そして、ヨハネ・パウロ2世が教皇に就かれた時、女性の権利を求める人々が再度、公会議での主張を繰り返し訴え、改めて設けられた調査委員会が 「前の委員会と同じ結論に達しました。原始教会には事実上、女性の常任助祭がいたということです。しかし、この結論は再度、棚上げされてしまった」が、 「フランシスコが教皇に就任された時、女性の権利を求める人々がバチカンに出向き、パウロ6世教皇とヨハネ・パウロ2世教皇がそれぞれ設置した委員会の結論を公表するように求め、教皇フランシスコ教皇はさらに三度目の委員会を設けましたが、結局最初の2つの委員会と同じ結論に至りました」と説明。
「女性に常任助祭の地位を与えてほしい、という要請は、女性たちや女性の権利を求める人々だけがしているわけではありません。ですから、実現に希望を持っています」と強調。いくつかの国に司教協議会から、第二バチカン公会議が始めた「男性だけでなく女性にも終身助祭職を復活させる」という取り組みを続けることを希望する声が出ており、「これは気まぐれ的な要求ではないし、権力の問題でもありません。教会の伝統を尊重することと関係があります」と指摘した。
そして、「 アフリカでは女性がさまざまな形の虐待を受けているため、教会にとって女性の終身助祭の必要性は切迫しているます。現在のカトリック教会で記録されている数多くの虐待を見ると、被害者の大半は女性と子どもです。言うまでもなく、女性が教会で意思決定に参画し、女性が虐待を受けたときに対応する必要があります。たとえば、男性が対応することは通常はできません。むしろ”虐待の扉を開く”ことになってしまうからです」と説明した。
このようなンガルラ教授の主張に対して、ナイジェリアのビジネスマンで聖ムルンバ大騎士団のオグブエフィ・トニー・ンナチェッタ氏は「アフリカで最も人口の多いナイジェリアでは、女性の助祭が受け入れられるのは難しいだろう」とし、 「ナイジェリアの約60の教区に意見を聞いても、2つの教区から『イエス』を得られるかどうかは疑問。これは女性に対する偏見からではなく、これまで長い間、『男性は司祭であり、司祭は独身で妻はいない、修道女はただ手助けするだけの存在だ』という考えを、多くの信者たちが受け入れてきたからです」と述べた。
デポール大学の世界カトリック・異文化神学センターで世界キリスト教・アフリカ研究の研究教授を務めるスタン・チュー・イロ神父は、Cruxの取材に対し、 「修道女はすでに、助祭が行っている仕事のほとんどを行っています」と述べ、 「『女性助祭』という呼称ではなく、教会法を改正することで、女性にミサ中の説教、祭壇での奉仕、病者の訪問、結婚式の司式、洗礼の秘跡の執行などの聖職者としての役割を与えることを提案します」と語った。
南アフリカのダーバン名誉大司教ウィルフリッド・ネイピア枢機卿は、「教会は、社会で女性がより影響力のある役割を果たせる場所を特定するために深く考えるべきです」とし、「女性が一般社会に対して及ぼしている影響力を、教会で発揮できる最も重要な場はどこなのか、私たちは自問する必要があります」と述べたうえで、例えば、「女性は優れた結婚カウンセラーの役割を果たす可能性があり、それが教区、教会に不可欠な『良い、力強い家族』につながります」と語った。
また既婚男性を助祭に叙階することの是非についての議論も行われ、 ナイジェリアのオグブエフィのトニー・ナチェッタ氏は、「既婚者を助祭職に任命することは、特に家父長制のナイジェリアでは”立ち入り禁止区域”です。ナイジェリアに最初のカトリック司祭は来たのは1885年頃。その後1世紀以上にわたるカトリック教会の特徴の1つは『独身男性が司祭になること』でした。ですから、既婚男性の助祭叙階について公けに議論し始めれば、”嵐”以上のものになるでしょう」と主張。「 ナイジェリアは既婚男性の助祭を受け入れる準備ができていない、ましてや既婚男性の司祭など受け入れる準備ができていない」と述べた。
だが、その一方、南アフリカのような国では、既婚男性の助祭がおり、ネイピア枢機卿は 「私には既婚の助祭になっている兄がいるので、非常に近い経験からお話できます。兄は今は引退していますが、彼は、司祭が司祭職でなければできない職務を行えるよう、結婚準備などの職務を代行していました」と説明した。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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