した方も多く、お互いを知っているため、誠実で率直な雰囲気が広がっていました」としたうえで、「西洋世界も、教会コミュニティが直面している変化を受け入れなければならない… 私たちは、グローバル・サウスが私たちの会話においてますます中心的な役割を担っているのを感じていますす」と述べ、人口動態の観点から多くの課題が出てきており、教会が空になるプロセスがあるにもかかわらず、「教会は消滅していない」ことを明確にすることが重要、と指摘した。

 

 

*バチカン広報長官「貧しい人々、若者、女性を積極的な参加者として迎え入れる必要が話し合われた」」

 

 最後にルッフィーニ長官が4日午後と5日朝に議論されたトピックを要約。「貧しい人々の叫びに耳を傾け、彼らを単なる受益者ではなく参加者として迎え入れる必要」について話されたことが特に印象に残った、と述べる一方、「教会における女性の役割」に関して多くの発言があり、「教会に奉仕したいと強く思っている女性やLGBTQ+の人々が疎外されることがあってはならない」との声も出た、と説明した。

 また、さまざまな考察の中心にあった問いかけの1つは若者に関するもので、「今日、彼らを教会に惹きつけるものは何か?」だった。最も広く理解されているのは、「若者は呼吸する必要がある」ということ、そして「大人も若者と共に呼吸せねばならない」ということで、そこに、いわゆる「新しい福音宣教」の完全で理解しやすい意味が与えられる可能性が高い、との印象を語った。

 このほか、エキュメニズム、教区レベルのシノドス、今回のシノドス総会など一連の会合後の教皇の役割などの話題も取り上げられ、シノダリティ(共働性)が「聖職者主義」と戦う方法を提供していることも明確になった、という。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

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2024年10月6日