・シノドス総会第2会期・10月23日定例会見:総会参加者たちが最終文書策定で1000件超える修正案を提示

(2024.10.23  Vatican News  Christopher Wells)

 世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期が終盤を迎える中で、シノドス情報委員会のルッフィーニ委員長が23日の定例記者会見で、総会最終文書の策定に関わる討議の現状を説明した。

 それによると、先日、参加者全員に配布された最終文書草案に対して、1000件を超える修正案が提示されている。このうち900件以上はシノドスの小規模な作業グループによって出されたもので、各提案は単純多数決で承認される必要がある。

 最終文書の作成を担当する執筆グループは、総会参加者たちから個人的に約100件の修正案も受け取っており、これらをもとに現在、文書の最終案を作成中で、26日の朝の総会全体会議に提案、午後に賛否の投票がされる予定だ。

 また、この日を含めてあと2回となった定例会見に出席したゲストたちからは、司教の役割と権威、教会法がシノドス性を反映する必要性、司教協議会の教義上の権威、東方カトリック教会について発言があった。

 ルッフィーニ委員長はまた、22日の記者会見での質問に対するフリドリン・アンボンゴ枢機卿の回答に関するティモシー・ラドクリフ次期枢機卿の声明を記者たちに伝えた。

 22日の会見では、記者から、バチカン教理省が昨年12月に発表した、祝福の司牧的意味に関する宣言「Fiducia supplicans」に対するアフリカの対応の背後に金銭的配慮があったという噂について質問があり、答えるよう求められたアンボンゴ枢機卿が、「ラドクリフ次期枢機卿と話をしたが、彼は、ロッセルバトーレ・ロマーノ紙の記事のような噂について示唆したことは一度もない」と言明した、と述べていた。

 23日に発表された声明で、ラドクリフ次期枢機卿は、「アンボンゴ枢機卿との会話は、ロッセルバトーレ・ロマーノ紙に掲載された元の演説ではなく、カトリック文化のウェブサイトに掲載されたフィル・ローラーの記事について言及したものだ」とし、「オッセルバトーレの記事の解釈は、私の書いた内容を誤解している… 私は、アフリカのカトリック教会の立場が財政上の配慮に影響されているなどと書いたり示唆したりしたことはない。アフリカのカトリック教会が、外部から十分な資金を得ている他の宗教や教会から多大な圧力を受けていることを認めただけだ… 私の立場を明確に擁護してくれたアンボンゴ枢機卿に非常に感謝している」と述べている。

 

 

 

*プレボスト司教庁長官「司教は”ビジネス管理者”でなく、司牧者として『神の民』と共に歩まねばならない」

 

 この日のゲスト出席者からは、まず、司教省長官のロバート・プレボスト枢機卿が登壇し、司教選任プロセスに関する今総会での議論の説明から始めて、司教と司教会議の役割と権威について語った。さらに、司教は「ビジネス管理者」ではなく、何よりもまず司牧者であり、自らに託された神の民と共に歩む必要がある、と強調した。

 枢機卿は、司教たちが父親や司牧者としての役割と、時には裁判官や懲戒者の役割に関して感じている緊張を指摘。司教の権威は「奉仕」に基づいていることを繰り返し強調し、教区のすべてのメンバーに奉仕する必要性を強く認識することで、「教会内の権力構造の力学を変えること」が非常に重要だ、と述べた。そして、この文脈で、司教が司​​祭、修道者、信徒、および教会法ですでに認められているさまざまなシノダリティ(共働性)の成員と相談し、協力する必要があることを強調した。

 さらに、司教たちに対して、「自分たちの民を知り、彼らの声に耳を傾ける」よう、強く促し、社会の周縁にいる人々や、自分たちが神に信頼されていないと感じている人々に手を差し伸べ、教会の一員となるよう招くことが「非常に重要」であると述べた。そして、教皇フランシスコの「すべての人、すべての人、すべての人」という繰り返しを引用し、「司教たちは特に、その歓迎と開放性の表現者となるよう求められている」と語った。

 

 

*ワイレンズ教授「シノダリティ(共働性)に関する教会法の役割、説明責任、透明性、評価の重要性」

 ミリアム・ワイレンズ教授は、シノダリティ(共働性)に関する教会法の役割について語った。まず、以前に行った講義に言及して「リセットボタンを押す」という比喩を使い、「これは特定のタスクの作業条件を最適化するために、システムを変更することを含みます。このシノドス総会は、教会の福音宣教の任務を最適化するために、教皇の求めに応じ、教会が活動主体を『再構成』することにあります」と述べた。

 そして、「これは第2バチカン公会議に根ざしており、教会のメンバーが、召命やカリスマなどの多様性、そして彼らが置かれているさまざまな状況を踏まえて、教会の使命をより信頼性が高く効果的なものにするためにどのように貢献できるかを共に見極めることを意味します」とし、このシノドス総会によって開始された変革プロセスには「教会法上の構造が伴わなければならない」と主張してきた神の民の「大きな一貫性」についても言及。大陸レベルを含む教会のあらゆるレベルで神の民全体を巻き込んだ司教および教会の集会の呼びかけ、および強制的な司牧評議会の呼びかけを指摘し、「これらは強化されるべきです」と主張した。

 最後に、ウィレンズ教授は「説明責任、透明性、評価の重要性」を強調し、「教会内の(性的)虐待が教会の信頼性に影響を与えてきたこと」、また、「すべての信者が結束し、互いに支え合う責任を意味するという認識が高まっていること」を指摘。「この認識は社会的な観点からではなく、深い神学的な観点から生まれたものです」と語った。

 

 

*教会論の専門家、ルーティエ神父「司教協議会には新たな協議を提案する権限がない、教会全体と教皇に連携して働くもの」

 

 神学者で教会論と教会史の専門家でもあるジル・ルーティエ神父は、司教協議会の教義上の権威の問題について発言した。

 「この問題は新しいものではない。第二 バチカン公会議以来、いくつかの教義文書で取り上げられています」としたうえで、「司教協議会」という用語の意味を厳密に説明し、「司教協議会には新しい教義を提案する権限はなく、教会全体および教皇と連携して行動せねばなりません」と語った。

 また神父は、特定の人々の要請に応える形で教会の共通の信仰を教える司教協議会の権限に言及。「それは、教会の教えを抽象的な考えとして残すのではなく、人々が必要としていることと課題に対応することです」と述べた。

 

 

*マロン派教会のアルワン神父「東方カトリック教会の信徒は、シノドス総会で多様性に富んだ教会の一致と豊かさを体験した」

 

 最後に、マロン派教会から”シノドスの道”に携わってきたカリル・アルワン神父が発言し、まず、今開かれているシノドス総会が、教皇フランシスコの主導のもとで、総会参加者を司教に限定せず、司祭、助祭、修道女、信徒も完全な投票権を持つメンバーとして参加させていることを挙げ、「これは信徒に非常に高く評価されており、この総会が普遍教会の信仰心の最高の表現となることを可能にしています」と述べた。

 また、東方カトリック教会について、「東方カトリック教会は単なる『現地教会』ではなく、独自の管轄権、伝統、遺産を持つ使徒教会および総主教教会です」としたうえで、「東方カトリック教徒は、移民として故郷を離れ、戦争を含むさまざまな苦難に苦しんでいることが多い。その現実を世界中の教会に持ち込みました。世界中に散らばる東方カトリック教徒は、出身地に愛着を持ちながらも痛みを抱えている。しばしば『殉教』を特徴とする彼らは、復活への希望を持ち続けています」と語った。

 そして、今回のシノドス総会では、「東方カトリック教徒は多様性に富んだ教会の一致と豊かさを体験しました。そして、聖霊の識別を通じて、私たちは他者の側に思いやり、理解、そして希望を見出しました」と述べ、相互理解と共通の利益のために協力することを目指して「関係を築き、対話の架け橋を築く」ことの重要性を強調した。

 また、教皇フランシスコが中東のカトリック教徒に宛てた最近の手紙や、聖地での戦争の「残虐行為」を終わらせるために祈りと断食の日を呼びかけたこと、そして20日の主日のミサ中にダマスカスの殉教者11人を列聖したことなど、連帯の具体的な兆候にも言及。

 最後に、国際社会と国連安全保障理事会に聖地での戦争を終わらせるよう呼びかける声に加わった後、アルワン神父は、「キリスト教の希望は、単なる表面的な楽観主義ではありません」とし、「神は苦しみの中にあっても人生の道を用意し、遠くに思えても、中東の平和な未来への希望を与え、私たちに前進する希望を与えてくれています」と発言を締めくくった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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2024年10月24日