・シノドス総会第2会期・10月9日の記者会見: 終身助祭、キリスト教入信、貧しい教会への援助などが主題に

(2024.10.9  Vatican News     Alessandro Di Bussolo and Giampaolo Mattei)

 世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期の会合についての9日の記者会見は、8日午後から9日午前にかけての会合について、教会の識別とキリスト教入信という主題を中心に説明され、アフリカ、アメリカ、欧州の 3 大陸を代表する 3 名の講演者は、助祭職の使命と世界中の貧しい地方教会を支援する必要性などを強調した。

 総会参加者の小グループごとの意見交換の中では、全体会議で最も関心を呼んだ証言は、幼い子供たちのキリスト教入信について十分に語られていないことに深い懸念を表明し、「子供たちをキリスト教の信仰で育てるための助けとなる言葉が欲しい」と訴えた母親のものだった。

 また、議事では引き続き女性が大きな役割を果たしており、世界中で戦争が繰り広げられている状況で、外交的な役割への女性の関与拡大を求める声も出た。

 

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 会見ではまず、バチカンの広報省長官のパオロ・ルッフィーニ・シノドス情報委員長と同委員会のシーラ・ピレス事務局長が第 5 回および第 6 回の全体会議の概要について話した。

 

 

 

*「聖職者の役割」に焦点、「司教や司祭の候補者の適正について信徒に相談が必要」との意見も

 

 自由発言では「すべて教会の識別、つまり主題と基準、責任のさまざまなレベル、聖職者の役割というテーマに焦点を当てられた」とし、8日午後に 35 件、9日朝にはさらに 21 件のスピーチがあり、その中で最も多く取り上げられたテーマは、「教会での信徒の役割、司教や司祭との協力、意思決定プロセスへの関与」だった、と説明。

 ピレス事務局長は「司祭と信徒の協力を促進することの重要性、男女の信徒が指導的な役割にもっと参加する必要性が強調され、教会において信徒の存在は不可欠、との主張がされた」と述べ、さらに、ある発言者からは「司祭職と司教職の候補者の適性について、神の民に相談すること」が提案され、「司教が決定するが、『シノダル(共働的)な教会』では神の民が選択に責任を感じる必要がある」「司教や司祭の候補者が備えているべき人間的および精神的資質も要件とすることを考えるべき」との意見も出された、という。

 

 

 

*「教会の意思決定過程に女性を貢献させる必要」「『聴くこと』で女性が奉仕できる」

 

 ピレス事務局長によると、会合で出されたもう1つの提案は「教区での司牧活動における信徒の役割について深く考えることの重要性」に関するもの。その理由は、「多くの司祭は教区司祭になるという召命を持っておらず、代わりに、穏やかな結婚生活、家族生活を送っている多くの信徒が教会共同体で役割を果たせる」というものだった。

 女性に関しては、「典礼の侍者にいかなる性差別もしないこと」「意思決定プロセスにおいても女性の貢献を認めること」「『聴くこと』を女性の主な奉仕として考え、教区司祭、助祭、教理教師の奉仕を補完すること」などが意見として強く出された、という。そして、「女性は聴く方法を知っており、告解とは全く異なる奉仕としてそれを行うことができる」との主張があり、「分裂し争いのある世界で、外交に女性をもっと関与させる」という提案もあった。

 

 

 

*若者にデジタル青少年奉仕を託す

 

 またルッフィーニ委員長によると、会合で参加者たちから「デジタル司牧で若い世代とつながる必要がある」との指摘があり、「アフリカの多くの若者は、教会に通い、才能、エネルギー、信仰を持っており、教会の『識別』の一部でなければならない」という意見があった。また、「若者自身を『ニューエイジ』や虚無主義の思想に囚われた仲間と対話させるため」に、「青少年の司牧を(中高年の)大人ではなく若者に委ねる」という提案がなされた。

 ある発言者は「世界で多くの子供たちが経験している劇的な状況」について、「家族の事情で幼い頃に結婚を強いられる子供たち、売春を強いられる少女たち、人身売買の被害者となる未成年者」などの例を挙げて説明した。「非キリスト教徒の家庭出身の神学生、名誉を得るために司祭職に就かされる神学生、同性愛を受け入れなければならない人々」に対する懸念も指摘された、という。

 

 

*「教会内部だけでなく、外部の声も聴く必要」「子供たちを育てる親の共同責任をどう考えるのか」

 さらに長官は、発言者たちが「開催中のシノドスは文書を作成するためのものではなく、行動を促すためのものだ」という教皇の言葉を思い起していた、と指摘し、「キリスト教徒や教区の声に耳を傾けるだけでは十分ではなく、外部の勇気ある声にも耳を傾け、人々が前に出るための安全な場所を作ること」が繰り返し表明された、と説明。

 また、ある母親が、「幼少期からの傾聴と識別に関するシノドスに貢献する親、祖父母、キリスト教徒の代父母の役割について、このシノドス総会はどのようなことを語るのか。私たちは、子どもが成長したときにキリストのもとに行くように育てる必要があるのではないか」と、参加者たちに問いかけたことを挙げ、今シノドス総会が総括文書で「親の共同責任の役割を促す」ことが求められた、と長官は述べた

 

 

 

*「教会は性的虐待の被害者に寄り添うべき」「複数の教会共同体兼務など司祭の過重負担に対応を」

発言者たちからはまた、「教会内で性的虐待の被害者に寄り添う必要がある」こと、「教会は弱い立場の人々に寄り添わねばならない」ことが強調され、「”権力”は奉仕であり、決して”聖職者主義”であってはならない」との主張もあった。

同様に、「聖職者の養成を含め、貧しい人々にもっと中心的地位を与えるように」との呼びかけがあり、特に「貧しい人々は、神の心に近く、権威を持っている… 私たちは彼らを奉仕と使命の対象と見なすが、決して聖職者とは見なさない」との声もあった。

また会合の発言者からは、「司祭について、特に『仕事の過重負担による孤独』」の問題が提起され、「司祭たちがシノドスからある程度、距離を置いているのは、彼らの多くが重い負担を抱え、複数の教会共同体を管理し、管理・運営上の負担が重いという事実から生じている可能性がある」との強い指摘があった。。

そして「シノドスは司祭の召命を復活させるよう努めるべきであり、そのために、各教区に経済評議会を、そしておそらくは教区司祭の奉仕を支援するために複数の教区を巻き込んだ組織を作る」という提案がなされた。

 

*「総会は、現実にもっと焦点を当てるべきだ」

 

 発言者からは、「教会間および教会内での対話の促進」も指摘された。

 そして、長官は、中国の司教がシノドス総会に参加していることに関連して、「中国のヨゼフ・ヤン司教から、会議でのあいさつで、2018年にバチカンと中国が結んだ司教任命に関する暫定合意から得られた利益を称賛する発言があった」と述べた。

 また、長官は、発言者から、今総会の総括文書の起草を含め、会合は「(教会と世界の)現実にもっと焦点を当てるべきだ、との意見があったとし、サッカーの比喩を使って、「教会はゲームに参加することよりも練習に重点を置いているようだ」と結論付けた。

 

 

 

*「『教会活動と指導的立場への女性参加』の検討は教理省に。今後の協議には女性も加わり、総会参加者全員から意見を受け付ける」シノドス事務総長・教理省長官連名で声明

 

 長官は概要説明の最後にに、バチカンのグレック・シノドス事務総長とビクトル・マヌエル・フェルナンデス教理省長官の声明を読み上げた。

 声明では、10の検討グループの一つが主要課題としている「特定の聖職形態に関する神学的および教会法上の問題」、特にについての検討は、「シノドスの要請以前に教理省にすでに委託されていた」ことを明らかにした。

 そのうえで、「適切な文書の発表を視野に入れ、この作業は教理省の規則で定められた手順に従わなければならない。省の定例会議で司教と枢機卿の意見を聞いた後、このテーマは現在協議段階にあり、文書の基礎を提供する協議者とはすでに協議済みである」と述べている。

 また今後の協議には、「これまで参加していなかった女性も加わる予定」とし、シノドス総会への参加者全員と神学者に対して、「今後数か月以内を期限に、この問題についての意見や支援を受け付ける。18 日から、教理省の神学者 2 名が書面または口頭による受付を始める」としている。

 

 

 

 

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【記者会見ゲスト参加者3人の発言】

 9日の記者会見には、 モザンビーク・ナンプラ教区のイナシオ・サウレ大司教、チリ・プエルトモント教区のルイス・フェルナンド・ラモス・ペレス大司教、ベルギー・ケント教区のデ・ クッベル助祭がゲスト参加して発言、「教会における終身助祭の役割とシノドスへの参加」「キリスト教への入信」「教会を離れる若者」「教会と社会における人間関係の浄化につながるシノドスの精神性」「モザンビークの教会への支援要請」などについて語った。

 3人の発言後の質疑応答では、”シノドスの道”の歩みに当初から関わってきたヘルト・デ・クッベル終身助祭に最も多くの質問が寄せられた。彼は神学者、元ジャーナリストで、ベルギーのゲント教区の終身助祭。カテキズムと青少年・家族司牧活動の司教代理を務め、既婚者で親でもある。また今シノドス総会に参加するラテン教会唯一の終身助祭だ。(総会には、シリア教会、メルキト教会から2人の助祭が出席している。)

 

 

*ベルギーのデ・クッベル終身助祭:「シノドス総会に『世俗化された社会』で役立つ助祭の参加が足りない、『助祭会議』を提案」

 

 デ・クッベル終身助祭は、会合で自身が発言した内容を繰り返す形で、「助祭は家族、他の家族、地域社会、そしてより広い社会との”架け橋”です。教皇が9月末に訪問されたベルギーで言われた『世俗化された社会』では本当に役に立ちます」と語り、助祭の役割は「教会が及ばない場所、声を上げられず教会自体や社会から疎外されている人々のところへ出かけて行き、教会に連れ戻すことです」と述べた。

 さらに、「信者の中には、疲労し、高齢の人が多く、シノダル(共働的)なやり方で歩まなければ教会は存続できません」とし、ベルギーでは、「助祭がシノダリティ(共働性)を若者にもたらすことを目指し、フランドル語圏のすべての教区の青年奉仕団体をこの取り組みに結集させました」と説明した。

 そして記者の質問に答える形で、「このシノドス総会には、助祭の代表者をもっと多く招くことができたはずです… 奉仕団体が非常に強力な米国の助祭は、助祭の総会出席者が少ないことに、あまり満足していません」と語り、総会後に「助祭会議」を開くことを提案。「助祭であることは、私にとって司祭職への準備ではまったくない。私たちの奉仕は、もっぱら『奉仕のための奉仕」なのです」と強調した。

 

 

*チリのペレス大司教:「ペルーの終身助祭の人数は司祭、修道士の数をしのぎ、貢献は並外れている」

 

 終身助祭については、ルイス・フェルナンド・ラモス・ペレス大司教に対しても、第二バチカン公会議の後に多くの終身助祭が叙階されたチリの経験について質問があった。

 大司教は、「現在では、終身助祭の数が司祭や修道士の数を上回っており、教区管理における司牧者との協力を含め、彼らの貢献は、並外れていて高く評価されています」と説明。助祭が「小さな司祭」ではないことを強調した。

 モザンビークの司教協議会の議長でMissionaries of the Consolata の会員でもあるイナシオ・サウレ大司教も発言し、「限られた人的、物的資源がすでに司祭の養成に使われているため、現在、我が国の教会には助祭がいない。だが、将来、機会があれば、終身助祭が任命されるだろう」と述べる一方、そのためには、「教区の教会共同体に終身助祭を受け入れる準備をさせ、助祭と司祭の違いを理解させておく必要がある」と語った。

*モザンビークのサウレ大司教:「国が戦争で荒廃し、国民は苦しみ、孤立している。惨状にシノドス参加者も理解を」

 また、サウレ大司教は別の質問に答えて、2017年に始まった戦争で荒廃し、5000人が死亡し100万人が避難民となっている自国の劇的な状況を、「シノドス総会参加者にもっと分かったもらいたい」と述べ、今、戦闘は当面の停止となり、これまで多くの援助があったが、「国民は依然として苦しみ、孤立している」とし、「『多くのものを持っている教会』と『苦境にある教会」の間で物質的な贈り物を交換するという見地から、もっとできることがある」と訴えた。

 まだ大司教は発言の冒頭で、「キリストとの個人的な出会いとしてのキリスト教への入信」の重要性に触れ、「わが国でも、入信した若者が教会から離れていっている。彼らの養成を改善する必要がある」と指摘。そして、過去6年間、青少年の司牧活動が「若者と共に、若者のために、若者によって」行うよう努めてきたこと、また、自身が所属するMissionaries of the Consolataの創設者、福者ジュゼッペ・アラマノが列聖されたことも、司牧活動のさらなる促進につながる可能性があること、を説明した。

 

 

 

*ペレス大司教:「教会責任者は草の根の意見を聞きつつ、シノダリティ(共働性)の元に使命を果たさねば」

 

 ラモス・ペレス大司教はまた、「教会の構造を変革するシノダル(共働的)精神」についても語り、このシノドス総会で「信者個人と教会共同体の司牧的回心を促す個人的な精神性」について話された、と述べた。そして、「教会内および社会との人間関係を『浄化』する必要がある。なぜなら、今日、人間関係が人を成長させる一方、『破壊する』可能性があるから」とし、「前に進むには、キリストを模範として慈愛を生きることです」と強調。

 さらに、「教会で責任を持つ者は、草の根の意見を聞きながら、シノダリティ(共働性)の基準、決定に従って責任を果たさねばなりません。そのためには、識別力が必要であり、それには叙階された聖職者だけでなく、一般の男性と女性の信徒も含まれるのです」と述べた。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

 

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2024年10月10日